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2022/02/28

くるまと無線~CASE時代を支える無線技術

「IoT(モノのインターネット)」の言葉は生活の中に浸透し当たり前のことになっています。自動車もCASE※1が標語になっています。とりわけ、無線技術は自動車を閉じた世界からインターネットと連携する手段として大いに活用されています。

※1

Connected(コネクティッド)、Autonomous(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとった造語。

本稿では、車載システムに使われている無線技術やサービスを概説します。最初に、無線技術の基本要件である周波数帯の利用状況を説明します。次に、周波数帯ごと(超短波、ミリ波など)の特徴を概説します。その後、無線技術を活用したサービスや機能について解説します。キーレスエントリ、車載用レーダ、GPSを使った測位システムGNSSやTPMS、ETC、VICS、ビーコン、UTMSなどを説明します。最後に無線システム開発で使用される計測器を紹介します。
《本稿の記述は、筆者の知見による解釈や、主観的な取り上げ方の面もあることをご容赦ください。また、本稿に記載されている技術情報は、当社および第三者の知的財産権他の権利に対する保証または実施権を許諾するものではありません。》

周波数帯ごとの用途と特徴

日本では電波※2の公平かつ能率的な利用を確保することによって、公共の福祉を増進することを目的として、電波法に基づいて総務省が周波数管理を行なっています。電波法は使用する周波数の割り当てや設備、資格などが定められています。なお、周波数の割り当てについては、国連の国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)の無線通信部門(ITU-R:ITU-Radiocommunication Sector)による国際分配の決定を受けて、国内での審議会を経て決定されます。具体的な周波数決定プロセスについては、総務省のサイトをご覧ください。
https://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/freq/process/index.htm

※2

電波法において「電波」と定義されているのは、周波数では3000GHz以下。

図1に周波数帯を帯域ごとに分類した用途の概要を示します。図2は車載用ミリ波レーダで使用される帯域の詳細な割り当て状況です。76GHz~81GHzに自動車用のレーダが割り当てられていることを明示しました(赤○)。その他の電波の使用状況については、総務省のサイトをご覧ください。
https://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/freq/search/myuse/use/index.htm

図1 周波数帯ごとの割り当て
図1 周波数帯ごとの割り当て

出典:総務省

図2 車載用ミリ波レーダで使用される帯域の割り当て
図2 車載用ミリ波レーダで使用される帯域の割り当て

出典:総務省

周波数帯ごとの特徴

電波の基本的な特性は図3です。周波数が高いと電波の直進性が強くなり、伝送できる情報量が増えます。周波数が低いと電波は回り込みやすくなりますが、伝送できる情報量は減ります。各周波数帯の特徴を述べます。詳細な技術内容は専門書等の技術資料をご覧ください。

図3 電波の特性
図3 電波の特性

1 超長波(VLF:Very Low Frequency)

超長波は、10km~100kmの非常に長い波長を持ち、地表面に沿って伝わり低い山をも越えることができます。水中でも伝わるため、海底探査に応用できます。潜水艦の通信でも採用されていますが、波長の関係より地上側では大規模な送信設備が必要であること、受信側ではアンテナ線の長さなどの課題があります。また、潜水艦から送信はできず、受信だけとなっているようです。長文の通信もできません。

2 長波(LF:Low Frequency)

波長は、1km~10kmで、遠くまで伝わることができます。1930年頃まで電信用※3として利用されていましたが、大規模なアンテナと送信設備が必要であることと、後ほど解説する短波通信の発展によりあまり使用されなくなっています。ヨーロッパやアフリカ等でラジオ放送に使われています。日本では船舶や航空機の航行用ビーコン※4や電波時計に時間と周波数標準を知らせるための標準周波数局※5に利用されています。図4はモールス信号を生成する電鍵(でんけん Telegraph Key)です。図5はVLFのアンテナ設備例です。大型であることが判ります。

