市場動向詳細

部品をとめる ~ ねじ、ボルト ~

自動車は多くの部品で構成されています。各々の部品を組み立てて車両に作り上げるためには、種々の接合技術が適用されています。車体の基本骨格をなすボディを製作するためには主として溶接※1や接着が採用されています。その他の接合技術として、「ねじ」が使われています。「ねじ」は自動車に限らず機械を構成する重要な部品として使われ続けています。「ねじ」に類似する表記として、「ボルト」や「ビス」があります。「ねじ」、「ボルト」、「ビス」の一般的な分類例では、「ねじ」は側面にらせん状の溝をもったもの。「ボルト」はらせん状の溝が内側にあるもの、いわゆる「ナット」と組み合わせて使われるもの。「ビス」は比較的に小さいく先端が尖った「ねじ」を示すようです。各分類については後ほど改めて解説します。本稿では自動車に関連する「ねじ」全般について解説します。先ず、「ねじ」の歴史、「ねじ」に関連する市場の状況を紹介します。その後に、「ねじ」の分類、構造について解説します。併せて、「ねじ」の規格であるJIS(Japanese Industrial Standardsの略、日本産業規格)の中で、「ねじ」に関連した情報及びJISにない自動車業界の独自規格について紹介します。さらに、「ねじ」の製造方法、「ねじ」を締結する工具類を紹介します。最後に「ねじ」に関連した計測器の例を示します。

※1

次の記事が詳しい。2023年8月公開 溶接 ~ 物をつなぐ技術

《本稿の記述は、筆者の知見による解釈や、主観的な取り上げ方の面もあることをご容赦ください。また、記載されている技術情報は、当社および第三者の知的財産権他の権利に対する保証または実施権を許諾するものではありません。》

ねじの歴史

ねじの起源については諸説あるようですが、自然界のものとされています。例えば、貝の一種である巻貝のらせん状の構造であるとか、蔦(つた)が樹木に巻き付いた状態からヒントを得たとの説があります。工学的な記録で残っているのは、紀元前280年頃にアルキメデス(生誕 紀元前280年頃 イタリア)が発明したとされるスクリュを使う揚水ポンプや、レオナルド・ダ・ビンチ(1452年―1519年 イタリア)のスケッチ画に「ねじ切り旋盤」を想定されるもの、ねじ山を製作するジグ(タップとダイス)と思われるものがあります。揚水ポンプは日本にも伝来し、竜樋(たつとい)と言われ、佐渡金山で坑道の排水に使われました。

図1 アルキメデスの揚水ポンプ
図1 アルキメデスの揚水ポンプ

その後もねじは進化しますが、18世紀後半から始まった産業革命によって発展した製鉄技術や工作機械の考案により、ねじが普及しました。ねじを大量に生産する技術として、1878年 ヘンリ・モーズリ(英国)考案したねじ切り旋盤があります。加工する丸棒を回転させ、溝を形成する工具を移動させながら、ねじ山を形成します。現在の旋盤と基本構造は同じです。

図2 ヘンリ・モーズリのねじ切り旋盤
図2 ヘンリ・モーズリのねじ切り旋盤

一方、日本におけるねじの起源は、1500年なかばにポルトガル人が種子島に漂流し、その際購入した火縄銃にあるとされています。火縄銃には火薬を出し入れする尾栓(びせん)にねじが用いられていて、刀鍛冶がこれと同じものを製作しました。ねじの技術習得は難問だったようですが、ポルトガル人から技術を習得し国産銃を完成させました。当時、鉄砲のことを「種子島」と呼んでいたようです。図3は火縄銃の一例、図4は尾栓(びせん)の位置関係を示しています。ねじの製法に係る「若狭姫伝説(わかさひめでんせつ)」が語り継がれています。記録が残っていないので、史実でないようですが、各所の情報をご覧ください。尾栓は銃身の末端を密閉する機能ですが、物どうしを締結する機能としたねじが日本に伝わったのは宣教師フランシスコ・ザビエルが、1551年に周防山口の大内義隆に贈ったと記録が残っている機械時計とされています。

