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ファンクションジェネレータの基礎と概要 (第1回)

<連載記事一覧>

第1回:「はじめに」「ファンクションジェネレータの歴史と種類」「DDS方式ファンクションジェネレータの構造」「ファンクションジェネレータ利用でよくある疑問点」「【コラム】よいファンクションジェネレータとは」

第2回:「ファンクションジェネレータの基本機能」「ファンクションジェネレータの拡張機能」「ファンクションジェネレータの周辺機器」「【コラム】国内でファンクションジェネレータを販売する主なメーカの製品一覧表」

第3回:「ファンクションジェネレータの用途」「ファンクションジェネレータの校正」「終りに」「【インタビュー】エヌエフ回路設計ブロックのファンクションジェネレータ事業への取り組み」

はじめに

メカトロ機器、電子回路、部品・材料の試験をする際には、さまざまな波形の信号が必要になる。ファンクションジェネレータは直流や超低周波の波形から数十MHzくらいまでの波形を発生できる製品が市場で多く使われている。

ファンクションジェネレータの歴史は長く、最初はアナログ回路技術を駆使してさまざまな波形を作っていたが、最近の製品はほとんどD/A変換器を使って複雑な波形を発生できるようになっている。

今回は「ファンクションジェネレータ」に関する基礎的な知識を解説するとともに、ファンクションジェネレータの用途についてもいくつか紹介する。

信号発生器・発振器にはさまざまな種類があり、分類するとおおよそ図1のようになる。解説するファンクションジェネレータは信号発生器・発振器の一部となる。

今回は、「ファンクションジェネレータ」に関する基礎的な知識を解説する。執筆には「ファンクションジェネレータ」を創業当初から長年開発してきたエヌエフ回路設計ブロックの協力を得た。

図1. さまざまな波形発生器

図1. さまざまな波形発生器

注:日本電気計測器工業会の分類では「音響映像用信号発生器」はオーディオ・ビジュアル測定器に分類されている。

発信器

変調をしない正弦波やパルス波形を一定の周波数で連続して発生する信号源である。一般に安価なため、生産ラインや学校教育で使われる。最近はファンクションジェネレータなどが低価格なったため、発信器として販売されている製品は少なくなっている。

掃引信号発生器

設定した範囲の周波数や振幅を連続して変化させることができる信号源である。部品や製品の周波数特性を測定する場合に使われる。最近は標準信号発生器やファンクションジェネレータに掃引機能が組込まれているため、掃引信号発生器として販売されている製品は少なくなっている。

雑音発生器

幅広い周波数成分を持つノイズ波形を発生する信号源である。周波数特性が平坦なホワイトノイズを発生するものは多いが、音響計測用にはパワーが周波数に反比例するピンクノイズを発生できるものがある。雑音発生器は雑音指数(Noise Figure)測定や音響特性測定などに用いられる。

標準信号発生器

主に通信機や放送機器を評価するために使われる変調が可能な搬送波を出力できる信号発生器である。AMやFMなどアナログ変調とI/Q信号を用いたデジタル変調ができる製品がある。

パルス信号発生器

パルス波形を発生できる信号源である。パルス波形の各種パラメータ(振幅、周波数、立ち上がり/立ち下り時間など)を可変できるだけではなく、予め設定したシリアルおよびパラレルのパターンを出力できる製品もある。通信機器や半導体の試験などに使われる。

ファンクションジェネレータ

正弦波やパルス波以外に三角波、ランプ波、ノイズ波、任意波形を発生できる波形発生器である。 ファンクションジェネレータは外部の信号によって波形の発生制御ができる特長を持っているため、評価システムに組込まれてセンサ信号模擬などに使われることがある。

ファンクションジェネレータはメカトロ機器から電子回路まで幅広い用途で使われている。

任意波形発生器

ファンクションジェネレータでも簡易的な任意波形を発生できるが、任意波形発生器は一般に大容量の波形メモリ、サンプル周波数を任意に設定できるクロック信号源、D/A変換器で構成されている。クロック信号源の任意の周波数を設定できるため、波形メモリに記録された波形データを途切れることなくすべて出力できる長所はあるが、構成が複雑なためファンクションジェネレータより高額となる。

