初めて使うオシロスコープ・・・第10回「波形画像や波形データのUSBメモリへの保存」
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- 第1回:オシロスコープが届いたら最初にすること
- 「はじめに」「届いたオシロスコープを見てみる」「オシロスコープに電源を投入する」「日付時刻を設定する」「【ミニ解説】オシロスコープを安全に使うために配電の仕組みを知る」
- 第2回:パネルにあるキーや端子などの基本的な役割
- 「オシロスコープの前面パネルにあるキーや端子」「オシロスコープの背面パネルにある端子」「オシロスコープ内部が冷却できるようにして使う」「【ミニ解説】プローブ・インターフェース」
- 第3回:CAL信号を使ってプローブを調整
- 「Autoset機能を使ってCAL信号を観測する」「受動電圧プローブの調整」「受動電圧プローブの選択」「グランド・リードの長さによる影響」「装置組込みでオシロスコープを利用する場合」「【ミニ解説】デジタル・オシロスコープの選定のキーワード」
- 第4回:電圧軸の基本的な設定
- 「Autoset機能を使わないで電圧軸を設定する」「入力感度の設定」「オシロスコープで測れる最大電圧」「【ミニ解説】オシロスコープで受動電圧プローブを使う効果」
- 第5回:時間軸とトリガの基本的な設定
- 「A/D変換器による波形の捕捉」「波形取り込みの設定」「時間軸の設定」「トリガの機能」「トリガの設定」
- 第6回:オシロスコープを安全に使う
- 「オシロスコープ入力端子の外側はケースに繋がっている」「測定対象がコモンモード電位を持っているときは要注意」「オシロスコープの受動電圧プローブでコンセントの波形を測るのは危険」「高電圧シングル・エンド・プローブを使って測定する場合は接地が必須」「オシロスコープに入力できる最大電圧」「受動電圧プローブの取り扱いは丁寧に」「電源品質にも注意」「【ミニ解説】デジタル・マルチメータは入力が絶縁されている」
- 第7回:単発現象の測定
- 「単発現象をオシロスコープで測定」「単発現象を観測するための設定」「レコード長とサンプルレートの設定(正弦波の場合)」「レコード長とサンプルレートの設定(パルス波の場合)」「レコード長を長くして取り込んだ波形を拡大する」「【ミニ解説】レコード長が長いオシロスコープのメリット」
- 第8回:波形パラメータの読み取り
- 「取り込んだ波形の情報をカーソルによって読み取る」「波形パラメータを自動測定する」「自動測定機能を使ってのパルス波形を測定するときの注意点」「自動測定を使って2つの入力の位相差や時間差を測定するときの注意点」「【ミニ解説】デューティ比を制御して調光するLED照明」
- 第9回:取り込んだ波形データへの演算
- 「取り込んだ波形を演算処理する」「取り込んだ波形にFFT演算を行う」「【ミニ解説】オシロスコープのFFT機能を使ってノイズ源の探査」
- 第10回:波形画像や波形データのUSBメモリへの保存
- 「オシロスコープに取り込んだ波形画像や波形データを取り出す」「オシロスコープに表示されている波形画像をUSBメモリに保存する」「オシロスコープに保存されている波形データをUSBメモリの保存する」「オシロスコープの設定状態の保存と呼出し」「波形データの呼び出し」「内部メモリやUSBメモリに保存されたデータを消去する」「【ミニ解説】USBメモリの注意点」
- 第11回:オシロスコープと組合せて使うさまざまなプローブ
- 「オシロスコープに接続できるさまざまなプローブ」「TBS2000Bが使えるプローブ類」「高電圧シングルエンド・プローブの用途と使用上の注意点」「高電圧差動プローブの用途と使用上の注意点」「電流プローブの用途と使用上の注意点」「低電圧シングルエンド・プローブの用途と使用上の注意点」
- 第12回:テクトロニクスが提供するPCソフトウェア
- 「【インタビュー】テクトロニクスが取り組むPCソフトウェアを使った効率的な開発環境の構築」
オシロスコープに取り込んだ波形画像や波形データを取り出す
オシロスコープに取り込んだ波形画像を報告書に貼り付けることや、波形データをPCで解析することがある。その際はオシロスコープの内部にある波形データを外部に取り出す操作をしなければならない。データを取り出すには通信インターフェース経由でPCなどに取り出す方法とUSBメモリを使って取り出す方法がある。ここでは最も簡単なUSBメモリを使って波形画像や波形データを取り出す方法を説明する。TBS2000BにはUSBメモリを接続するコネクタが前面パネルについている。
オシロスコープに表示されている波形画像をUSBメモリに保存する
