市場動向詳細

電動化システムの主要技術と規制動向~進展するxEVの現状と今後

自動車業界は百年に一度の大変革期に直面していると感じている方は多いと思います。今後の自動車業界の方向性を示しているCASE※1の中で特に電動化については、日本国内のみならず世界各地で毎日のようにニュースで取り上げられ、自動車業界のみならず産業界全体の喫緊の大命題であると言っても過言ではありません。電動化が求められてきた背景は、経済成長に伴う石油エネルギーの急激な需要増大、大気汚染等への環境問題が顕在化していることです。

本稿では自動車業界における、電動化の世界市場での予測、関連する各国の規制の動向を概説します。またHEVやFCEVなどの電動車の種類とそれらの特長、電動化システムに採用されている主要技術(インバータやバッテリ)について図・表にまとめました。 最後に評価用測定器の代表例を紹介します。
《本稿の記述は、筆者の知見による解釈や、主観的な取り上げ方の面もあることをご容赦ください。》

※1

次の4語の頭文字からなる造語。Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Share&Services(カーシェアリング&サービス)、Electric(電動化)

市場予測

電動化の市場予測に関する分析結果は公的機関や調査会社等の各所で公表されていますが、電動化に関する規制の動向、補助金の適用等、多くの要因に色濃く影響を受けるので、どの分析結果を引用するかの判断は分かれるところです。しかしながら、パワートレイン※2の方向性は、既存の内燃機関(ガソリンエンジンやディーゼルエンジン)は減少し、いわゆる電動車(xEV)※3が伸長することは伸長率の大小はあるものの、衆目の一致するところです。

※2

車両の駆動装置全体の総称。

※3

次の4種類を指す。電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HEVもしくはHV)、プラグインハイブリッド車(PHEVもしくはPHV)、燃料電池車(FCEVもしくはFCV)。略称から「xEV」と表記される。xEVを「次世代車」と表現しているケースもある。詳細は後の「xEVの仕組み」の項で説明。

各国のxEVの販売実績(図1)を見ると、内燃機関を電動化へ強く誘導している中国のxEV比率が高いことがわかります。2018年に世界中で100万台以上のxEVが販売されましたが、中国の販売台数が半分を占めています。ノルウェーも電動化に傾倒する方針を打ち出しているので先進国の中でも高いです。日本の伸び率は他国に比べて低いことが判ります。

図1 xEVの国・地域別の販売実績(2013~2018年)
図1 xEVの国・地域別の販売実績(2013~2018年)

出典:IEA Global EV Outlook 2019

今後の市場予測ですが、国際エネルギー機構(IEA※4)が2030年までにxEVの比率を30%以上にすることを発表しました(2017.6 IEA@北京 クリーンエネルギー大臣会合)。この活動はEV30@30シナリオと言われています。対象は乗用車、小型商用バン、トラック、バス(EV、PHEV、FCV)です。特徴的なことは、IEA加盟各国単独の指標ではなく、加盟各国全体の目標値です。また、xEVの販売比率に関する施策だけでなく、インフラの整備も活動の対象となっているようです。

※4

(International Energy Agency)第1次石油危機後の1974年にOECD(Organisation for Economic Co-operation and Development 経済協力開発機構)枠内の自律的な機関として、エネルギー安全保障の確保を目的に設立。現在は日本を含む30か国が参加。(外務省のHPより)

IEAの予測によると、xEVの市場比率は、2020年で15%、2040年には3倍の51%になるとされています。電動車の比率だけが急拡大するのではなく、ハイブリッド系(HEV、PHEV)の比率も高まると予想されているので、内燃機関の需要が急速に低下する見通しにはなっていません(図2)。

図2 xEV販売台数の推定
図2 xEV販売台数の推定

出典:経済産業省 自動車新時代戦略会議(第1回)資料

日本の次世代自動車に関する普及目標は経済産業省の資料によると、EV30@30シナリオよりも高めとなっています。

図3 日本の次世代自動車普及目標
図3 日本の次世代自動車普及目標

出典:経済産業省 自動車新時代戦略会議(第1回)

主要地域の規制動向

各国の規制動向の詳細は他の情報源に譲りますが、規制の基本は燃費※5と排ガス(NOx,PM※6)です。年々、規制値は厳しくなります。規制値(図4)に対応するためには、従来の内燃機関の性能改善だけでは達成することが難しいです。