音響映像用信号発生器

音響機器や映像機器専用の信号源である。音響用信号発生器は超低歪な低周波を発生することが可能である。また映像信号発生器はさまざまな映像規格に適合した基準となる静止画や動画を発生できる能力を持つ。

ファンクションジェネレータの歴史と種類

アナログ方式ファンクションジェネレータ

真空管を使ったアナログ回路で作られたファンクションジェネレータは1950年代はじめに作られるようになった。記録によって確認できる最も古いファンクションジェネレータは1951年に発行されたHEWLETT PACKARD JOURNALに掲載された「Model 202A Low Frequency Function Generator」である。1960年代にはアナログ方式のファンクションジェネレータが多く作られるようになり、日本国内でもエヌエフ回路設計ブロックが真空管式のファンクションジェネレータを1961年に発売している。

図2. 低周波ファンクションジェネレータ FG-102(1961年)

図2. 低周波ファンクションジェネレータ FG-102(1961年)

提供:エヌエフ回路設計ブロック

アナログ方式のファンクションジェネレータは三角波からパルス波や正弦波を作り出す仕組みとなっている。

アナログ方式ファンクションジェネレータの基本構成を図3に示す。A1 と Rf 、Cf とで積分器を A2 と R1、R2 とでヒステリシスコンパレータ(正帰還アンプ)を構成している。

動作開始時に,方形波出力が +VS になっていたとすると、A1 出力の三角波は -VT 方向へ一定速度で降下する。 A1 出力が -VT (= -VS × R1 / R2) になると A2 出力の方形波は -VS に反転し、A1 出力は -VT から +VT 方向へ上昇する。こうして連続的に三角波と方形波が得られる。A1 の入力インピーダンスが高くて、かつ直流ドリフトが小さく、Cf の絶縁抵抗が大きければ,かなり低い周波数まで発振させることができる。

図3. アナログ方式ファンクションジェネレータの基本構成

図3. アナログ方式ファンクションジェネレータの基本構成

発振周波数は Rf に VS が印加されると、I = VS / Rf という定電流が流れる。このとき A1 の出力が -VT から +VT まで変化する時間 t は、t = (2VT × Cf) / I = (2VT × Cf × Rt) / Vs となる。ここで R1 = R2 とすると、VT = VS となる。

したがって t = 2Cf × Rf となる。1kHzを発振させるには Cf に0.01μFを使用すると、t = 0.5ms (半周期) なので、Rf = t / 2Cf = 25kΩ となる。

ファンクションジェネレータの基本部分は日本庭園にある鹿威し(ししおどし)とよく似ている。鹿威しは水が竹で作った上部に溜まるようにできており、水の重みによって竹で作られた鹿威しが傾き、竹筒の中に入っていた水が流れて、元に戻る仕組みになっている。この動作を繰り返し行うため、連続的に竹筒が石をたたくことになる。積分回路にあるコンデンサが水の溜まる部分と考えれば鹿威しがアナログ式ファンクションジェネレータの基本部分とよく似ていることが理解できる。

図4. 鹿威し(ししおどし)の原理図

図4. 鹿威し(ししおどし)の原理図

正弦波は,折線近似回路に三角波を通して生成する。図5の回路において、三角波が基準電位(E1~E6)を超えるに従ってダイオードが順次導通する。導通すると R2 から R7 の抵抗が順次 R1 の負荷となり,三角波の振幅が大きいほど R1 の負荷抵抗が小さくなる。三角波の振幅が大きいほど折線近似回路の出力振幅が小さくなり,三角波が正弦波に近づくことになる。

図5. 三角波から正弦波を生成(折線近似回路)

図5. 三角波から正弦波を生成(折線近似回路)