※3

「トンツー」と呼ばれる、モールス信号による通信。

※4

(Beacon)地上に設置した無線局から発射された電波や光の信号により受信した側の位置や情報を取得できる装置。

※5

総務省が所管する無線局。日本には二か所設置されている。福島県「おおたかどや山標準電波送信所(40kHz)」、佐賀県「はがね山標準電波送信所(60kHz)」。

図4 電鍵と無線機
図4 電鍵と無線機
図5 VLFアンテナ
図5 VLFアンテナ

3 中波(MF:Medium Frequency)

波長は、100m~1000mで、約100kmの高度に形成される電離層のE層に反射して伝わります。電波の伝わり方が安定しているので遠距離まで届くことから、主としてAMラジオ放送用として利用されています。送信機や送信アンテナは大規模なものが必要ですが、受信機は簡単な部品で構成できます。図7が電離層の構造で、E層は海抜90~120kmです。図中の黄色線はカルマン線と呼ばれ、海抜100kmあたりです。国際航空連盟によって定められています。カルマン線を越えた空間を宇宙空間、この高度以下を大気圏と定義されています。最近話題になっている宇宙旅行はカルマン線を越えて飛行することです。

図6 大気/電離層の構造
図6 大気/電離層の構造

4 短波(HF:High Frequency)

波長は、10m~100mで、約200~400kmの高度に形成される電離層のF層に反射して、地表との反射を繰り返しながら地球の裏側まで伝わっていくことができます。長距離の通信が行えることから、現在でも、遠洋の船舶通信、国際線航空機用の通信、国際放送などに利用されています。

5 超短波(VHF:Very High Frequency)

波長は、1m~10m、直進性があり、電離層で反射しにくい性質ですが、山や建物の陰にもある程度回り込んで伝わることができます。短波に比べて多くの情報を伝えることができます。FMラジオ放送や色々な移動通信に利用されています。

6 極超短波(UHF:Ultra High Frequency)

波長は、10cm~1mで、超短波に比べて直進性が更に強くなりますが、山や建物の陰には回り込んで伝わることもあります。伝送できる情報量が多く、小型のアンテナと送受信設備で通信できることから、携帯電話や業務用無線のほか、地上デジタルTV、空港監視レーダや電子タグ、電子レンジなどに利用されています。

7 マイクロ波(SHF:Super High Frequency)

波長は、1cm~10cmで、直進性が強い性質です。伝送できる情報量が非常に多いので、放送などの送信所間を結ぶ固定の中継回線、衛星通信、衛星放送や無線LANに利用されています。気象レーダや船舶用レーダにも利用されています。

8 ミリ波(EHF:Extra High Frequency)

波長は、1mm~10mmで、マイクロ波と同様に強い直進性があり、多くの情報量を伝送することができますが、雨や霧による影響を強く受けます。そのため長距離に伝わりません。短距離の画像伝送システム、簡易無線などで利用されています。車載用では衝突防止レーダで利用されています。電波望遠鏡による天文観測でも使われています。この周波数帯は大容量・長距離の伝送を可能とする技術や無線装置の小型化・低価格化などの技術開発が行われています。

9 サブミリ波

波長は、0.1mm~1mmで、光に近い性質を持っています。大規模な無線設備が必要です。また、空気中の水蒸気による吸収が大きい特性なので、通信用としての利用は少ないです。ミリ波と同様に電波望遠鏡による天文観測が行われています。今後の利用拡大が期待されています。

10 光波

電波の定義範囲から超えます。赤外線、可視光の波長帯となります。LiDARや光ビーコンなどで使われます。

無線が適用されている車載システム

車載システムで適用されている無線システムを大きく分類すると、キーレスエントリ、イモビライザなどのボデーシステム系、ミリ波レーダなどの衝突防止システム系、GPSなどの車両外部との通信システム系、テレビやラジオの放送系があります。それぞれの技術概要を解説します。

1 ボデーシステム系

1)キーレスエントリシステム

機械キーを使用せずに、携帯機のボタン操作することで無線を使って車両側のECUがドアの施錠、開錠を行います。キーレスエントリを高機能化したシステムは開錠のボタンを操作せずに、携帯機をカバンに入れておくだけで車両に近づくとドアを開錠することができます。なお、システムの名称はOEM各社で異なっていますが、一般的に「スマートエントリシステム」と呼称されているようです。主として使用する周波数帯はUHF帯(315MHz)です。

