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初めて使うオシロスコープ・・・第1回 「オシロスコープが届いたら最初にすること」

連載記事一覧
第1回:オシロスコープが届いたら最初にすること
「はじめに」「届いたオシロスコープを見てみる」「オシロスコープに電源を投入する」「日付時刻を設定する」「【ミニ解説】オシロスコープを安全に使うために配電の仕組みを知る」
第2回:パネルにあるキーや端子などの基本的な役割
「オシロスコープの前面パネルにあるキーや端子」「オシロスコープの背面パネルにある端子」「オシロスコープ内部が冷却できるようにして使う」「【ミニ解説】プローブ・インターフェース」
第3回:CAL信号を使ってプローブを調整
「Autoset機能を使ってCAL信号を観測する」「受動電圧プローブの調整」「受動電圧プローブの選択」「グランド・リードの長さによる影響」「装置組込みでオシロスコープを利用する場合」「【ミニ解説】デジタル・オシロスコープの選定のキーワード」
第4回:電圧軸の基本的な設定
「Autoset機能を使わないで電圧軸を設定する」「入力感度の設定」「オシロスコープで測れる最大電圧」「【ミニ解説】オシロスコープで受動電圧プローブを使う効果」
第5回:時間軸とトリガの基本的な設定
「A/D変換器による波形の捕捉」「波形取り込みの設定」「時間軸の設定」「トリガの機能」「トリガの設定」
第6回:オシロスコープを安全に使う
「オシロスコープ入力端子の外側はケースに繋がっている」「測定対象がコモンモード電位を持っているときは要注意」「オシロスコープの受動電圧プローブでコンセントの波形を測るのは危険」「高電圧シングル・エンド・プローブを使って測定する場合は接地が必須」「オシロスコープに入力できる最大電圧」「受動電圧プローブの取り扱いは丁寧に」「電源品質にも注意」「【ミニ解説】デジタル・マルチメータは入力が絶縁されている」
第7回:単発現象の測定
「単発現象をオシロスコープで測定」「単発現象を観測するための設定」「レコード長とサンプルレートの設定(正弦波の場合)」「レコード長とサンプルレートの設定(パルス波の場合)」「レコード長を長くして取り込んだ波形を拡大する」「【ミニ解説】レコード長が長いオシロスコープのメリット」
第8回:波形パラメータの読み取り
「取り込んだ波形の情報をカーソルによって読み取る」「波形パラメータを自動測定する」「自動測定機能を使ってのパルス波形を測定するときの注意点」「自動測定を使って2つの入力の位相差や時間差を測定するときの注意点」「【ミニ解説】デューティ比を制御して調光するLED照明」
第9回:取り込んだ波形データへの演算
「取り込んだ波形を演算処理する」「取り込んだ波形にFFT演算を行う」「【ミニ解説】オシロスコープのFFT機能を使ってノイズ源の探査」
第10回:波形画像や波形データのUSBメモリへの保存
「オシロスコープに取り込んだ波形画像や波形データを取り出す」「オシロスコープに表示されている波形画像をUSBメモリに保存する」「オシロスコープに保存されている波形データをUSBメモリの保存する」「オシロスコープの設定状態の保存と呼出し」「波形データの呼び出し」「内部メモリやUSBメモリに保存されたデータを消去する」「【ミニ解説】USBメモリの注意点」
第11回:オシロスコープと組合せて使うさまざまなプローブ
「オシロスコープに接続できるさまざまなプローブ」「TBS2000Bが使えるプローブ類」「高電圧シングルエンド・プローブの用途と使用上の注意点」「高電圧差動プローブの用途と使用上の注意点」「電流プローブの用途と使用上の注意点」「低電圧シングルエンド・プローブの用途と使用上の注意点」
第12回:テクトロニクスが提供するPCソフトウェア
「【インタビュー】テクトロニクスが取り組むPCソフトウェアを使った効率的な開発環境の構築」

はじめに

オシロスコープは電子回路のハード技術者や組込みシステムのソフトウェア技術者にとっては必須の測定器である。オシロスコープの歴史は長く、米国のGeneral Radio社が506Aというアナログ・オシロスコープを1931年に販売したことから始まり、現在のオシロスコープの原型となっているトリガー方式オシロスコープは1947年にテクトロニクスが最初に販売した。現在販売されているオシロスコープはデジタル化されており、多くの機能が搭載されてさまざまな用途に応じた波形解析ができるように進化している。オシロスコープの長い歴史は電気学会誌の2012年132巻1号に掲載されている「オシロスコープの技術変遷(松本栄寿)」に詳しく書かれている。

今回の連載記事はオシロスコープの世界的なトップメーカであるテクトロニクスの協力を得て、初めてオシロスコープを使う人を対象にエントリーモデルのTBS2000B(2chモデル)を事例にして基本的な使い方や使用上の注意点を解説する。

図1. 学校教育から製品開発まで幅広い用途で使われるTBS2000B

図1. 学校教育から製品開発まで幅広い用途で使われるTBS2000B

届いたオシロスコープを見てみる

オシロスコープを購入すると本体以外に様々なものが同梱されている。最近のオシロスコープには紙の取り扱い説明書が同梱されていないことがあるので、使い方などはメーカのホームページに掲載されている取り扱い説明書を見ることになる。今回利用するテクトロニクスのTBS2000B本体の取扱説明書は下記からダウンロードできる。