※5

日本で燃費というと1ℓあたりの走行距離(km/ℓ)だが、燃費規制値は1km走行時のCO2排出量(g/km)で規定されている。図4はNEDCモードでの各国の値。

※6

一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)などの窒素酸化物を総称して「NOx」(ノックス)と表現する。自動車などから排出されるばいじん、粉じんなどの粒子状物質(Particulate Matter)をPMと略記する。いずれも大気汚染物質として規制されている。

図4 主要国の規制値(燃費と排ガス)
図4 主要国の規制値(燃費と排ガス)

出典:経済産業省 自動車新時代戦略会議(第1回)

各国の規制の動向を述べます。

1 欧州

2020年からCO2の排出量を95g/km以下とする厳しい条件となっています。2030年にはさらに約40%の削減が課されます。この規制を達成するためには既存の低燃費技術の延長では難しいとされています。欧州各国ではこの規制に対応した新たな方針を発表していますが、各国の方針や適用時期について差異はあるものの、既存の内燃機関車の販売ができなくなることは共通しています。

欧州の規制関連の動きとして、燃費を評価する基準が変更されました。従来、標準的に適用されていたNEDC※7からWLTP※8へ変更されました。基準の説明は割愛しますが、WLTPでは従来の基準より燃費が下がることになるようです。このことからxEVへの展開を支援してきた補助金等の受給基準を満足できなくなる車両もありえます。よってEVやPHEVへのシフトがさらに進むと思われます。

※7

(New European Driving Cycles)理論的な走行状況で燃費を評価。

※8

(Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure)現実的な走行状況で燃費を評価。

2 中国

汽車工程学会※9は2020年10月に新エネルギー技術のロードマップを提言しました。汽車工程学会の発表は工業情報化部の指導のもとで行われているため、中国政府の方針が色濃く反映されていると思われます。その骨子は2035年までに中国で新エネルギー車の販売比率を50%以上にすることです。また、従来の内燃機関を全てハイブリッド車にすることです。

※9

日本の自動車技術会に相当すると言われる。Webの英語ロゴ:CHINA SAE。http://en.sae-china.org/a3967.html

中国の現時点での規制(新エネルギ車両法:NEV法)の考え方を簡単に説明します。生産や輸入台数に対して、規制で定められているクレジットを目標値とした生産もしくは輸入が必要です。クレジットの計算方法は複雑なので説明は省略しますが、マイナスクレジットになると、NEV法で指定されている車両(EV、PHEV、FCEV)の生産を増やしクレジットを稼ぐことが必要になります。NEV法には罰則規定があり、クレジットを未達のカーメーカは内燃機関車の製造や輸入が許可されません。クレジットをプラスにするためにNEV法対象車の生産をさらに増やすか、他社から購入することが必要になります。

中国の規制では特徴的なことがあります。NEV法とは別に、企業平均燃費規制(CAFC:Corporate Average Fuel Consumption)が適用されます。この規制は欧米で導入されているCAFÉ(Corporate Average Fuel Economy、企業別平均燃費基準方式)規制と同様な考え方です。CAFC規制のクレジットが増えないようにするため低燃費車の生産が必要になります。なお、2020年6月に低燃費車としてHEVが加わり、クレジットの計算へ反映できることになりました。EVだけでなくHEVを生産して、企業平均燃費を稼ぐ方向へ政策がシフトしたとも解釈できます。

3 米国

連邦規制と、州や地域によって異なる規制体系となっています。また、政権によって規制の内容が変化しますが、方向性は電動化へ進むと思われます。米国の中でも環境問題に対して強い規制を制定しているカリフォルニア州は、ガソリン車の新車販売を2035年までに禁止することを発表しました。つまり、新車(乗用車およびトラック)をゼロ・エミッション車両とすることが義務付けられます。さらに、中大型車を対象として2045年までにゼロ・エミッション化することも法制化される予定です。

4 日本

2020年3月に経済産業省と国土交通省とが、新たな燃費基準を公布しました。骨子は2016年実績に対して32.4%の燃費改善が必要です。燃費値は19.2km/ℓから25.4km/ℓとなります。対象は内燃機関車に加えてEVやPHEVです。従来のJC08モード※10から国際統一基準となるWLTPが適用されます。