図3 火縄銃
図3 火縄銃
図4 尾栓
図3 火縄銃

ねじの市場動向

一般的な自動車で使用されるねじの数は3,000点以上と言われています。ちなみに、大型の航空機では300万点以上のねじが使用されているようです。図5は一般社団法人 日本ねじ工業協会が公表したねじの生産実績(同協会推計値)です。経済変動の影響を受けていますが、長期的には増加傾向を示しています。

図5 ねじ生産実績
図5 ねじ生産実績

出典:一般社団法人 日本ねじ工業協会 公表データをもとに作成(2024年1月25日時点)

ねじの標準化

ヘンリ・モーズリのねじ切り旋盤の発明、産業革命によって、ねじが大量生産されるようになりましたが、多数のメーカが独自の規格で製造したため、ねじの互換性がとれていなかったようです。そこで、ヘンリ・モーズリの弟子であったジョセフ・ウィットウォース(1803―1887 イギリス)は市場のねじを調査し、1841年に「ウィットウォースねじ」と呼ばれる標準化規格を提案し、普及活動を行いました。この規格がイギリス内で普及し製品に適用され海外へ輸出されました。アメリカにおいては、ウィットウォースねじを改良した新たな規格「アメリカねじ」が採用されました。フランスにおいては、メートル法が採用されたため、「SFねじ」が定められました。「SFねじ」はその後、「SIねじ」となりました。さらに、1940年には、ISA(International Standardization Association万国規格統一協会)により、「ISAメートルねじ」として制定されました。しかし、大戦中に各国の部品に互換性がないことが議論され、アメリカ、イギリス、カナダの合意によりインチねじが「ユニファイねじ」として制定されました。この規格は軍需品だけでなく一般品にも適用されました。大戦後に設立されたISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)で各種の規格化が検討され、ISAメートルねじは「ISOメートルねじ」へ、ユニファイねじは「ISOインチねじ」として決議されました。なお、ISOの技術委員会(Technical Committee:TC)の中で、ねじに関する標準化を推進しているのはTC1及びTC2です。

ISO/TC1(Screw Threads):
ねじ
ISO/TC2(Fasteners):
ボルト、ナット等の締結部品

ISOで議論した結果、メートル法に準拠した「ISOメートルねじ」に一本化できなかった背景として、アメリカの軍事規格である「MIL規格」の影響が大きかったようです。航空機業界では、今でもインチねじ系が多く採用されています。図6は「SIねじ」、「ウィットウォースねじ」、「ユニファイねじ」、「ISOメートルねじ」及び「SIOインチねじ」の関係です。ねじの基本仕様は共通化できています。
日本では、日本産業規格(JIS:Japan Industrial Standards)として定められています。ねじは単機能ですが、JISでは多くのページが割かれており、ねじⅠ、ねじⅡに分冊されています。ねじの生産品目は新旧が混在しているので、旧規格を廃止することは産業界に混乱を生じさせるため、JISにおいては、附属書として残されています。

図6 ねじ規格の変遷
図6 ねじ規格の変遷

自動車業界においては、JISで定められている標準化された部品のほかに独自規格を定めています。表7は公益社団法人 日本自動車技術会が定めているねじに関する日本自動車規格(Japan Automotive Standards Organization 略称JASO:じゃそ)です。

表1 ねじ関連のJASO
規格番号 規格名称
F101 自動車部品-六角ボルト
F102 自動車部品-六角ナット
F106 自動車部品-ブリベリングトルク形戻り止め六角ナット
F107 自動車部品-ばね板ナット
F109 自動車部品-座金組込みボルト及び小ネジ
F116 自動車部品-ヘクサロピュラ付きねじ部品
F118 自動車部品-座金組込み六角ナット
F120 自動車部品-平座金組込みタッピンねじ
F121 自動車部品-つば付きなべ小ねじ
F123 自動車部品-つば付きなべタッピンねじ
F124 自動車部品-樹脂用タッピンねじ
F126 自動車部品-フランジ付き六角ボルト
F127 自動車部品-フランジ付き六角ナット

シートベルトを固定するボルトは日本車において、JIS メートルねじではなく、世界共通でユニファイ規格の細目ネジ “7/16-20 UNF”が使用されています。

ここで、「ねじ」に関連する用語について定義しておきます。なお、ねじの呼称については、製品の種類や業界ごとで異なることがあります。

ねじ(Screw):
通常、自己螺旋(らせん)ができる部品で、他の物体や材料に直接挿入して固定するのために使用されるもの。
ねじには頭部と螺旋があり、通常はドライバなどを使用して回転させて取り付けや取り外しを行います。
ボルト(Bolt):
一般的にねじと同様な形状を持っていますが、ボルトは通常、ナットと一緒に使用されます。ボルトは通し穴を通してナットで締結され、2つの部品をしっかりと結合させるために使用されます。