TBS2000Bの日本語の取扱説明書が掲載されたホームページ
https://download.tek.com/manual/TBS2000BSeriesUserManual=1=Traditional_US_Letter_PDF=JA-JA[1]_077153300.pdf

TBS2000Bのプログラマー・マニュアル(英文)
https://download.tek.com/manual/TBS2000-TBS2000B-Programmer-077114903.pdf

オシロスコープと一緒に梱包されているものは電源コード、プローブ、プローブのアクセサリ、日本語パネル・オーバーレイがある。これ以外にオプションとしてUSB Wi-Fi ドングル、その他のプローブ、50Ω BNC アダプタ、パワー測定用デスキュー/校正フィクスチャ、GPIB-USB 変換アダプタなどがあり、これらを紛失しないようにキャリングケースに本体といっしょに保管することが望ましい。

図2. オシロスコープの本体や付属品、アクセサリなどを収納するケース

図2. オシロスコープの本体や付属品、アクセサリなどを収納するケース

プローブのアクセサリとして添付されているグランド・スプリング、カラー・バンド、調整用ドライバは小さいものであるため紛失する可能性は高いのでプローブといっしょに袋に入れて保管するのが望ましい。

図3. 紛失しやすいプローブのアクセサリ

図3. 紛失しやすいプローブのアクセサリ

オシロスコープに電源を投入する

オシロスコープ本体と電源コードを繋いでコンセントから給電を行う。このとき重要なのが接地(アース)を取ることである。接地が取れていればオシロスコープを安全に使うことができる。

図4. 接地が確実に取れる3ピンコンセントに電源プラグを接続する

図4. 接地が確実に取れる3ピンコンセントに電源プラグを接続する

オシロスコープに電源を投入すると最初に下記のような画面がしばらく表示される。この表示がされている間にオシロスコープの診断や初期設定が行われる。

図5. 電源を投入したときに最初に表示される画面

図5. 電源を投入したときに最初に表示される画面

日付時刻を設定する

購入したばかりのオシロスコープで最初に行う操作が日付時刻の設定である。パネルにあるユーティリティ(Utility)キーを押すことによって下記の画面が表示されるので日付時刻を設定する。

オシロスコープに設定する日付時刻はUSBメモリに波形データなどを保存する際に一緒に記録されるので必ず初期設定を行う必要がある。

図6. 日付時刻の設定

図6. 日付時刻の設定

そのほかに液晶画面に表示される言語やヘルプ表示の有無の選択ができる。今回の記事では判り易くするために日本語表示とした。

【ミニ解説】オシロスコープを安全に使うために配電の仕組みを知る

多くの電子機器や電気機器は電力会社が供給する単相の交流電源を使って動作している。世界の単相交流電源は米国や日本で使われている100V系と欧州や多くのアジア、中東、オセアニア、アフリカで使われている200V系がある。100V系には100V、110V、115Vがあり、200V系には220V、230V、240Vがある。またプラグの形状は各国で異なるため、海外に出向く場合は事前に電源電圧とプラグの形状を確認する必要がある。

日本国内では一般の電気機器や電子機器に使われる交流電源は単相100Vである。大型の住宅用エアコンやIHクッキングヒータなど消費電力の大きな電気機器は単相200Vが使われている。電力会社では変電所から需要家の近くまで6600Vの電圧で配電され、需要家の近くの電柱に設置された柱上トランスや地上に設置されたキュービクルの中にあるトランスを使って100Vと200Vが使えるように単相3線という配線で電子機器や電気機器に電気を供給している。工場やビルなどでは工作機械やエレベータなどの動力用に三相電源が供給されているが、住宅やオフィスでは三相電源を使うことはあまりない。

図7. 単相3線で供給される100Vと200V

図7. 単相3線で供給される100Vと200V

住宅やオフィスなどに配電された電気は壁にあるコンセントから使えるようになっている。住宅の多くは接地端子がない2ピンのコンセントから100Vが給電されるようになっている。台所や洗面所など水を扱う場所のコンセントは接地端子付きになっている。そのほかにも用途に応じてさまざまなコンセントが使われている。

図8. 日本国内で使われている単相三線用の主なコンセントの形状

図8. 日本国内で使われている単相三線用の主なコンセントの形状

住宅で使われる電気機器の中で洗濯機や電子レンジの取扱説明書には安全のために接地を取って使うように書かれている。これらの機器は水や水蒸気のあるところで使われるので、漏電による事故を防ぐために接地の記述がされている。

人が電気機器や電子機器の金属ケースに触れる可能性のある製品の場合は故障による漏電やノイズフィルタからの漏れ電流によって人が金属部分に触れたときに感電する危険がある。接地が取れていれば人は感電しないので安全に電気機器や電子機器を使うことができる。屋内に配電された交流電源は分電盤に設置された漏電ブレーカを経由しているので、火災や感電など重大な事故が生じる恐れのある漏電があった場合は電源を遮断する仕組みとなっている。

図9. 接地の有無により感電の危険性の違い

図9. 接地の有無により感電の危険性の違い

漏電以外にも機器の金属ケースに電圧が印加される場合があり、感電事故が発生する可能性がある。オシロスコープは入力のBNC端子の外側がケースに接続されているので、接地をしないで使うと測定対象のコモンモード電圧がケースに印加されて感電する危険がある。

人の体内を電流が流れた場合の危険度は電流値によってことなるが、オシロスコープを使うときは危険回避のために接地が取れる3ピンのコンセントから給電するのが安全である。


執筆:横河レンタ・リース株式会社 事業統括本部 魚住 智彦

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