※10

車両の型式認証時に審査される燃費の評価基準。今後はWLTPの具体的な燃費測定法のWLTC(Worldwide-harmonized Light vehicles Test Cycles 乗用車の国際統一試験法)で計測された燃費値を表記することが義務化される。

各所で発表された情報をもとに各国の電動化に関する規制や方針をまとめました。

表1 主要国(地域)の電動化方針
国(地域) 次世代車への対応
中国 2035年までにNEV法車の販売比率を50%以上。エンジン車を全てHEVに
ドイツ 2030年までにエンジン車販売禁止
英国 2030年までにエンジン車販売禁止、HEVは2035年までOK
フランス 2040年までにエンジン車販売禁止
インド 2030年までにEV比率30%
US(カリフォルニア州) 2035年までにエンジン車販売禁止(PHEV含む)
日本 2030までに新車の50%をEV/PHEV、2050年までにCO2の実質排出ゼロ化

5 今後の電動化に関する規制の方向性

これまでの規制は車両単体でのCO2削減や燃費改善の規制でしたが、今後は車両のライフサイクルで目標値の設定や規制化の方向になりつつあります。エネルギー確保の観点で車両のリユース・リサイクルまで一貫したライフサイクル構築が求められると思われます。 「WELL to WHEEL」※11と言われるエネルギーサイクル全体でCO2排出量の削減が必要となります。

※11

油田の井戸(Well)から自動車の車輪(Wheelホイール)までを表す。燃料が車両に供給される前の製造過程も含めて評価すること。

図5 エネルギー政策の方向性
図5 エネルギー政策の方向性

出典:経済産業省 自動車新時代戦略会議(第1回)資料

直近の日本の動向ですが、菅首相が2020年10月の所信表明演説で、温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにすることを表明しました。なお、日本の電源構成は火力発電(石炭、天然ガス、石油等)の比率が約75%(2019年度)となっています(図6)。一方、電源別のライフサイクルCO2排出量(運転時だけでなく設備の建設等で排出するCO2も含む)では、火力発電が群を抜いています(図7)。このことから火力発電のCO2削減対策は重要になると言えます。

図6 日本国内の電源構成(2019年 年間発電電力量)
図6 日本国内の電源構成(2019年 年間発電電力量)

出典:認定NPO法人 環境エネルギー政策研究所資料

図7 各種電源別のライフサイクルCO2排出量
図7 各種電源別のライフサイクルCO2排出量

出典:電気事業連合会資料

【ちょっと一言:内燃機関のこれからもやるべきこと】

内燃機関の効率化に関しては、まだまだ改良の余地は残されています。当面、xEVに搭載される内燃機関も含めて存続するので、継続的な技術開発が必要です。CO2削減、燃費向上のためにやるべきことはたくさんあります。例えばエンジンの効率改善では、車両全体での熱マネジメントシステム、燃料の多様化(バイオ燃料、天然ガス化)、駆動系ではトランスミッションの多段化などです。

xEVの仕組み

xEVの種類(名称や略称)、方式や構造による違いを図・表で示すことで、 xEVで採用されている各種の技術について解説します。

1 HEV、PHEV、EV、FCEVの違い

従来のガソリンエンジンやディーゼルエンジンにバッテリとモータ、インバータを付け加えると、ハイブリッド車(HEV)となります(図8)。ハイブリッド車のバッテリ容量を増やし、外部からバッテリに充電可能な機能を追加したものがプラグインハイブリッド車(PHEV)です(図9)。PHEVからエンジンを外し、バッテリの容量を増やせば電気自動車(EV)となり(図10)、EVのバッテリの代わりに水素燃料電池機能(FCスタック)と水素タンクを搭載したのが燃料電池車(FCEV)です(図11)。

図8 ハイブリッド車(HEV)
図8 ハイブリッド車(HEV)
図9 プラグインハイブリッド車(PHEV)
図9 プラグインハイブリッド車(PHEV)
図10 電気自動車(EV)
図10 電気自動車(EV)
図11 燃料電池車(FCEV)
図11 燃料電池車(FCEV)

