計測関連用語集

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松下通信工業(まつしたつうしんこうぎょう)

(Matsushita Communication Industrial Co., Ltd.) パナソニック(松下)ブランドの計測器をつくっていたメーカ。1958年に松下電器から通信/音響/計測機器などの産業向け電気機器を分離して設立された(つまり家電ではなく、通信などの工業・産業機器の子会社)。会社名は松下通信工業株式会社(本社は神奈川県横浜市)。「松下通工」の略称で呼ばれた。2003年1月に社名をパナソニックモバイルコミュニケーションズ株式会社に変更。パナソニックグループの再編で2022年に会社は解散。オシロスコープ(オシロ)などの基本測定器と、テレビ・オーディオ測定器のラインアップが豊富な、老舗計測器メーカだった。オシロの日立電子とFM/AM信号発生器の目黒電波測器が合わさったようなラインアップだったと筆者は思っている。 2003年以降の会社名(最終の社名)でわかるように、会社の主力事業は無線通信機器である。1995年にNTTドコモから、従来よりも大変小型な携帯電話4機種が発売され(mova、ムーバ)、後のガラケーのはしりとなったが、そのうちの1機種は松下通工がつくっている。端末だけでなく(無線に限らず有線も含む)通信機器全般をラインアップしていた。ネットには「松下通信物語」など、松下通工の概要や変遷、どのような「ものつくり」だったか、詳細な記述があるが、通信機器(電話機や移動体通信)のことばかりで、計測器についてはほとんど記録が残っていない。各カテゴリーの主要な計測器のモデルを以下に示す。計測器の形名はVP-xxxx(xは数字)。 電圧・電流・電力測定器:VP-2660B デジタルマルチメータ カウンタ:VP-4545Aエレクトロニックカウンタ オシロスコープ:VP-55xxシリーズ アナログオシロスコープ 信号発生器:VP-7201A RC発振器、VP-7402A ファンクションジェネレータ、VP-8132A標準信号発生器、VP-8253A AMステレオ信号発生器 テレビ・オーディオ測定器:VP-77xxシリーズ オーディオアナライザ、VP-8400A NTSC/PALシグナルジェネレータ、VP-8480A ISDB-Tアナライザ、VP-9680Aソフォメーター ラインアップはオーディオアナライザやステレオ信号発生器などのテレビ・オーディオ関連のラインアップが多く、TVの地上波が2000年代にデジタル化する際にはISDB-Tアナライザを発売している。デジタルオシロスコープも発売したオシロの老舗ではあるが、2000年以降のラインアップは最先端のオンリーワンモデルがほとんどなかったように思われる。たとえば横河電機(現横河計測)ならデジタルオシロスコープのDLシリーズ、アンリツなら携帯電話の測定器、安藤電気なら光測定器、というように「松下通工なら○○測定器」という、時代の先端を象徴するモデルが(ISDB-Tアナライザ以外は)みあたらない。テレビ・オーディオ測定器は地デジ以降に市場規模が縮小し、テクトロニクスやシバソクは撤退し、目黒電波測器は計測技研に吸収され、松下通工も計測器から撤退した。 松下ブランドのオシロスコープを知っている技術者はもう少ないと思われるが、当サイトが2023年1月に読者に行ったアンケートで、オシロメーカとして松下通工をあげた人が(少数ながら)いる。いまでも「使ったことがあるオシロのメーカはパナソニック」という人がいることは、同社オシロがそれなりに普及していたことを物語っている。 みんなの投票 第2弾 結果発表

マルチパワーソース(まるちぱわーそーす)

(multi power source) 富士電機のリレー試験器の名称。三相の電圧・電流が発生できる小型・軽量な計測器。計器校正から保護継電器の試験、各種シミュレーションまで幅広い用途に使われる。電力系統の設備である、電力会社の電気機器に使われるリレーを富士電機はつくっている(現富士電気機器制御株式会社など)が、リレーだけでなくリレーの試験器もつくった。 従来の3相虚負荷試験器、リレー試験器、時間計、周波数可変電源、パルス発振器、定電圧・定電流発生器の機能を1台に集約しているので、この1台であらゆる試験ができる。富士電機が電力会社の仕事を請け負うときに使いたい機能を盛り込んだリレー試験器として開発された。大電流アンプを備え(オプション)、1台で最大90A(30A/240VA×3回路)の大容量を、可搬型のサイズ・質量で実現している。海外のOMICRON製品ほどの機能・性能はないが、特別高圧用のリレーの大電流試験器としては、最も優れたリレー試験器といえる。 2019年7月発行の製品カタログには、マルチパワーソース(保護継電器試験装置)としてMPS-31とMPS-33があり、アクセサリの大電流アンプはLCA33、電圧電流切替器はVISW2。カタログのトップには「あらゆるフィールドの要望を取り入れ、現場での使い勝手を考えて造りこまれた」とある。 保護リレー試験器は、計測用の交流安定化電源をつくっている国産の大手計測器メーカ、エヌエフ回路設計ブロックが国内トップシェアだが、電力会社向けのリレー試験器は富士電機やデンソクテクノ(旧京濱電測、けいひんでんそく)もある。 余談だが、富士電機が電力会社の施設で使っているのを見た他の重電メーカ(同業者)が、富士電機製リレー試験器を使いたいと希望し、富士フェステック株式会社(※)からレンタルしたことがある。 (※) 富士電機の「機材・計測サービス」部門である富士フェステック株式会社が、現在はマルチパワーソースの主管部署で、販売とレンタルを行っている。 エヌエフ回路設計ブロックには、リレー用の3相のデジタルパワーメータとして、パワーマルチメータ 2721がある。「マルチ」とか「パワー」とかの名称からはリレー用の計測器であることを想像することは難しい。これも余談だが、エヌエフの2721とほぼ同等品に近計システムのPHA-200Aなど(PHAシリーズ)があるが、その品名はデジタル電圧電流位相差計である。「パワーマルチメータ」と「デジタル電圧電流位相差計」が同等品であることは、リレー試験器の関係者でないと知りえない、ニッチな「計測器ミニ知識」である。リレー試験器自体が、計測器の中で大変ニッチな製品であるのに、その周辺機器である「3相の電圧・電流・位相差計」の名称が統一されていないので、さらにわかりにくいニッチな製品となっている。

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