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初めて使うオシロスコープ・・・第11回「オシロスコープと組合せて使うさまざまなプローブ」

連載記事一覧
第1回:オシロスコープが届いたら最初にすること
「はじめに」「届いたオシロスコープを見てみる」「オシロスコープに電源を投入する」「日付時刻を設定する」「【ミニ解説】オシロスコープを安全に使うために配電の仕組みを知る」
第2回:パネルにあるキーや端子などの基本的な役割
「オシロスコープの前面パネルにあるキーや端子」「オシロスコープの背面パネルにある端子」「オシロスコープ内部が冷却できるようにして使う」「【ミニ解説】プローブ・インターフェース」
第3回:CAL信号を使ってプローブを調整
「Autoset機能を使ってCAL信号を観測する」「受動電圧プローブの調整」「受動電圧プローブの選択」「グランド・リードの長さによる影響」「装置組込みでオシロスコープを利用する場合」「【ミニ解説】デジタル・オシロスコープの選定のキーワード」
第4回:電圧軸の基本的な設定
「Autoset機能を使わないで電圧軸を設定する」「入力感度の設定」「オシロスコープで測れる最大電圧」「【ミニ解説】オシロスコープで受動電圧プローブを使う効果」
第5回:時間軸とトリガの基本的な設定
「A/D変換器による波形の捕捉」「波形取り込みの設定」「時間軸の設定」「トリガの機能」「トリガの設定」
第6回:オシロスコープを安全に使う
「オシロスコープ入力端子の外側はケースに繋がっている」「測定対象がコモンモード電位を持っているときは要注意」「オシロスコープの受動電圧プローブでコンセントの波形を測るのは危険」「高電圧シングル・エンド・プローブを使って測定する場合は接地が必須」「オシロスコープに入力できる最大電圧」「受動電圧プローブの取り扱いは丁寧に」「電源品質にも注意」「【ミニ解説】デジタル・マルチメータは入力が絶縁されている」
第7回:単発現象の測定
「単発現象をオシロスコープで測定」「単発現象を観測するための設定」「レコード長とサンプルレートの設定(正弦波の場合)」「レコード長とサンプルレートの設定(パルス波の場合)」「レコード長を長くして取り込んだ波形を拡大する」「【ミニ解説】レコード長が長いオシロスコープのメリット」
第8回:波形パラメータの読み取り
「取り込んだ波形の情報をカーソルによって読み取る」「波形パラメータを自動測定する」「自動測定機能を使ってのパルス波形を測定するときの注意点」「自動測定を使って2つの入力の位相差や時間差を測定するときの注意点」「【ミニ解説】デューティ比を制御して調光するLED照明」
第9回:取り込んだ波形データへの演算
「取り込んだ波形を演算処理する」「取り込んだ波形にFFT演算を行う」「【ミニ解説】オシロスコープのFFT機能を使ってノイズ源の探査」
第10回:波形画像や波形データのUSBメモリへの保存
「オシロスコープに取り込んだ波形画像や波形データを取り出す」「オシロスコープに表示されている波形画像をUSBメモリに保存する」「オシロスコープに保存されている波形データをUSBメモリの保存する」「オシロスコープの設定状態の保存と呼出し」「波形データの呼び出し」「内部メモリやUSBメモリに保存されたデータを消去する」「【ミニ解説】USBメモリの注意点」
第11回:オシロスコープと組合せて使うさまざまなプローブ
「オシロスコープに接続できるさまざまなプローブ」「TBS2000Bが使えるプローブ類」「高電圧シングルエンド・プローブの用途と使用上の注意点」「高電圧差動プローブの用途と使用上の注意点」「電流プローブの用途と使用上の注意点」「低電圧シングルエンド・プローブの用途と使用上の注意点」
第12回:テクトロニクスが提供するPCソフトウェア
「【インタビュー】テクトロニクスが取り組むPCソフトウェアを使った効率的な開発環境の構築」

オシロスコープに接続できるさまざまなプローブ

オシロスコープの基本は電圧信号の波形を測定するものであるが、下記に示すようなさまざまなプローブを使うことによって測定できる信号の種類は広がる。

図80. オシロスコープに接続されるさまざまなプローブ

図80. オシロスコープに接続されるさまざまなプローブ

パッシブ・プローブは電源供給の必要はないが、アクティブ・プローブはプローブ内の電子回路を駆動するために電源供給が必要となる。現在のオシロスコープではメーカごとに規格されたプローブ・インターフェースから駆動電源が供給されるようになっている。このため一部の製品を除いて外部電源を用意する必要はない。またプローブ・インターフェースはメーカごとに規格されているため、異なるメーカのプローブは使えない。

プローブ・インターフェースは電源供給だけではなく、プローブとオシロスコープ本体の間で通信ができるようになっている。

TBS2000Bが使えるプローブ類

エントリーモデルのTBS2000Bでは標準の受動電圧プローブ以外に下記のプローブ類が使えるようになっている。目的に応じてプローブを選択することになる。

図81. TBS2000Bに使えるプローブ類(受動電圧プローブを除く)