2 ハイブリッド車の種類

ハイブリッド車には3方式が採用されています。各方式の構成を図12~14に示します。

表2 ハイブリッド車の種類(方式による構成の違い)
方式 シリーズハイブリッド パラレルハイブリッド シリーズ/パラレルハイブリッド
特徴 エンジンを発電のためだけに利用し、駆動はモータで行う。 エンジンが主体で、発進時や加速時に駆動用モータでアシストする。 エンジンと駆動モータを走行条件等に応じて使い分ける。そのための機構が必要となる。
構成 エンジン
駆動用モータ
インバータ
モータ
発電機
変速機
動力分割機構
車種例 日産/ノート ホンダ/インサイト トヨタ/プリウス
図12 シリーズハイブリッドの構成
図12 シリーズハイブリッドの構成
図13 パラレルハイブリッドの構成
図13 パラレルハイブリッドの構成
図14 シリーズ・パラレルハイブリッドの構成
図14 シリーズ・パラレルハイブリッドの構成

ハイブリッド車は走行状態に応じて、エンジンやモータの動作を制御します。シリーズパラレル方式での動作イメージを図15で説明します。エンジンの効率が低下する発進時や加速時にモータを動作させてエンジンを補助します。定常走行中はエンジンとモータを条件に応じて使い分けます。減速時は通常のブレーキ操作の役目になるようにモータを発電機として動作しバッテリを充電します。ブレーキを踏み増せば回生※12量が増えます。

※12

通常、モータは電源(電池など)から電力を供給されて回転するが、電力供給が止まってもモータは回転を続ける。この時は通常とは反対にモータの回転エネルギーが電力供給側に流れ込んでいる状態で、回生という。モータが発電機となりバッテリを充電していて、回生ブレーキとも呼ばれる。

図15 シリーズパラレル方式の走行動作
図15 シリーズパラレル方式の走行動作

3 モータの位置による分類

xEVはモータの位置関係により、5種類の名称(P0~P4)があります。この分類は主に欧州で使われています。

図16 xEVのモータ位置による分類
図16 xEVのモータ位置による分類

1)P0(マイクロハイブリッド)

エンジンの前に駆動部を置く方式。例としてはBSG(Belt-driven Starter Generator)があり、ベルトによってエンジンと直結しています。発進時にエンジンをアシストし、減速時に回生(発電)して電気を貯めます。車種例としては、スズキ/ワゴンR。

2)P1(マイルドハイブリッド)

エンジンの下流側に駆動部を置く方式。P0(マイクロハイブリッド)よりも更にモータのアシストを高めた方式です。減速時には回生も行います。車種例はスズキ/ソリオ、日産/セレナ(S-HYBIRD)。

3)P2

エンジンとクラッチを介して駆動部を置く方式。トランスミッションとの間にもクラッチを置くと、エンジンだけで走行することや、モータ単独で走行すること、エンジンとモータを同時に駆動する状態が可能になります。車種例はトヨタ/プリウス。

4)P3

エンジンとトランスミッションの間だけにクラッチを置いた方式。モータとトランスミッションが分離できないので、エンジンのみで走行ができない構造です。

5)P4

トランスミッションから独立した方式。タイヤのホイール内にモータを内蔵した方式です。各社から量産試作相当の製品が公開されていますが、量産には至っていません。

xEVの主要技術

xEVシステムの基本構成はモータ、インバータ(図17のPower Control Unit)、バッテリの3つです。

図17 xEVの基本構成
図17 xEVの基本構成

xEVの電動機構の部品点数は内燃機関に比べて大幅に少なくなります。ガソリンエンジンとモータ・インバータの部品点数を大まかに比較すると約100分の1になる試算もあります。車両全体の主要部品をエンジン車と電気自動車(EV)で比較しすると、電気自動車の構成部品が少ないことが判ります。また、消耗品が少ないことも特徴です。主なものではエンジンオイルがあります。ブレーキの消耗部品であるブレーキパッドやディスクも電気自動車では回生ブレーキがかかるので減りが少なくなり、長寿命化します。

表3 エンジン車と電気自動車の部品比較
部品名 エンジン車 電気自動車
エンジン ×
エンジンオイル(消耗品) ×
セルモータ ×
エアフィルタ(消耗品) ×
クラッチ ×
ラジエータ ×
ラジエータ液(消耗品) ×
変速機 ×
燃料タンク ×
排気管 ×
12Vバッテリ(消耗品)
駆動用バッテリ ×
駆動用インバータ ×
駆動用モータ ×
充電器 ×

