計測関連用語集

TechEyesOnlineの用語集です。
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治具(じぐ)

(jig)計測器の用語としては「測定対象物を固定したり、測定器に接続するためのアクセサリ」のこと。LCRメータ、インピーダンスアナライザ、ネットワークアナライザ、半導体テスタなど、回路素子や半導体などの電気特性を計測する分野で使われる。具体的な品名はテストフィクスチャやテストリード、テストピンなど様々。jig(英語)が語源。元の意味は「木工で切削加工をするときに工作物を固定したり、位置決めをする器具」のこと。「治具」は当て字。「ジグ」や「冶具」という表記も見かける。冶金(やきん:鉱石を採取して、金属を精製する)という熟語が示すように「冶」は溶かすという意味なので、「冶具」は誤りと思われるが、使用されている例を多く見かける(理由は不明)。

自動平衡ブリッジ法(じどうぶりっじほう)

交流インピーダンス測定の手法の1つ。電子部品などのインピーダンス測定で広く使われている方式。LCRメータに採用されている場合が多い。測定周波数100MHz以下で主に使われ、インピーダンスは数十mΩ~数十MΩを測定できる。周波数が100MHz以上では誤差が大きくなり確度が保てないため別のRF I-V法が使われている。参考記事:LCRメータの基礎と概要 (第1回)の2ページ目・・自働平衡ブリッジ法を図解。交流インピーダンス測定の各手法を概説。

集中定数回路(しゅうちゅうじょうすうかいろ)

(lumped constant circuit) インダクタ、キャパシタ、抵抗を独立した回路素子として取り扱うことができる回路をいい、その回路で対象とする信号の波長に対して電子部品のインダクタンス(コイル、L)、キャパシタンス(静電容量、コンデンサ、C)、抵抗(R)の物理的寸法が十分に小さくまた線路長も十分短い回路。 集中定数なのか分布定数なのかは、その線路を伝わる信号の変化の速さ(立ち上がり/立ち下がり時間)で決まるので、画一的な数値で境界線は示しにくい。一般的には高周波になると分布定数で評価している。目安としては、信号の周波数がGHz(おおよそマイクロ波)未満なら集中定数回路で、以上だと分布定数回路の事が多い(あくまで目安)。LCRメータやインピーダンスアナライザなどの回路素子測定器は集中定数回路のL、C、Rの値を等価回路で表示する。ネットワークアナライザは高周波でインピーダンスを測定するが、分布定数回路なため、L、C、RではなくSパラメータで回路の特性を規定している。

受動素子(じゅどうそし)

(passive component) 電気工学では、抵抗、静電容量、インダクタンスの3つの物理量を指す。それぞれ電子部品(素子)として抵抗器、コンデンサ、コイルがある。別の表現ではレジスタ(Resistor)、キャパシタ(Capacitor)、インダクタ(Inductor)。回路記号はR、C、Lと表記する。 集中定数回路では、R、C、Lが独立した理想の素子として扱われる。主に2端子の多種類のR、C、Lの電子部品があり、プリント基板上に配置されて回路を構成している。受動素子は電気エネルギーを消費(または蓄積)するが、能動素子のトランジスタやダイオード、真空管などのように電気エネルギーの増幅や整流はしない。機能から受動と能動の命名がある。 周波数が高くなるとR、C、Lの成分は分離できなくなり、分布定数回路 として扱われる。R、C、Lの数値の計測は、集中定数回路ではLCRメータやインピーダンスアナライザで行う。測定したインピーダンスを等価回路の選択によってR、C、Lの成分に分解して表示する。周波数が高くなると分布定数回路となり、主にネットワークアナライザによる測定となる。 通常、受動素子はR、C、L(またはR、L、C)の順番で説明されることが多いが、この3つを使った回路、たとえばRとCとLが直列に並んだ回路は(RCL回路ではなく)RLC直列回路と呼ばれることが多い。回路名の時はR、L、Cの順番で呼称される。さらに、測定器になると(RCLメータでも、RLCメータでもなく)LCRメータと呼ばれる。なぜこの順番の名称になったかは不明。低周波の発振器であるRC発振器はR、Cの順である。受動素子はRCL(またはRLC)、回路はRLC、計測器はLCRやRCと、電子回路理論や計測器業界では決まっている。その理由は不明。 参考記事:LCRメータの基礎と概要 (第1回) ・・・集中回路定数としての抵抗、コンデンサ、インダクタを解説。

真空管試験器(しんくうかんしけんき)

(electronic tube tester) 真空管の性能を測定するための計測器。真空管は、半導体のトランジスタが開発される以前に電子回路に多く使われた。回路素子測定器の1種といえる。1964年に米国で世界初の大型コンピュータENIAC(エニヤック)が約2万本の真空管を使い開発されたことは有名だが、それ以前からコンピュータには真空管が使われている。IBMが1950年前後に、初期の真空管式コンピュータの保守用に可搬型(アタッシュケース式)の真空管試験器をつくっていたことが知られている。 国産計測器メーカの國洋電機工業はラインアップが多く、形名はVG、Gm、WT、JI、NTVなどがあった。同社の真空管試験器の概要(形名の意味など)を解説した記事がネットに掲載されている。また、中古計測器の多数のECサイトに同社の真空管試験器が掲載されている(2022年12月現在)。「ラジオと実験」(1950年1月号)に、同社は「真空管試験器の話~チューブ・チェッカーとは?」の記事を掲載している。「現在のラジオ受信機の性能の大半は真空管の良否に依って決まるといっても過言ではない。性能、用途に応じて作られている真空管の種類は莫大で、その試験法も多種多様で・・」と語られている。 上記のことから、同社の真空管試験器はトップブランドで、市場に多く販売されたと推測される。同社が真空管の時代からの電子部品評価用の計測器の老舗計測器メーカであることが伺える。その後、トランジスタなどの評価用計測器(カーブトレーサ)やLCRメータも1980年代頃にはラインアップしたが、同社は知らない間に消息が絶えてしまった。一時期はその名を知られたが、いまでは幻の計測器メーカである。 「SANWA(Sanwa Radio Measurement Works)SGM-19 Gm METER」なる計測器の画像をネットで発見した。SANWAは現在の三和電気計器株式会社である。SGM-19は形名。Gmとは真空管に電圧を印加したら陽極電流がどう変化するかの値「相互コンダクタンス」で、これによって増幅や検波の能力がわかる。なので、Gm METERとは真空管試験器のことである。三和電気計器が販売のみの会社で、「製造元・株式会社三和電気製作所(小型テスタを担当)、三和無線測器研究所(真空管試験器など、無線測定器を担当)」と称していた、1960年頃の古いモデルと推測される。現在の同社HPの製造中止品にはSGM-19は未掲載。 同社はハンドヘルドの製品群(工事関係者が屋外で使う計測器)が有名だが、1986年に光測定器を発売している。2022年現在のラインアップではハンドヘルドのレーザーパワーメータLP10がある。アクセス網に光が普及するなど、電気から光への変更が進んでいる。将来の電気工事作業者が携帯するのは電気のテスタではなく可搬型の光パワーメータになる、と先読みしているように思える。 三和無線測器研究所が製造していたことでわかる通り、真空管試験機は当時は無線の測定器だった。三田無線研究所もつくっていた。真空管がトランジスタに置き換わるのに伴い、真空管試験器は生産を終了している。

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