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デジタルマルチメータの基礎と概要 Part2 (第3回)

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最近のベンチトップ型デジタルマルチメータ

デジタルマルチメータの基本性能はほぼ市場要求を満たすようになったため、新しい製品では異なる切り口で進化している。

解析機能の強化

デジタルマルチメータに搭載されている測定結果を保存するメモリの容量が大きくなったこと、本体に搭載されている表示器がグラフィック表示できるようになったことなどから、取り込んだ測定結果を演算処理して最大値、最小値、平均値、標準偏差などを表示するとともに、測定結果のばらつきがヒストグラムで表現するなどが本体だけで可能になった。これによりパソコンを使わなくても簡単な統計処理ができるようになった。

低電流測定の実現

最近は小電力で動作する電子機器が増えてきたため、低電流レンジへの要求が高まっている。例えば下記に示すように時計ICは機器の電源を切った後も電池駆動によって日付や時刻を更新していかなければならないので、1μA以下の少ない消費電流で動作する回路となっている。

図37. リアルタイムクロックICの消費電流(R2045、リコー電子デバイス)

図37. リアルタイムクロックICの消費電流(R2045、リコー電子デバイス)

IoT機器の普及により、今後とも少ない電流で動作する製品が増えることが予測されるため、デジタルマルチメータはその要求に対応できるよう微小電流測定が可能となってきている。最近のデジタルマルチメータは0.1μAレンジまであるが、より小さい電流レンジを必要とする測定ではピコアンメータを利用する。

特定用途向けの製品

汎用のデジタルマルチメータは高機能化しているが、一方では生産向けに特化した性能や機能を持つデジタルマルチメータがある。例えば製品のランクごとに分類(BIN分類)するのに適した製品では選別器に直接接続できるような専用のインタフェースを持っている。

また、高精度な電圧測定のみに特化して低価格を実現した製品や、生産ラインで要求されるコンタクトチェック機能を持った製品もある。

PCソフトの充実

デジタルマルチメータの機能は高度化しているが、小さな本体では解析や表示できる情報は限られている。高度な解析、フォーマット変換、大量のデータの保存などを行うには測定結果をPC(パソコン)に送ってデータ処理を行う。基本的な測定器の制御や定型的なデータ処理を行えるPCソフトは測定器メーカから提供されることが多い。

最近のハンドヘルド型デジタルマルチメータ

ハンドヘルド型マルチメータはベンチトップ型に比べて機種数は多いのが特長である。このため使用目的にあった製品を選ぶことが重要となる。

Bluetoothの活用

従来、現場作業で記録を取る場合は1人が測定を行い、もう1人が測定結果を記録していくことが多かった。この作業を1人で行うためには測定結果を自動的にスマートフォンやタブレットに記録していく仕組みが必要となる。現場で使う電子機器は電池で駆動するものが多く、電池の消耗が小さな仕組みが要求される。Bluetoothの通信距離は短いが消費電力が少ないので、現場で使うデジタルマルチメータの測定結果をスマートフォンやタブレットに通信するのに適している。

図38. Bluetoothで測定値を転送

図38. Bluetoothで測定値を転送

最近ではBluetoothなどを使ってデジタルマルチメータ本体と表示器を分離できるようになっているものがある。例えば配電盤の端子を測定する場合、デジタルマルチメータ本体は配電盤の中に置いて、表示パネルは配電盤の外に置くことも可能である。

図39. デジタルマルチメータ本体と表示パネルを分離した事例

図39. デジタルマルチメータ本体と表示パネルを分離した事例

耐環境性の強化

空調された通常の室内では18℃~28℃程度であるため、高精度測定を行う場合以外は温度環境に配慮する必要はない。しかし屋外での作業は温度範囲が広く、また雨やほこりへの対応も考慮する必要がある。屋外の厳しい環境に耐える温度範囲と防水性/防塵性への対応がされた製品がある。

特定用途向けの製品

ハンドヘルド型デジタルマルチメータは特定の用途で使われる製品がある。例えば化学プラントなどで使う製品は計装用電流信号(直流4~20mA)を0~100%表示でき、かつ防爆仕様となっている製品がある。

また、メガソーラー発電所(1MW以上の出力を持つ太陽光発電システム)の保守向けに高電圧プローブを使わなくても1500Vまで対応可能な製品がある。

LPFの組込み

インバータなど高調波やノイズを含む交流波形を測定する場合、安定した測定結果を得るためにノイズを抑制する必要がある。ローパスフィルタを搭載したハンドヘルド型デジタルマルチメータではフィルターを設定することによって安定な測定が可能になる。ただし、測定器メーカによって遮断周波数が異なるので注意が必要である。

図40. ノイズを抑制して測定するためのローパスフィルタ

図40. ノイズを抑制して測定するためのローパスフィルタ
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