図81. TBS2000Bに使えるプローブ類(受動電圧プローブを除く)

高電圧シングルエンド・プローブの用途と使用上の注意点

TBS2000Bに添付されている受動電圧プローブでは最大入力電圧が300VRMSと仕様で規定されているため、パワーエレクトロニクス機器など高電圧を取り扱う機器の波形観測では高電圧に対応した高電圧シングルエンド・プローブを用いる。

TBS2000Bに対応したP5100A(500MHz、100:1)の最大入力電圧は2,500VPeakもしくは1000VRMSとなっている。P5100Aの周波数帯域は500MHzであるが、最大入力電圧は下図に示すように信号の周波数によって異なるので高周波成分を含む電圧を測定する場合は注意が必要である。

図82. 高電圧シングルエンド・プローブ(P5100A)の最大許容入力電圧

図82. 高電圧シングルエンド・プローブ(P5100A)の最大許容入力電圧

高電圧差動プローブの用途と使用上の注意点

高電圧差動プローブは回路の2点間の電圧差を測定することができる。そのためパワーエレクトロニクス回路のIGBTの端子間に加わる波形の観測などに使われる。

図83. 高電圧差動プローブによるIGBTの波形観測

図83. 高電圧差動プローブによるIGBTの波形観測

高電圧差動プローブはコモンモード電圧の影響を受けるため、確度の高い波形観測をする場合はプローブの仕様書に書かれている同相除去比(CMRR:Common Mode Rejection Ratio)を確認する必要がある。コモンモードの影響を少なくして波形観測をする場合は光絶縁型差動プローブの使用するのが望ましい。

図84. 光絶縁型差動プローブ

図84. 光絶縁型差動プローブ

高電圧差動プローブも最大入力電圧は信号の周波数に依存するので、高い周波数成分が含まれた信号の観測では注意が必要である。

図85. 高電圧差動プローブ(THDP0100)の許容最大入力電圧

図85. 高電圧差動プローブ(THDP0100)の許容最大入力電圧

電流プローブの用途と使用上の注意点

電線に流れる電流波形を測るときに使用する。電流プローブには直流電流から高い周波数の交流電流まで測定できるものと、交流電流だけを測定するものがあるので用途に応じで選択する。

電流プローブを使う上で注意が必要なのは測定できる最大電流が周波数に依存することである。下記に50MHz電流プローブ(TCP0020型)の仕様に書かれている許容ピーク電流値と周波数の関係を示す。許容ピーク電流値を超えた電流を流し続けるとプローブが過熱して破損する恐れがある。

図86. 電流プローブTCP0020型(50MHz、20Arms)の許容ピーク電流と周波数の関係

図86. 電流プローブTCP0020型(50MHz、20Arms)の許容ピーク電流と周波数の関係

電流プローブを使って小さい電流を計るときは下図に示すようにプローブに電線を巻き付けて感度を上がる。プローブに2回配線を巻き付けると感度は2倍になる。この方法は便利ではあるが、電線の巻き数が多くなると、電流プローブが測定対象の負荷となるので注意が必要である。

図87. 感度を上げるために電流プローブに電線を巻き付けた状態

図87. 感度を上げるために電流プローブに電線を巻き付けた状態

電流プローブの内部にあるコア材が測定によって着磁すると測定結果に誤差が生じる。そのため正確な測定を行うにはディガウスの操作をする必要があり、ディガウスを行った後にDCバランスの調整を行う。

低電圧シングルエンド・プローブの用途と使用上の注意点

低電圧シングルエンド・プローブはFETプローブやアクティブ・プローブとも言われており、入力の容量を小さくしたプローブのことである。TBS2000Bに標準添付されている受動電圧プローブの入力容量は12pF(代表値)となっているが、TBS2000Bに接続可能な低電圧シングルエンド・プローブ(TAP1500)の入力容量は1pF(代表値)となっている。

受動電圧プローブの入力容量の12pFは100MHzで約132Ωのインピーダンスとなり、低電圧シングルエンド・プローブの入力容量の1pFは100MHzで1.59kΩのインピーダンスとなる。高周波の信号では入力抵抗の1MΩより入力容量のほうが負荷に影響を与える。

このため、高い高周波成分を含むパルスの立ち上がりや立ち下がりの波形を観測するときは低電圧シングルエンド・プローブを利用する。

低電圧シングルエンド・プローブは最大非破壊入力電圧が低いため、静電気や高い電圧を印加したときは破損する。TBS2000Bに接続可能な低電圧シングルエンド・プローブ(TAP1500)の最大非破壊入力電圧は±15V(DC+ピークAC)となっている。静電気によるプローブの破損を防ぐために低電圧シングルエンド・プローブを使うときは帯電防止リスト・ストラップを使用することが望ましい。


執筆:横河レンタ・リース株式会社 事業統括本部 魚住 智彦

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