アナログ式ファンクションジェネレータは安定した周波数の発振を行う水晶振動子を基準に波形発生していないため、高い周波数確度を得るには周波数カウンタと組み合わせて使わなければならない。水晶振動子を基準にした周波数シンセサイザを組込んだアナログ式ファンクションジェネレータは一時存在したが、高額なため現在は販売されなくなっている。

また、発生波形はアナログ回路によって作っていたため、複雑な波形を発生することも難しい。これらの欠点があるため、現在では安価に作れるようになったDDS方式ファンクションジェネレータに切り替わってきている。

DDS方式ファンクションジェネレータ

1970年代初めころにDirect Digital Synthesizer(DDS、デジタル直接合成発振器)の開発が行われて、その後、この技術を使ったファンクションジェネレータが登場した。国内でもエヌエフ回路設計ブロックは1970年代に特定用途向けにD/A変換器を使った信号発生器を開発して、1981年にDDS方式のファンクションジェネレータであるDF-191(図6)を発売している。

図6. デジタルファンクションシンセサイザ(1981年)

図6. デジタルファンクションシンセサイザ(1981年)

提供:エヌエフ回路設計ブロック

DDS方式の発振器の基本構造は図7に示すように、加算器とラッチでアキュムレータ(一般に位相アキュムレータと呼ばれる)を構成し、クロックに同期して周波数設定値Nを累積していく。こうすると、周波数設定値に比例した速度のノコギリ波状のデジタルデータが得られる。このデータは出力波形の位相に相当し、波形データが書き込まれたROM(Read Only Memory)のアドレスとして使用する。このROMの出力をD/A変換器でアナログ信号にすると、波形ROMのデータに対応した波形が得られる。D/A変換器の出力は階段波なので、LPFでクロック成分を除去すると、きれいなアナログ出力が得られる。

周波数を変化させるには周波数設定値のNを増減させることによって可能となる。

DDS方式の発振器は波形ROMにさまざまな波形を保存することができるため、ファンクションジェネレータにとって都合のよい方式である。

また、波形発生がクロックに同期しているため、複数CH出力を同じクロック信号で発生すると位相精度の高い波形を得ることができる。

しかし、波形は離散的なデータで作られているため、方形波を出力した場合はジッタが生じる欠点がある。最近のファンクションジェネレータでは方形波でジッタの発生を抑制する仕組みが搭載されているものがある。

図7. DDS方式の発振器の原理図

図7. DDS方式の発振器の原理図

任意波形が可能なDDS方式ファンクションジェネレータ

DDS方式の発振器に波形ROMの部分を書き換え可能なRAM(Random Access Memory)に置き換えると、利用者は自由な形の任意波形を書き込むことが可能となる。波形はファンクションジェネレータ本体でも定義できるが、ファンクションジェネレータの表示画面が小さいため、測定器メーカから提供されるパソコン上で動く波形作成ソフトを使って任意波形を作るのが一般的である。

現在、市販されている多くのDDS方式のファンクションジェネレータは任意波形の発生が可能となっている。

図8. 測定器メーカが提供する任意波形作成ソフト

図8. 測定器メーカが提供する任意波形作成ソフト

提供:エヌエフ回路設計ブロック

DDS方式で任意波形を発生する場合、原理的な制約により周波数を高くすると波形データを読み飛ばすことになり、定義した波形の再現性が低下する。従ってデータ長が長い通信データのような波形をDDS方式の任意波形発生器で発生させることは適さない。このような波形を発生する際は、DDS方式ではなく、クロック周波数が可変でき、大容量の波形メモリを搭載した任意波形発生器を用いるのがよい。

特定用途向けのファンクションジェネレータ

基本的な構造はDDS方式のファンクションジェネレータと同じであるが、特定用途に適した操作パネルになっていたり、特殊な機能が付加されたりしている。

図9は太陽光発電などに使うパワーコンディショナの系統連系試験で使われる三相信号発生器である。この信号源を使ってさまざまな電源の状態を作り出すことができる。

図9. 三相信号発生器TG1703(2011年)

図9. 三相信号発生器TG1703(2011年)

提供:エヌエフ回路設計ブロック


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