技術コラム

2017/10/11

記録計・データロガーの基礎と概要 (第1回)

<連載記事一覧>

第1回:「はじめに」「記録計の歴史」「記録計の最近の動向」「【コラム】 よい記録計とは」

第2回:「記録計の内部構造」「記録計を利用する上での留意点」「パソコンなど制御装置との組合せ」「【コラム】測定用記録計の販売企業一覧」

第3回:「さまざまな温度センサ」「温度センサの校正」「【コラム】横河電機の記録計事業への取り組み」


はじめに

温度など緩やかに変化する現象を長期間にわたって記録を行う装置が「記録計・データロガー」である。記録計の歴史は長く、初期の製品は精密機械である指示計器の技術の延長にある電磁オシログラフや直動式記録計であった。

エレクトロニクスの進化によって、電子回路を用いた記録計が出現して高精度な記録が可能になり、その後ディジタル化が進み現在の「記録計・データロガー」へと進化してきた。今後は大量に取り込んだ測定データをIT技術によって解析を行い、利用者にとって使いやすいデータを得る仕組みに発展すると期待されている。

今回は、「記録計・データロガー」に関する基礎的な知識を解説する。今回の執筆は「記録計・データロガー」を創業当初から開発してきた横河電機株式会社の協力を得た。

現象の変化を記録する波形測定器には極めて緩やかな変化からGHz帯域の超高速現象を観測するものまである。今回は下記の図1にある「記録計・データロガー」に絞り、3回にわたり解説を行う。

図1. さまざまな波形測定器

図1. さまざまな波形測定器

記録計の歴史

記録計は長年にわたって温度などの現象の変化を紙にペンで記録していく仕組みがとられてきた。現在でも記録を紙に書く要求は根強くあるため、ペンレコーダや打点式記録計はまだ多く使われている。

しかし、紙に記録を残すのは測定結果を見るだけであれば使い易いが、測定データの検索、高度な解析、制御に利用できず、記録データとして保存できない欠点がある。そのため紙だけではなく電子データも記録する装置が増えてきている。

ここでは紙に記録する記録計から開発の歴史を解説していく。


直動式記録計

図2. 温湿度記録計

図2. 温湿度記録計

出典:佐藤計量器製作所

直動式記録計は今では美術館や博物館でよく見る温湿度記録計(図2)くらいになってしまったが、過去には実験用や工業用の記録計として活躍していた。

実験用や工業用に作られた電気信号を記録する製品は指示計器(メータ)と同じ原理で、可動コイルにペン機構を組込んだものとなっていた。初期の紙送り機構はモータではなく、手巻きのぜんまい式テンプ時計を使ったものであった。その後モータによる紙送り機構の製品も加わった。

ぜんまいで動く直動式記録計は電源のない場所でも使える長所を持っているが、記録精度は高くない短所はある。

現在では電池で長時間駆動できる小型で安価なデータロガーが販売されているため、直動式記録計の需要は限られたものとなった。


図3. KRB形直動式記録計(1964年)

図3. KRB形直動式記録計(1964年)

出典:横河電機


X-Yレコーダ

1950年代に登場した二次元で表現すると判りやすい現象を記録するのに使われた記録計である。信号はX軸とY軸をそれぞれに入力する仕組みとなっている。過去にはB-H曲線(磁気ヒステリシス曲線)を描く直流磁化特性記録装置などに組込まれて使われていた。現在ではあまり使われなくなったが、一部のメーカからは販売が続けられている。

図4. X-Yレコーダ Type3023(1984年)

図4 X-Yレコーダ Type3023(1984年)

出典:横河電機

X-Yレコーダは2つのアナログ信号を直接入力して、二次元のグラフを容易に書ける長所を持つが、入力信号を平均化するなどの演算処理ができない短所がある。現在では測定結果をいったんパソコンに取り込んで、その結果をプリンタやプロッタに二次元のグラフを出力することが多くなっている。


自動平衡式記録計

自動平衡式記録計は負帰還回路によって正確なペンの位置決めができる仕組みを持った記録計である。1898年に英国で作られた最初の自動平衡式記録計は電子回路による負帰還回路ではなく、機械的な仕組みで実現していた。

1940年代になると真空管を使った現在の製品につながる製品が米国で開発された。日本でも1951年に横河電機は真空管を使ったER電子管自動平衡記録計を開発した。アナログ技術をベースにした自動平衡記録計は長年にわたって最もよく使われる記録計となり、進化の過程で大幅な小型化や長期信頼性の向上が進んでいった。長時間に渡って紙に安定した記録をする技術の獲得には多くの経験が必要であったため、参入できるメーカは限られていた。

図5. ラボラトリレコーダ LR4100(1987年)

図5. ラボラトリレコーダ LR4100(1987年)

出典:横河電機

図6. 工業用チャート記録計 ER100(1975年)

図6. 工業用チャート記録計 ER100(1975年)

出典:横河電機


ハイブリッド記録計

データロガーのパソコンとの親和性の良さと、自動平衡記録計の測定結果の見易さの特徴を併せ持った記録計がハイブリッドである。ハイブリッド記録計はマイクロプロセッサが普及した1980年に横河電機が始めて開発した。

ハイブリッド記録計にはワイヤドットプリンタが記録機構として搭載されているため、測定結果を波形として表示するだけではなく、測定値などを数字や文字を印字することも可能となった。印字位置はステッピンモータで制御されているため、負帰還回路による位置決め機構は採用されていない。

マイクロプロセッサを搭載したハイブリッド記録計は、アナログ式の記録計より高機能である長所を持っているため、今までにない機能を本体に取り込むとともに、通信機能をもつためパソコンとの親和性が増した。しかし限られた面積のパネルで多機能を実現する設定をするため、操作が煩雑になる短所はあった。

図7. ハイブリッドレコーダ DR230(1994年)

図7. ハイブリッドレコーダ DR230(1994年)

出典:横河電機


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