TBS2000Bの画面に表示されている画像を保存する場合は下図に示すようにまず保存/呼出(Save/Recall)キーを押して、設定する画面を呼出して画像保存を指定する。次の保存するデータフォーマットを指定する。指定できるフォーマットはBMP、JPG、PNGのいずれかとなるが、JPGが最もファイル容量を小さくできる。
保存する際のファイル名は自動的にTEKXXXXX(00000~99999 の整数値)にファイルの属性を表す拡張子がつけられる。例えばJPGで最初に保存した波形の画像データはTEK00000.jpgとなる。オシロスコープ内には時計があるのでファイルが保存された時刻も一緒に記録される。判り易いファイル名に変更するにはPCにデータを転送してからファイル名を書き換える。またオシロスコープにあるファイル・ユーティリティ(File Utility)の機能を使ってもファイル名の変更はできる。ただしファイル名として使える文字はアルファベットと数字のみとなる。
保存条件の設定が終わればパネル上部にある保存(Save)キーを押して波形画像データの保存動作を実行する。
USBメモリに保存された波形画像データは写真データなどと同じように報告書に貼り付けて使うことができる。
オシロスコープに保存されている波形データをUSBメモリに保存する
TBS2000Bの波形メモリに保存されているデータをUBSメモリに転送してPCに移動することができる。例えばMicrosoft Excelを使えばPC上で波形の形を見ることができ、演算機能を使えば波形の解析もできる。
TBS2000Bで波形データをUSBメモリに保存する際は下図に示すように保存/呼出(Save/Recall)キーを押して操作画面から保存条件を設定する。
TBS2000Bの画面での操作は波形保存(Save Waveform)を設定してから、保存するチャネル、USBメモリに保存する際のフォーマット(内部フォーマット((Internal File Format)もしくはCSVフォーマット)を設定する。Microsoft Excelを使って波形の形を見る場合や演算を行う場合はCSVフォーマットで保存する。保存する際のファイル名は自動的にTEKXXXXX(00000~99999の整数値)にファイルの属性を表す拡張子がつけられる。例えばCSVで最初に保存した波形の画像データはTEK00000.csvとなる。
保存条件の設定が終わればパネル上部にある保存(Save)キーを押して波形データの保存動作を実行する。
オシロスコープの設定状態の保存と呼出し
オシロスコープの設定状態をUSBメモリに保存することができる。デジタル・オシロスコープは多くの設定ができるので設定を内部もしくはUSBメモリに複数記憶させておくことができるので生産ラインなどで同じ設定状態で作業がしなければならない場合は誤りのない正確な作業ができる。
波形データの呼び出し
過去に観測した波形と比較してみたいときなどはUSBメモリなどに保存してある波形データを読み出して現在の波形と比較することができる。TBS2000Bでは内部データフォーマットで保存したデータのみが呼び出しが可能となる。
USBメモリなどに保存してある過去に観測した波形と現在の波形を比較する際はオシロスコープが同じ設定状態であるかを確認する必要があるので注意が必要となる。
内部メモリやUSBメモリに保存されたデータを消去する
USBメモリに保存されたデータはPCを使って消去することは可能である。また内部メモリやUSBメモリに記録されたデータはTBS2000Bのファイル・ユーティリティ(File Utility)機能を使って消去することができる。
【ミニ解説】USBメモリの注意点
TBS2000Bの仕様にはUSBメモリについてはUSB2.0対応と書かれている。最新のUSBメモリの規格は2017年に制定されたUSB3.2となっている。市場にあるUSBメモリは2.0、3.0、3.1、3.2が存在している。USB3.XのメモリカードはUSB2.0に比べて転送速度が速くなっている。USB3.Xのメモリはコネクタの絶縁部分が青色になっているのですぐに判るようになっている。
USB3.XのメモリはUSB2.0との互換性があるため、TBS2000Bに接続しても正常に動作する。
USBメモリは便利なツールであるが、使われているメモリ素子(NAND型フラッシュメモリ)に寿命があるため、重要な測定結果をUSBメモリに保存した場合はそのままにしておかないで、ハードディスクなど他の記憶媒体にデータを移しておくことが望ましい。
また、企業によっては情報セキュリティの観点でUSBメモリを業務で使用できない場合がある。その場合はオシロスコープの通信機能を使って観測した波形画像や波形データをPCに移動する。測定器メーカからはオシロスコープのデータをPCに取り込む無償や有償のソフトウェアが提供されているのでオシロスコープの利用者がプログラムを作る必要はない。
執筆:横河レンタ・リース株式会社 事業統括本部 魚住 智彦