図7 上段:スマートキ 下段:キーレス
図7 上段:スマートキ 下段:キーレス

2)タイヤ空気圧モニタシステム(TPMS※6

タイヤの性能を活かすためには空気圧の管理が必要です。空気圧が低下すると、燃費が悪化しタイヤの摩耗が早く進むなどに加えて、走行時の安定性が悪化するので、安全性に影響します。米国では法規により義務付けられています。日本においても採用例が増えています。TPMSには間接方式と直接方式があります。間接方式はタイヤの空気圧が低下するとタイヤの回転数が変動することを利用し、ABS※7ECUなどがソフトウェア処理によって空気圧の低下を検出します。直接式はセンサを使ってタイヤの空気圧を検出し車両側に無線を使って送信します。車両側のECUでタイヤの圧力低下を判定します。使用する周波数はUHF帯(315MHz)です。各タイヤに圧力センサと送信機とが一体となったTPMSセンサが装着されます。

※6

(Tire Pressure Monitoring System)

※7

(Anti-lock Braking System)車輪のロックを防ぐシステム。詳細は本サイトの記事をご覧ください。2021年5月 公開記事:「自動車のブレーキ~ますます高まる重要性」

図8 TPMSセンサの例
図8 TPMSセンサの例
図9 TPMSイメージ
図9 TPMSイメージ

2 衝突防止システム系

衝突防止システムで採用されるセンサとして、赤外線を使うLiDAR(Light Detection and Ranging ライダーと呼称) と電波を使うレーダがあります。レーダが使用する周波数はミリ波帯です。主として、24GHzと76GHzが使用されます。24GHzレーダは車両の周辺監視用などに、76GHzレーダは中長距離用のセンサとして使用されます。24GHz帯ではUWB※8により、高性能のレーダが提案されていましたが、欧州で周波数の割り当てに使用期限があったことから、普及しなかったようです。スマートホンで採用された例はあります。

※8

(Ultra Wide Band) 超広帯域無線通信。非常に短いパルス幅の信号を使用する。高い距離分解能が得られるが、遠距離には向かない。

図10 車載用レーダのイメージ
図10 車載用レーダのイメージ

3 通信システム

車両内で使える通信技術としては、スマートホン、Bluetooth、Wi-Fiなどが実用化されていますが、車載の通信システムは関係省庁(内閣官房、内閣府、警察庁、総務省、経済産業省、国土交通省)によって、日本のITSとして「官民ITS構想・ロードマップ」が策定され、その中で議論されています。最新の資料は首相官邸のサイトをご覧ください。
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/pdf/20200715/2020_roadmap.pdf

また、情報通信分野の研究開発や標準化を「ITS情報通信システム推進会議」が取り組んでいます。活動内容はサイトをご覧ください。
https://itsforum.gr.jp/Public/J3Schedule/Top.html

本稿では車載用通信システムの代表例について解説します。

1)衛星測位システム※9(GNSS:Global Navigation Satellite System)

最も普及しているシステムがGPSです。カーナビでは自車の位置情報を取得するために必須の通信システムです。GPSで位置を測定する仕組みについて説明します。基本的な考え方は三角測量の原理です。車載機で最低3個のGPS衛星から信号を受信することが必要です。各衛星から受信した信号には正確な時計(原子時計)が含まれています。各衛星の受信した時刻と車載機側の時刻の差分を求めます。その差分に光の速さを掛け合わせると、各衛星の距離を算出できます。各衛星の距離から車載機の地点を求めることができます。しかし、車載機側の時刻には電子時計に比べて誤差が大きいため、4個の衛星を使って誤差を最小化します。3個の衛星だけでは数10mから数100mの誤差を生じるようです。

※9

詳細は本サイトの記事をご覧ください。2021年6月 公開記事:「自動車ECUのインタフェース~スイッチ信号から無線通信まで多岐にわたる技術を適用」

図11 位置算出のイメージ
図11 位置算出のイメージ
図12 GPS車載アンテナ
図12 GPS車載アンテナ
図13 GPS衛星(イメージ)
図13 GPS衛星(イメージ)

