技術情報・レポート

2021/09/29

初めて使うオシロスコープ・・・第4回「電圧軸の基本的な設定」

連載記事一覧
第1回:オシロスコープが届いたら最初にすること
「はじめに」「届いたオシロスコープを見てみる」「オシロスコープに電源を投入する」「日付時刻を設定する」「【ミニ解説】オシロスコープを安全に使うために配電の仕組みを知る」
第2回:パネルにあるキーや端子などの基本的な役割
「オシロスコープの前面パネルにあるキーや端子」「オシロスコープの背面パネルにある端子」「オシロスコープ内部が冷却できるようにして使う」「【ミニ解説】プローブ・インターフェース」
第3回:CAL信号を使ってプローブを調整
「Autoset機能を使ってCAL信号を観測する」「受動電圧プローブの調整」「受動電圧プローブの選択」「グランド・リードの長さによる影響」「装置組込みでオシロスコープを利用する場合」「【ミニ解説】デジタル・オシロスコープの選定のキーワード」
第4回:電圧軸の基本的な設定
「Autoset機能を使わないで電圧軸を設定する」「入力感度の設定」「オシロスコープで測れる最大電圧」「【ミニ解説】オシロスコープで受動電圧プローブを使う効果」
第5回:時間軸とトリガの基本的な設定
「A/D変換器による波形の捕捉」「波形取り込みの設定」「時間軸の設定」「トリガの機能」「トリガの設定」
第6回:オシロスコープを安全に使う
「オシロスコープ入力端子の外側はケースに繋がっている」「測定対象がコモンモード電位を持っているときは要注意」「オシロスコープの受動電圧プローブでコンセントの波形を測るのは危険」「高電圧シングル・エンド・プローブを使って測定する場合は接地が必須」「オシロスコープに入力できる最大電圧」「受動電圧プローブの取り扱いは丁寧に」「電源品質にも注意」「【ミニ解説】デジタル・マルチメータは入力が絶縁されている」
第7回:単発現象の測定
「単発現象をオシロスコープで測定」「単発現象を観測するための設定」「レコード長とサンプルレートの設定(正弦波の場合)」「レコード長とサンプルレートの設定(パルス波の場合)」「レコード長を長くして取り込んだ波形を拡大する」「【ミニ解説】レコード長が長いオシロスコープのメリット」
第8回:波形パラメータの読み取り(11月4日公開予定)
「取り込んだ波形の情報をカーソルによって読み取る」「波形パラメータを自動測定する」「自動測定機能を使ってのパルス波形を測定するときの注意点」「自動測定を使って2つの入力の位相差や時間差を測定するときの注意点」「【ミニ解説】デューティ比を制御して調光するLED照明」
第9回:取り込んだ波形データへの演算(11月10日公開予定)
「取り込んだ波形を演算処理する」「取り込んだ波形にFFT演算を行う」「【ミニ解説】オシロスコープのFFT機能を使ってノイズ源の探査」
第10回:波形画像や波形データのUSBメモリへの保存(11月17日公開予定)
「オシロスコープに取り込んだ波形画像や波形データを取り出す」「オシロスコープに表示されている波形画像をUSBメモリに保存する」「オシロスコープに保存されている波形データをUSBメモリの保存する」「オシロスコープの設定状態の保存と呼出し」「波形データの呼び出し」「内部メモリやUSBメモリに保存されたデータを消去する」「【ミニ解説】USBメモリの注意点」
第11回:オシロスコープと組合せて使うさまざまなプローブ(11月24日公開予定)
「オシロスコープに接続できるさまざまなプローブ」「TBS2000Bが使えるプローブ類」「高電圧シングルエンド・プローブの用途と使用上の注意点」「高電圧差動プローブの用途と使用上の注意点」「電流プローブの用途と使用上の注意点」「低電圧シングルエンド・プローブの用途と使用上の注意点」
第12回:テクトロニクスが提供するPCソフトウェア(12月1日公開予定)
「【インタビュー】テクトロニクスが取り組むPCソフトウェアを使った効率的な開発環境の構築」

Autoset機能を使わないで電圧軸を設定する

オシロスコープの操作で最初に行うのが、信号の振幅に合わせて入力の回路を設定することである。オシロスコープの入力は下図に示すようにDC結合とAC結合の切り替えができるようになっている。

図24. 入力結合の切り換え

図24. 入力結合の切り換え

実際のTBS2000Bの操作ではチャネルごとに設定する仕組みになっている。数字が書かれたキーを押すと画面に指定したチャネルの設定情報が表示される。

図25. 電圧軸設定画面の呼出

図25. 電圧軸設定画面の呼出

TBS2000Bでは入力チャネルのキーを押すと下記の画面が表示される。右端の結合(Coupling)と書かれた表示の横にあるキーを押すと結合を選択する画面が表示される。パネル上部にある汎用(Multipurpose)ノブを使っていずれかを選択してノブを押して確定する。通常の測定ではDC結合を選択する。