それでは、個々の部品について技術的な特徴や要件について解説します。

1 モータ

モータは、xEV車の駆動力を発生させたり、発電する部品です。方式は永久磁石式同期モータが主流で、ロータに実装される磁石は埋め込み式です。磁石が破損してもロータとステータとの間に磁石が挟まりにくく、ロータが急停止し辛いので、安全性に有利なことも選択されている理由と思われます。一部の車種では永久磁石を使用しない誘導モータが使われています。

2 インバータ

基本構成は、駆動回路とコンデンサです。

図18 インバータの基本構成
図18 インバータの基本構成

駆動回路で採用されている半導体は、大電力の高速スイッチングが可能なIGBT※13が主流です。低圧系のxEV(60V以下)ではパワーMOSFET※14が使われています。高圧系の一部の車種では、次世代デバイスとして注目されているSiC※15が使われ始めました(teslaモデル3等)が、課題はシリコン系に比べてコストが高いことです。

※13

(Insulated Gate Bipolar Transistor)絶縁ゲートバイポーラトランジスタ。電車や自動車などの電力変換機に使われる半導体素子。

※14

(Metal-Oxide Semiconductor field-effect transistor)金属(metal)-半導体酸化物(oxide)-半導体(semiconductor)の三層構造(MOS)の電界効果トランジスタ(FET)。大電力のスイッチング用のものをパワーMOSFETという。

※15

(Silicon Carbide)炭化ケイ素。シリコンカーバイド。 従来のシリコン(Si)に比べて電力損失が小さいので、インバータの小型化が期待される。

インバータの主要部品のもう一方であるコンデンサについて説明します。コンデンサの役割は、モータを駆動するバッテリの電圧変動を抑制することと、モータを駆動する際に発生する電流変動を抑えることです。コンデンサがないと駆動回路のIGBTがオン/オフ動作をする際に発生するパルス電流により、過大な電圧が発生します。この時の電圧がIGBTの電圧許容限界を超えると、IGBTを破損させます。

3 バッテリ

xEVに搭載されているほとんどのバッテリはリチウムイオン電池が使われています。初代のトヨタ/プリウスではニッケル水素電池が使われていました。それでは、リチウムイオン電池の原理や特徴を説明します。

図19 バッテリ
図19 バッテリ
図20 バッテリの例
図20 バッテリの例

リチウムイオンが電解液を介して正極と負極を行き来することで充放電が行われます。負極にはカーボンが使われます。正極にはリチウムイオンを含有する材料が使われています。一言でリチウムイオン電池と呼んでも、製造メーカ各社の材料が異なっているので、電池の性能や特性も異なっています。リチウムイオン電池の特長は他の電池(鉛電池、ニッケル水素電池)に比べて、エネルギー密度が高いことです。エネルギー密度が高ければ、小型軽量のバッテリを製作できます。また、電池に充電された電気を使いきらないで充電しても充電できる容量が低下しません。ガラケーと言われていた頃の携帯電話では古くなるとバッテリの持ちが短くなってくる現象(メモリ効果)を経験しました。

一方、リチウムイオン電池の課題としては、電解液に有機溶剤を使用しているので高温になると発火する危険性があります。過充電等による発熱には注意が必要です。バッテリマネジメントシステムと言われている保護機構でバッテリの管理を行っています。今後の方向性ですが、電解液を使わない全個体電池が開発されています。出力密度の向上はもとより、安全性が高まると期待されています。余談ですが、リチウムイオン電池を世界で初めて商品化したのはソニーのグループ会社で、命名も同社です。

関連計測器の紹介

xEVの開発には高圧系、パワー系の計測器が欠かせません。関連する計測器の代表例を紹介します。

図21 xEVの開発に対応した計測器の例
図21 xEVの開発に対応した計測器の例

各製品の詳しい仕様などは 計測器情報ページ から検索してください。

おわりに

これまで述べてきた通り、自動車は電動化がさらに進んでいきます。一方、性能面やコスト面での技術課題が山積しているので、解決するためには、自動車業界のみならず、素材業界やエネルギー業界など産業界全体での取り組みが求められます。また、エネルギー問題や環境問題に対する各国の規制動向が変化することが想定されるので、今後もxEVの取組みは注視が必要です。


自動車関連の他の記事はこちらから