技術コラム

2018/07/10

プログラマブル (出力可変型) 直流安定化電源の基礎と概要 (第2回)

<連載記事一覧>

第1回:「はじめに」「直流電源を取巻く市場動向」「試験用直流電源の種類」「よい直流電源とは」「【コラム】電源装置の研究開発」

第2回:「直流電源の構造」「直流電源の外部制御機能」「直流電源の状態モニタ」「その他の便利な機能」「負荷に接続する際の注意」「利用上の一般的な注意点」「【コラム】主な直流電源メーカ」

第3回:「直流電源の用途例」「直流電源の保守」「おわりに」「【インタビュー】菊水電子工業の直流電源事業への取り組み」(7月下旬頃掲載予定)

直流電源の構造

ドロッパ式直流電源とスイッチング式直流電源の動作原理

ドロッパ方式直流電源の基本構成は下記のように平滑回路のあとに安定化回路が接続されている。

図20. ドロッパ方式直流安定化電源の構成

図20. ドロッパ方式直流安定化電源の構成

ドロッパ方式直流電源の安定化回路は簡単な仕組みでできている。基本構成は下記の通りである。

図21. ドロッパ方式の安定化回路の基本構成

図21. ドロッパ方式の安定化回路の基本構成

ドロッパ方式の安定化回路の出力電圧と主な損失は下記の式で表現できる。トランジスタが可変抵抗として動作するため効率はよくない。

  • Vout=(R1+R2)/R2×基準電圧
  • 損失=(Vin-Vout)×Iout

スイッチング電源方式の安定化回路はドロッパ方式に比べて複雑である。

図22. スイッチング方式の回路構成

図22. スイッチング方式の回路構成

出典:TDK株式会社ホームページ 「スイッチング電源のしくみ」をもとに作成

スイッチング方式の直流電源は出力が一定の電圧になるようにスイッチング素子の動作を制御する。

直流電源にある制御端子

直流電源はさまざまな試験に利用できるようになっているために、多くの制御端子や電源の状態を示す信号出力がある。それぞれの端子が持つ機能を知れば効率的な試験環境を作ることができる。

図23. 試験用電源の制御端子

図23. 試験用電源の制御端子

製品によって搭載されている外部制御端子、状態出力端子、通信インターフェースは異なるので、試験の目的にあった電源を選ぶ必要がある。

定電圧源と定電流源

理想的には定電圧源とは負荷によらず設定した電圧値を出力できるものである。また定電流源とは負荷によらず設定した電流値を出力できるものである。直流電源では定電圧源として動作させる場合が多い。二次電池の充電やレーザダイオードやLEDの試験では定電流源として使われる。

実際の直流電源では発生電圧や発生電流に上限があるため、設定した電圧値および電流値と負荷の関係で定電圧源として動作する場合と定電流源として動作する場合に分かれる。

定電圧(CV)と定電流(CC)のどちらで動作するかは、電圧設定値(Vs)、電流設定値(Is)、抵抗負荷値(RL)、臨界抵抗値(RC=Vs/Is)に依存する。負荷抵抗が臨界抵抗より大きいときは定電圧(CV)動作となる。すなわち出力電圧は電圧設定値(Vs)と等しくなるが、出力電流は電流設定値(Is)より小さくなる。負荷抵抗を小さくして出力電流が電流設定値(Is)に達すると定電流(CC)動作に移行する。

直流電源は上記のような仕組みのため、電流設定値(Is)を0Aと設定した場合は、負荷に電流が流れないので出力をオンしても設定電圧にならないという現象が生じる。このようなときは電流設定値を大きくすると設定電圧になる。

直流電源の前面パネルには定電圧(CV)動作をしているか、定電流(CC)動作をしているかを示す表示がある。

図24. 定電圧動作と定電流動作

図24. 定電圧動作と定電流動作

その他の直流電源の特性

直流電源の特性を理解するには、そのほかの特性を示す用語を理解する必要がある

出力電圧、出力電流

多くの直流電源は出力電力別に製品がラインアップされている。そのため同じ出力電力であっても高い電圧が出力できる製品と大きな電流を出せる製品に分かれる。

出力した最大電圧と最大電流から製品を選ぶことになる。またワイドレンジ電源では最大電力の上限もあるため注意が必要である。

立ち上り時間、立ち下り時間

スルーレート制御がオフの状態で負荷状態(全負荷、無負荷)を規定して、入力電源を投入した時にゼロ出力から定格設定値まで変化する過程の「10%から90%」までの時間を立ち上り時間とする。また入力電源を遮断した時に定格設定値からゼロ出力まで変化する過程の「90%から10%」までの時間を立ち下り時間とする。