2)ETC(Electronic Toll Collection System)

ETC(ETC1.0)は車載機と料金所のETC専用ゲートを無線通信で接続し、通行料金を支払うシステムです。図14はETC車載機の一例です。2001年から本格運用が開始され、利用率は93.4%(令和3年10月時点、国土交通省)となっています。2016年から導入されたETC2.0は従来の料金収受機能に加え、インターチェンジの出入り口だけでなく、高速道路等に設置された路側機と ETC2.0 車載器との間で双方向に通信を行います。使用される周波数は5.8GHzです。

図15はETC2.0システムの構成です。広域的な渋滞情報や画像情報などの提供を行っています。図16はETC2.0の概要です。ETC2.0の利用率は26.8%です(令和3年10月 国土交通省)。路側機から収集された車両の位置情報等のデータを事業者へ提供する車両運行管理支援サービスが 2018 年8月から導入されています。図17はETC2.0の車両運行管理支援サービスの概要です。その他のサービスとして、災害発生時に通行できる道路の情報(「通れるマップ」と呼称)が提供されます。このシステムはOEMなどの民間企業のデータも集約して生成されます。

図14 ETC車載機の例
図14 ETC車載機の例
図15 ETC2.0システムの構成
図15 ETC2.0システムの構成

出典:国土交通省

図16 ETC2.0の概要
図16 ETC2.0の概要

出典:国土交通省

図17 車両運行管理支援サービス
図17 車両運行管理支援サービス

出典:国土交通省

3)VICS(Vehicle Information and Communication System:道路交通情報通信システム ビックスと呼称)

道路の渋滞や交通規制などの交通情報、駐車場の空き情報をFM多重放送やビーコンを使って、リアルタイムでカーナビが受信できるシステムです。1996年にサービスが開始されました。受信する手段によって、取得できる情報の範囲や内容が異なっています。FM多重放送はNHK FM放送局から音声放送に多重化して、文字コードや図形情報を送信します。情報は5分間隔で更新されます。FM多重によるサービスを大きく分けると、道路交通に関する情報提供と気象などに関する情報の提供です。図18はFM多重のシステム構成です。各種の情報をVICSセンタで集約してFM多重放送によって配信します。

図18 FM多重のシステム構成
図18 FM多重のシステム構成

出典:国土交通省(「道路における情報提供の現状」平成30年10月24日 国土交通省道路局)

図18上段のJATRIC(Japan Road Traffic Information Center)は公益財団法人日本道路交通情報センタで、日本の道路と道路交通に関する情報の収集、提供などを行う組織です。

ビーコンには光ビーコンと電波ビーコンがあります。光ビーコンは主として一般道に設置されています。情報の範囲は周辺地域の道路情報や駐車場情報などです。電波ビーコンは主に高速道路に設置され、カバーする情報は広域です。使用される周波数は2.4GHzです。なお、2022年3月31日をもってサービスは停止されます。その後は、ITSスポットと呼称される電波ビーコン(5.8GHz)へ移行します。従来の電波ビーコンで受信しカーナビへ表示していたVICSの情報(文字、図形)などは表示されなくなります。2015年4月からVICS WIDEの運用が開始されています。車両のプローブ情報を活用した道路交通情報サービスなどが利用できます。2020年4月から実証実験が開始されています。表1はVICS WIDEのサービス内容です。

表1 VICS WIDE サービス内容
No サービス内容
1 最新の渋滞情報を反映した複数ルートの所要時間を提供
2 プローブ情報を利用した交通状況を提供
3 気象などの特別警報を表示
4 大雨のエリアを表示