一般的に、ボルトは部品の組み立てや取り外しを容易にするためにナットで留められ、ねじは通常、直接部品に挿入されて使用されます。

小ねじ(Screw or Screw Fastener):
一般的に小型のねじやボルトの一種で、通常、木材やプラスチックなどの柔らかい材料に使用されます。
小ねじは一般的に頭部が付いており、ドライバやドリルを使用して回転させて取り付けます。小ねじの別称として、「ビス」が使われることがあります。「ビス」はフランス語の「vis:ねじ」で、フランスの支援でねじが輸入されたことの名残のようです。

ねじは今後とも物づくりにおいて欠かすことができない最も重要な製品であることから世界的な標準化が推進されてきました。日本においてはJISがその中心的な役割を担っています。旧 日本工業規格(JIS)が制定された1946年6月1日にちなんで、6月1日は「ねじの日」となっています。

ねじの種類

図7は自動車で使用されているボルトやナット、ねじの一例です。

図7 自動車で使われているねじの例
図7 自動車で使われているねじの例

ホイールを取り付ける方式は国産車のナット式が主流です。ホイールボルトは主として欧州車で採用されています。欧州では高速走行の道路環境なので、高い剛性が得られやすいボルト式が採用されています。ナット式ではねじを締結する部位がサスペンション側とホイール側の2点になりますが、ボルト式ではサスペンション側の1点となるので、剛性が高められやすいです。但し、ボルト式ではタイヤを組み付ける際、位置合わせが手間であったり、仮止めのボルトを使ったりします。

ねじの構造

1 ねじの構造

図8はおねじの基本構造です。
①ねじ部:螺旋を形成、②頭部:ねじを締め付けるための箇所、先端面にはドライバなどを差し込むための掘り込み(駆動部)、③首下部:頭部の座面からねじ先までの部分、④円筒部:頭部とねじ部との間にある、不完全なねじの部分、⑤ねじ先:ねじ不完全の部分、締め付けやすさ等を考慮した形状

図8 ねじの基本構造
図8 ねじの基本構造

2 おねじとめねじの構造

図9はおねじとめねじの構造です。
①ピッチ:隣り合うねじ山とねじ山との長さ、②有効径:ねじ溝の幅とねじ山の幅とが同じ長さになる仮想の直径、③山の角度:ねじ山斜面間の角度、④おねじ谷径:おねじの谷底の直径、⑤おねじの外径:おねじの外径、⑥めねじの谷径:めねじの谷底の直径、⑦めねじの内径:めねじの山の直径

図9 おねじ、めねじ各部の名称
図9 おねじ、めねじ各部の名称

3 ねじ駆動部の形状

ねじやボルトの頭部には色々な掘り込みが施されています。図10は駆動部の形状例です。

図10 ねじの頭部形状
図10 ねじの頭部形状

マイナスねじ(①)のスロットが貫通している形状が一般的です。「すり割り」と呼称されます。六角星形のねじ頭の規格である「トルクス(TORX®)」は米国(CAMCAR INNOVATIONS)の登録商標です。特許自体の存続期間は終了しているので、ライセンスがなくても製造できます。一般名称として「シックスロブ(Six Lobe)」、「ヘクサロブ(Hexalobe)」が使用されます。JISでは「ヘクサロビュラ(Hexalobular)」として規定されています。「hexalobular」とは「6つの小葉」という意味です。図10中の「TORX PIN」や「HEX PIN」の頭部形状は掘り込みの中心部に、いわゆる「いじり防止」のピンがつけられており、専用の工具が必要です。

4 ねじ頭部のドット

ねじの規格をJISからISOに準拠させる際、小ねじのM3、M4、M5のピッチが変更されました。JISとISOの規格に準拠したねじが混在することになりました。そのため、識別しやすい施策としてISOに準拠したJISのねじを区別するマークとしてねじの頭にドットを付けることが慣例になったようです。