立ち上り時間と立ち下り時間は定電圧動作と定電流動作のそれぞれが仕様で規定されている。

保護機能

直流電源の破損を防ぐために異常な状態を検知して安全な状態とする制御機能がある。保護機能には過電圧(OVP)、過電流(OCP)、過熱(OHP)、AC入力低下保護(AC-FAIL)などがある。このようなアラーム状態を検出した時は内部状態出力端子から電気信号として出力される。製品によって保有する保護機能が異なるので注意が必要である。

直流電源の外部制御機能

直流電源には外部制御機能を持っているため、高度な使い方ができる。ここでは代表的な使い方を示す。

複数台の連結運転

直流電源は同じ製品を複数組み合わせて並列運転や直列運転をすることができる。並列運転をすることによって大電流の出力が可能になり、直列運転をすることによって高電圧の出力が可能となる。なお複数台の連結運転ができない製品もあるので注意が必要である。

並列運転はマスタ機を1台決めて、残りはスレーブ機とする。マスタ機とスレーブ機は同期できるように取扱説明書に従った配線を行う。また並列動作できる台数には上限がある。

直列運転は直流電源の出力端子を直列に接続する。但し接続できる台数には上限があるため、取扱説明書の記載を確認する必要がある。

図25. 並列運転と直列運転(PWR-01シリーズ 菊水電子工業)

図25. 並列運転と直列運転(PWR-01シリーズ 菊水電子工業)

外部接点による電源のオン/オフ制御

直流電源の前面パネルには出力のオン/オフスイッチが付いている。手動操作以外に通信や接点信号で同じ操作をすることができる。このためPLC(Programmable Logic Controller)を使った制御システムに直流電源を組込む場合などに外部接点信号が使われる。

図26. 外部接点による電源のオン/オフ制御

図26. 外部接点による電源のオン/オフ制御

なお、接点と本体を接続するケーブルはノイズ対策のためツイストペア線を用いることを勧める。

外部電圧による出力制御

0~5Vもしくは0~10Vの電圧信号によって出力電圧もしくは出力電流を制御することができる。PLCや温度調節計を使ったシステムを組むときに便利な機能である。

図27. 外部電圧による出力制御

図27. 外部電圧による出力制御

外部電圧の入力形式は一般的に非絶縁であるが、一部の製品で絶縁入力がオプションで選べるようになっている。

通信制御

直流電源には通信インターフェースがあり、内部の設定を通信経由で指定できる。実装可能な通信インターフェースの種類は機種によって異なるので、予め確認する必要がある。下記には菊水電子工業のスイッチング方式直流電源が本体に搭載している通信インターフェースを示す。なお、GPIB↔RS232変換器またはGPIB↔USB変換器を用いるとすべての製品でGPIB通信が可能となる。

表6. 菊水電子工業のスイッチング方式直流電源の
通信インターフェース
シリーズ名 LAN USB RS232 RS485 GPIB
PWR-01
PAV
PAT-T
PWX
PAG

(○:標準、△オプション)

通信インターフェースを持たない電源の場合は、パソコンと電源の間に通信制御可能なアナログ電圧発生器を接続して直流電源を制御することができる。

直流電源の状態モニタ

直流電源の内部状態を電気信号として出力する機能を持っている。例えば異常状態を検出したとき高速にシステムの動作を停止するために利用する。またPLCなどで制御する場合は通信機能を使わずに、アナログ信号や接点信号で直流電源の状態を読み取ることがある。

アナログ出力モニタ

直流電源出力の電圧および電流のゼロから出力定格値を0~5Vもしくは0~10Vでモニタ端子からアナログ信号として出力する。アナログ出力モニタの出力インピーダンスや最大出力電流は取扱説明書に書かれているため、接続する機器の入力仕様と整合が取れるか確認する必要がある。

図28. アナログ出力モニタ

図28. アナログ出力モニタ

直流電源の状態出力

直流電源の内部状態をオープンコレクタ信号で出力する機能がある。

図29. 状態出力

図29. 状態出力

アラーム出力端子からアラーム信号が出力された時の解除方法は製品によって異なるので、取扱説明書の記述を確認する必要がある。

リモートセンシング

直流電源を電圧源として使用する場合、負荷端で正確な電圧を得るためにはリモートセンシングを行う。

リモートセンシングを行わない場合は直流電源から負荷までの配線による電圧降下の影響を受ける。

図30. リモートセンシングを「しない場合」と「する場合」の比較

図30. リモートセンシングを「しない場合」と「する場合」の比較

一般に直流電源は工場集荷時にはリモートセンシングをしない状態になっているので、リモートセンシングを行う場合は取扱説明書に従ってセンス線の配線を行う。

また、リモートセンシングで補償できる最大電圧は製品ごとに仕様で定められているので、電圧降下が大きいと予測される場合は仕様を確認する必要がある。

また、直流電源と負荷が離れている場合は発振をする可能性があるので、負荷の両端に100~1000μFの電解コンデンサを接続する。

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