VICSに関する詳細な情報は一般社団法人 道路交通情報通信システムセンターのサイトをご覧ください。
https://www.vics.or.jp

4)ハイウェイラジオ

1620kHzの固定周波数によるラジオ放送で渋滞や規制などの道路情報が配信されています。

5)事故通報システム

エアバッグが作動するような交通事故が発生した場合、車載機が自動的に事故発生地点などの情報をコールセンタに通報します。手動で車載機を操作して通報することができます。事故発生から治療開始までの時間短縮や死者数の減少に効果があります。国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で採択されたことを踏まえての導入です。道路運送車両の保安基準が改正されています。新型車は2020年1月1日から、継続生産車は2021年7月1日からの適用が義務付けられています。自動車アセスメント※10の評価項目としても含まれています。図19は事故自動緊急通報装置の概要です。表2はコールセンタへ通知される情報です。

※10

詳細は本サイトの記事をご覧ください。2021年1月 公開:「自動車の安心・安全を評価する仕組み〜日本の自動車アセスメントJNCAP」

図19 事故自動緊急通報装置の概要
図19 事故自動緊急通報装置の概要

出典:国土交通省の資料をもとに作成

表2 コールセンタへ通知される情報
項番 通知事項 内容
1 自動/手動通報 自動通報、手動通報の別
2 緯度・経度 緯度、経度情報
(測地系及び表現形式(度表記)は救援機関の指定する条件に合わせること)
3 位置精度 緯度、経度情報の誤差半径(単位:メートル)
4 車両の進行方向 車両の進行方向を示す方位等
5 走行軌跡 事故発生場所まで走行してきた経路を表す軌跡情報
(一定間隔で取得された複数地点の軌跡情報(上記2~4)10 地点程度)
6 車両の種類 大型車、バス、車両の車種名等
7 車体番号 車台番号 又は 車両の特定に用いる通報機器ごとに付与された一意の番号
8 燃料種類 ガソリン、軽油、LPG、電気、水素等の燃料名
9 事故発生時刻 通報が発生した時刻
10 呼び返し用電話番号 通報者と連絡が可能な自動通報装置、携帯電話等の電話番号
11 契約者氏名 車両所有(使用)者の氏名(法人を含む)
12 登録ナンバー 車両登録番号(例:名古屋123あ1234)
13 事業者ID 接続機関を特定するための識別子
14 発信元電話番号 接続機関の発信元電話番号
15 通報要因 接続機関のオペレータが通報者との会話の中で確認した通報区分
(例:交通物損、応答なし)

出典:警察庁「接続機関における自動車からの緊急通報の取り扱いに関するガイドライン」の抜粋

6)5.9GHz帯V2X用通信システム

米国や中国など国際的に検討が進められている車両と他システムとの通信によるサービスが5.9GHz帯で検討されています。既存無線システムとの共存など技術的条件が課題です。車車間通信や路車間通信によって、出会い頭衝突・右左折衝突・緊急車両情報提供などの安全運転支援サービスの利用が可能となります。

7)ワイヤレス給電

電動車両に搭載されているバッテリの充電を、ケーブルを経由せずに非接触で行うことです。コストがかかるバッテリの容量を減らす技術として期待されています。スマートホンの充電方法として採用されていますが、量産車での実用化はまだです。給電の方式は各種の技術が提案されています。例えば、電磁誘導式、電界結合式、電波式があります。実用化の課題としては、車両に追加するワイヤレス給電機器のコスト低減、電波法などの法整備、人体防護、インフラの普及、技術標準化など、車載側だけでなくインフラ側にもあります。

8)業務用無線機

業務用無線機にはアナログ無線機とデジタル無線機があります。デジタル無線機は周波数を有効に活用できることから、アナログ無線がデジタル無線に集約されます。そのため、アナログ無線機の使用ができなくなります。当初の計画では2022年11月30日までの期限となっていましたが、コロナ禍による企業への影響を考慮して、2024年11月30日まで延期されました。

9)新交通管理システム(UTMS※11

車載通信に関連した技術として電波を使わず、光ビーコン(図20)などの技術による、いわゆる路車間通信(V2I:Vehicle to Infrastructure)によって新たな交通システムを実現しています。導入されているサービスの一覧は図21です。なお、サービスの中には電波によるサービスも含まれます。車両と交通管制システムとを連携することが可能です。各システムの導入状況は都道府県で異なっています。システムの主な特徴は、光による通信なので、通信の干渉がないことや、電波法上の免許が不要などです。表3に特徴をまとめました。光ビーコンの整備状況は2014年3月現在、全国で約55,000基となっています。詳細は一般社団法人UTMS協会のサイトをご覧ください。
https://www.utms.or.jp/index.html