ねじの工学

1 ねじが締まる原理

ねじは「斜面の応用」と言われます。ねじを平面で捉えると、直角三角形の紙を円筒に巻いたものとなります。直角三角形の斜辺がねじの稜線です。

図11 ねじの捉え方
図11 ねじの捉え方

ねじを締めることは斜面の物を持ち上げることになります。緩めることはその逆です。物を垂直方向に持ち上げるより、斜面方向に動かす方が少ない力で済みます。直角三角形の各辺の長さが5:4:3の場合、斜面方向の力は0.6倍となります。但し、物の移動距離は5/3倍です。

図12 斜面と力
図12 斜面と力

物が滑り落ちずに斜面に留まるのは、斜面の摩擦力が勝っているからです。図12のθが大きくなると、斜面を落ちる力が摩擦力を上回り、物は滑り落ちます。つまり、ねじは自然と緩みます。

2 ネジを締めた時の力学

金属の棒(ばね)を引っ張ると延び、力を戻せば元の長さに戻ります。この関係はばねに荷重をかけた時の伸縮で良く知られているフックの法則となります。図13はばねの伸びと荷重との関係です。

図13 フックの法則
図13 フックの法則

フックの法則は弾性領域範囲内で成立する法則です。弾性領域とは荷重を取り除くと、元の伸びに戻る領域の事です。いったん、弾性領域を超える伸びを与えると、荷重を取り除いても元の伸びに戻らず変形した状態となります。この領域を塑性領域と言います。図14は応力ひずみ曲線です。ひずみ(ε:イプシロン)は伸びではなく、もとの長さからの変位量です。応力(σ:シグマ)は単位面積あたりにかかる力です。降伏点を超える応力を与えると力を取り除いても元の長さになりません。力を加え続けると最後は破断します。鋼以外の材料では図14のように、明確な降伏点が存在しない材料もあります。例えば、アルミニウム合金や銅合金などです。

図14 応力ひずみ曲線
図14 応力ひずみ曲線

3 ねじ・ボルトの強度

ねじやボルトを要求される強度に見合ったものを選定するために、強度を示す区分がJISで定められています。鋼材のねじ・ボルトでは10段階に区分され、ボルトの場合、頭部に強度の指標が刻印されているものがあります。

図15 ボルトの強度区分 打刻例
図15 ボルトの強度区分 打刻例

4 ねじが緩む理由

ねじにはたらく軸力が締め付け時よりも低下することをねじの緩みと定義されます。理由は大きく分けると、ねじに対して外力が作用し回転することと、ねじが回転しないでゆるむことです。回転する要因としては、3つの要因を想定できます。①ねじの軸に対して回転力が作用、②ねじの軸に対して直角の作用が働く、③ねじの軸方向に力が作用です。回転しない要因としては、①締め付けた初期にゆるみが存在している(例えば、締結面の粗さ、形状のうねり)、②締結する面が陥没(例えば、塑性変更、締結面の削れ)です。

図16 ねじが緩む要因
図16 ねじが緩む要因 回転して緩む
図16 ねじが緩む要因 回転せずに緩む

ねじの製造工法

ねじの製法は大きく分けると、旋盤等を使って丸棒を削る方法と金型を使用して圧造する方法です。金型を使う製法の一般的な工程は図17となります。

図17 ねじの製造工程
図17 ねじの製造工程

(1)圧造:ねじの頭を成形。図18はねじの頭を形成する一例です。一般的には第1パンチで予備成形し、第2パンチで最終形状に成形します。

図18 ねじ頭の成形工程
図18 ねじ頭の成形工程

(2)転造:ねじ山を成形。図19はねじを転造する方法の一例です。

図19 ねじの転造
図19 ねじの転造 回転式転造
図19 ねじの転造 往復式転造

(3)熱処理:ねじを硬く強くするために加熱冷却。熱処理の方法としては、①焼入れ、②焼戻し、③焼なまし、④焼きならしの四種類あり。「焼入れ」は材料の硬さを高める。「焼戻し」は材料が硬くなって脆さ(もろさ)を改善し粘り強さを与える。「焼入れ」と併せて適用される。「焼なまし」は材料を柔らかくし、加工性を高める。最適な温度に加熱後ゆっくり冷やす。「焼ならし」は材料の結晶粒を微細化、加工性を改善する。