図26. 入力結合を選択する画面

図26. 入力結合を選択する画面

反転表示の設定はできるが、通常はオフでよい。帯域制限は信号にノイズなどが重畳しているときに20MHz以上の信号を遮断するときに使う。20MHz帯域制限が設定されていると高周波信号は減衰するので、通常はフル帯域の設定にする。下図は同じ振幅の10MHzと40MHzの正弦波信号を帯域制限した場合としない場合を比較したものである。

図27. 20MHz帯域制限の有無による高周波信号の見え方の違い

図27. 20MHz帯域制限の有無による高周波信号の見え方の違い

プローブ・インターフェースTekVPIを持っているTBS2000Bはさまざまなプローブが接続できる。このためプローブに応じた設定をすることになる。標準添付の受動電圧プローブの場合はプローブ・インターフェースを持っていないので、手入力で減衰比を10:1(10×)とする。下図のようなプローブ設定となっていることを確認する。

図28. 標準添付の10:1電圧プローブを使う場合の設定

図28. 標準添付の10:1電圧プローブを使う場合の設定

オフセットは測定波形に直流電圧を印加して表示する機能である。通常は0Vにして波形観測を行うので下図のような設定にする。

図29. 入力オフセットの設定画面

図29. 入力オフセットの設定画面

入力感度の設定

オシロスコープでは大きな電圧の信号から小さな電圧の信号までの波形を観測するため、入力に減衰器と増幅器がある。TBS2000Bの仕様にはプローブが1:1の場合は1mV/div~10V/divまで感度を変えることができる。TBS200Bの画面は垂直方向に10div、水平方向に15divに区切られているので、フル振幅で換算すると10mV~100Vまでとなる。標準添付の電圧プローブは10:1であるので感度は10mV/div~100V/divまでとなる。

入力感度はパネルの矢印のついたロータリーノブを使って設定する。その際はスケール(Scale)ダイヤルを回して感度設定を行う。最初に感度設定を行う際はパネル上部にある回転ダイヤルの横にある、微調整(Fine)キーが消灯していることを確認する必要がある。感度を細かく設定したい場合は微調整(Fine)キーを押して点灯した状態にする。

図30. 入力感度の設定

図30. 入力感度の設定

波形の位置を上下に動かしたいときはスケール(Scale)ダイヤルの上にある位置(Position)ダイヤルを使って移動させることができる。

オシロスコープで測れる最大電圧

TBS2000Bのカタログには最大入力電圧という仕様項目があり、「300VRMS、インストレーション・カテゴリ II、ピーク電圧:±450V以下」と示されている。これはオシロスコープの入力端子への印加電圧の最大値のことである。オシロスコープで波形観測する場合は電圧プローブを使うのでプローブの仕様を確認する必要がある。TBS2000Bに標準添付されているTPP0100(100MHz)やTPP0200(200MHz)の仕様では最大入力電圧が300VRMSと規定されている。

注意が必要なのは電圧プローブに印加できる最大入力電圧は周波数に依存することである。TPP0100やTPP0200の取り扱い説明書には下記のような図が掲載されている。

図31. TPP0100、 TPP0200のプローブ耐電圧周波数特性

図31. TPP0100、 TPP0200のプローブ耐電圧周波数特性

安全に波形観測をするためには、3MHz以上の周波数の信号をプローブに印加する場合は耐電圧が低下することを知っておく必要がある。

【ミニ解説】オシロスコープで受動電圧プローブを使う効果

オシロスコープを利用して電圧波形を測定する場合、オシロスコープのBNC端子からケーブルを延長して測定対象に接続することはあまりない。多くは10:1プローブを使って測定する。

テクトロニクスには減衰率を1:1と10:1の切り替えができる受動電圧プローブがある。切り替えはプローブ上部のスイッチによって行う。

図32. 1:1/10:1 受動電圧プローブ P2220(テクトロニクス)の仕様

図32. 1:1/10:1 受動電圧プローブ P2220(テクトロニクス)の仕様

減衰率10:1にすると入力抵抗はオシロスコープの1MΩにプローブ内部の9MΩが直列に接続される10MΩとなる仕組みになっている。また位相調整が行えるようになり周波数帯域は200MHzまでとなる。電圧感度は低下するが入力抵抗が大きくなり測定対象に与える影響は減少する。

一方、1:1に設定した場合はオシロスコープのBNCコネクタからケーブルで延長したのと同じになるため、入力抵抗は1MΩ、入力容量はケーブルの容量が加算されるため110pFとなる。このため周波数帯域は6MHzとなる。広い周波数帯域が必要でなく、入力感度を上げたいときのみ、1:1の設定にする。


執筆:横河レンタ・リース株式会社 事業統括本部 魚住 智彦