※11

(Universal Traffic Management System)平成24年に設立

図20 UTMSシステムの構成
図20 UTMSシステムの構成

出典:警察庁ウェブサイト

図21 UTMSの構成
図21 UTMSの構成

出典:警察庁ウェブサイトをもとに作成

表3 UTMSのサービス
システム名 機能
ITCS(Integrated Traffic Control Systems)
高度交通管制システム
ITCS 高度交通管制システム UTMSの心臓部
TSPS(Traffic Signal Prediction Systems)
信号情報活用運転支援システム
TSPS 信号情報活用運転支援システム 運転者に対して信号灯火に関する情報を事前に提供することで、ゆとりある運転を促し、急停止・急発進に伴う事故の防止等を図るシステムです。
PTPS(Public Transportation Priority Systems)
公共車両優先システム
PTPS 公共車両優先システム 優先信号制御により、バス運行の定時性を確保するなど、公共交通機関の利便性向上を目的としているシステムです。
PICS(Pedestrian Information and Communication Systems)
歩行者等支援情報システム
PICS 歩行者等支援情報システム 高齢者や障害者などの歩行者に、交差点名称や歩行者用信号機の状況を音声で提供し安全に交差点の横断を支援するシステムです。
令和2年度から運用開始した高度化PICSは、Bluetoothを活用し、スマートフォン等に対して歩行者用信号情報を送信するとともにスマートフォン等の操作により青信号の延長を可能とするシステムです。
DSSS(Driving Safety Support Systems)
安全運転支援システム
DSSS 安全運転支援システム 光ビーコンでの運用終了。無線路側機で運用(700MHz)運転者からは見えにくい周辺の交通状況等を視覚・聴覚情報により提供することで危険要因に対する注意を促し、ゆとりをもった運転ができる環境を作り出すことにより、交通事故の防止を図るシステムです。
FAST(FAST emergency vehicle preemption systems)
現場急行支援システム
FAST 現場急行支援システム 緊急車両に対して経路等に関する情報を伝達するとともに、優先信号制御を行うことで現場急行における時間短縮と緊急走行を起因とする交通事故防止を図るシステムです。
AMIS(Advanced Mobile Information Systems)
交通情報提供システム
AMIS 交通情報提供システム 運転者に渋滞、事故、所要時間等の交通情報を様々なメディアを通じて提供することにより交通流の分散を促し、交通の円滑化を図るシステムです。カーナビゲーション装置に交通情報をリアルタイムで提供するVICS(道路交通情報通信システム)もその一環です。
HELP(Help systems for Emergency Life saving and Public safety)
緊急通報システム
HELP 緊急通報システム 運転中の事故や緊急事態発生時、自動又は手動により自動車(携帯)電話等のネットワークを通じて専用のオペレーションセンターに位置情報等が伝送され、警察や救援機関への手配を行うシステムです。
MOCS(Mobile Operation Control Systems)
車両運行管理システム
MOCS 車両運行管理システム バス・タクシーやトラックの走行位置情報などを運行管理者に提供することにより効率的な運行を支援し、交通の円滑化を図ります。
EPMS(Environmental Protection Management Systems)
交通公害低減システム
EPMS 交通公害低減システム 大気汚染や気象などの状況を考慮した交通情報提供や信号制御を行うことにより排ガス、騒音等の交通公害を低減し、環境保護を図ります。

出典:警察庁ウェブサイトをもとに作成

関連計測器の紹介

図22 無線システム開発で使用される計測器の一例
図22 無線システム開発で使用される計測器の一例

その他の製品や仕様については計測器情報ページから検索してください。

おわりに

日常生活において、無線システムは重要な技術となっています。自動車においてもCASEの進展とともに、利便性の向上だけでなくカーボンニュートラルや安心安全の実現に向けて、更に高度化すると推察されます。


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