(4)表面処理:耐食性や耐摩耗性を高める処理。電気メッキなどを適用。亜鉛メッキでは表面が錆びるので防止する処理としてクロメート処理※2が施されます。処理する溶液の種類によって、目的が異なります。

※2

クロム酸塩溶液中に浸しクロメート被膜を生成させる。

  • 有色クロメート:黄虹色。耐食性が高い。
  • 黒色クロメート:黒色。耐食性が有色クロメートよりも高い。
  • 緑色クロメート:深緑色。耐食性がクロメート処理で最も高い。
  • 光沢クロメート:一般的には「ユニクロ」と呼称。青色銀。光沢を目的。耐食性はやや劣る。

(5)検査梱包:仕上がりの検査と出荷形態。

ねじの材料

ねじに用いられる主な材料は基本的に安価で入手が容易な炭素鋼です。ねじに求める強度等の仕様に応じて使い分けられます。一般的に用いられる炭素鋼としては、一般構造用圧延鋼材(SS材)、機械構造用炭素鋼(S-C材)、冷間圧造用炭素鋼(SWRCH材)があります。より強度を高めるためにニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)などを添加した合金鋼もあります。耐食性に優れるねじには、ステンレス鋼(SUS材)が適用されます。

  • SS材:引張強度を示す数値が規定されている。例えば、材料表記SS400。最低引張強度400N/mm²
  • S-C材:一般的なボルト、ナットに適用
  • SWRCH材:一般的な小ねじ、タッピンねじに適用
  • 合金鋼:強度が必要なボルトなどに適用
  • SUS材:小ねじなどに適用

工具

1 ねじの締め付け工法

1)トルク法

トルクレンチなどを使用して、締め付けトルクを管理する方法です。締め付けトルクと軸力とが線形になる関係を用いる管理方法です。しかしながら、締め付ける面やねじ面などの摩擦抵抗ばらつきが生じるため、正確なトルク管理は難しいとされています。

図20 トルク法
図20 トルク法

2)回転角法

ボルトの頭部と締め付け対象との締め付け回転角度を管理する方法です。ボルトが降伏しない弾性域の締付け法だけでなく、ボルトが締付けによって降伏し、塑性領域までの範囲で締め付ける方法があります。ただし。塑性領域締め付け法で使用したボルトはいったん外すと再利用できません。自動車のエンジン組み立てなどのボルトに適用されています。

図21 回転角法
図21 回転角法

2 主要な工具

図22は自動車の整備に関連する工具の例です。

図22 自動車の整備に関連する工具類
図22 自動車の整備に関連する工具類

3 スパナの角度が15度の理由

一般的なスパナの角度は15°です。

図23 スパナの形状
図23 スパナの形状

六角ボルトを締結する場合、レンチを回し、ねじ頭を架け替えができない狭い場所では最低限30°回すスペースがあれば、ねじを回せるためです。図24に示した通り、レンチの裏表を使えば30°回せばボルトの回転が可能です。レンチの角度ないと60°以上の空間が必要となります。

図24 スパナの角度設定
図24 スパナの角度設定

ねじの検査ジグ

1)ねじゲージ

図25はねじゲージの例です。おねじ用、めねじ用があります。対象のねじ部にはめてスムーズに回るかどうかで合否を判定します。

図25 ねじゲージ
図25 ねじゲージ

2)ピッチゲージ

ピッチゲージは薄い鋼板で製作され、各種のねじの形状に合うギザギザが刻まれています。対象のねじ部にギザギザを合わせ、合うサイズの数字を読み取って、ピッチを測定します。

図26 ピッチゲージの例
図26 ピッチゲージの例

関連計測器の紹介

ねじに関連した計測器の一例を紹介します。

図27 ねじに関連した計測器の例
図27 ねじに関連した計測器の例

その他の製品や仕様については計測器情報ページから検索してください。

おわりに

ねじの基本原理である「らせん構造」は紀元前から用いられています。技術が進化した現在においても基本構造は変わっていませんが、ねじの材料や付加技術、製造工法は締結する対象物に合わせて、劇的な変化ではなくとも永続的に技術進化するであろうと推察されます。今後も自動車に限らず、あらゆる機構部品の要素として「産業のコメ」と言われ続けるでしょう。

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