ファンクションジェネレータの基礎と概要 (第1回)
【コラム】よいファンクションジェネレータとは
ここでは利用する目的にあったファンクションジェネレータを選択する際に注意すべきことを述べる。
波形の歪やオーバーシュートが少ないこと
信号発生器の波形品を決める重要な仕様項目である。超低周波から幅広い帯域の波形を発生できるDDS方式ファンクションジェネレータはD/A変換器で波形を作っているため、D/A変換器のビット数に注目が集まるが、ビット数を見るだけでは波形品位を決められない。製品仕様に書かれている正弦波の歪率、高調波スプリアスや方形波やパルス波のオーバーシュート値などに着目する必要がある。
出力ノイズが少ないこと
アナログ式ファンクションジェネレータの内部にはデジタル回路がないため、ノイズの少ない信号を発生しやすいが、DDS方式ファンクションジェネレータは回路内部に高速で動作するデジタル回路を持つため、ノイズ対策が十分でない場合は出力信号にデジタル回路からのノイズやスイッチング電源からのノイズが重畳される。従って、正弦波の仕様にある非高調波スプリアスの仕様に着目する必要がある。
波形のジッタが少ないこと
DDS方式ファンクションジェネレータでは原理的に方形波やパルス波でクロック周波数による波形ジッタが生じる。最近のファンクションジェネレータにはジッタを少なくする仕組みを持った製品があるため、波形ジッタが問題になる用途ではジッタ低減の仕組みを持った製品を選ぶ必要がある。
トリガジッタが少ないこと
外部からトリガ信号を受けてから、トリガ発振が始まる時間にばらつきがあると再現性の良い試験ができない。トリガジッタは製品仕様で規定されていない場合もあるので、実際の製品でトリガジッタを評価する必要がある。
トリガジッタを低減する仕組みのあるファンクションジェネレータではオシロスコープで波形を見るとジッタが低減していることが判る。
波形の種類が豊富なこと
DDS方式ファンクションジェネレータは正弦波、方形波/パルス波、三角波、のこぎり波など古くから使われている波形以外にも、用途に応じた波形を簡単に発生できる仕組みがあると、波形作成に手間の掛かる任意波形機能を使わなくても簡単に波形発生が可能となる。
新しいファンクションジェネレータでは用途に応じた波形をパラメータ設定だけで作ることができる機能が本体に搭載されているものがある。
多様な波形制御ができること
ファンクションジェネレータは多彩な波形を発生させるだけではなく、外部からの制御によって複雑な動作をさせることが可能な信号源である。
最近のファンクションジェネレータは古くからあるGPIBに加えて、LANやUSBにも対応している。このほか外部変調入力、外部トリガ入力などがあるが、これらの端子が出力ごとに独立してすべて用意されている製品(図16)と、多出力製品でもトリガや変調の入力が1つしかない製品があるため計測システムを組む際には注意が必要である。
多出力同期発生ができること
複数の同期した波形を必要とする際には多出力のファンクションジェネレータを用いたり、複数台のファンクションジェネレータを同期運転して多相の信号を得る。DDS方式ファンクションジェネレータは位相精度のよい波形を発生できる構造になっているため、メカトロ機器の試験やバイポーラ電源(増幅器)と組み合わせて三相電源の模擬などに使われる。
複数台のファンクションジェネレータを同期運転する場合は、機能に制約がある場合があるので計測システムを構築する際には注意が必要である。
操作性がよいこと
最近の測定器に共通することであるが、本体に搭載される機能が多くなり、取扱説明書を見ながら測定器を操作することが難しくなる傾向がある。ファンクションジェネレータは多機能になる傾向が顕著であるため、操作性が特に重要になる。最近のファンクションジェネレータは大きなカラー液晶画面が搭載され、多くの設定情報を容易に確認できるようになっている。ファンクションジェネレータを選定する際には、目的にあった操作が容易に実現できるかを確認する必要がある。
執筆協力:株式会社エヌエフ回路設計ブロック ホームページはこちら
執筆:横河レンタ・リース株式会社 T&M事業部 魚住 智彦
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