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学び情報詳細

プログラマブル (出力可変型) 直流安定化電源の基礎と概要 (第2回)

その他の便利な機能

最近の直流電源はさまざまな試験要求に応じられるよう多くの機能が搭載されている。これらの機能を使うことにより、外部に特別な回路や信号源を用意しなくても本体だけで試験ができるようになる。

内部抵抗可変機能

化学電池(放電時)、燃料電池、太陽電池など出力インピーダンスを持った電源を模擬する場合に利用する機能である。従来は直流電源の外部に抵抗器を接続していたが、内部抵抗可変機能の持つ電源では内部抵抗に模擬する機能を持っている。

図31. 一般的な直流電源と可変抵抗可変機能付き直流電源との違い

図31. 一般的な直流電源と可変抵抗可変機能付き直流電源との違い

シーケンス機能

試験に必要な直流電源の状態をすべてパソコンのプログラムから設定するのではなく、発生する設定をすべて直流電源内部に保存しておき、外部からの起動によってあらかじめ直流電源に書き込んだシーケンス(設定手順)に従って動作することができる。

直流電源の設定状態と出力手順は電源メーカから提供されるパソコンプログラムを利用すると簡単に構築できる。

シーケンス機能をリストモードというメーカもある。

図32. 菊水電子工業から提供されるシーケンス作成・制御ソフトウェアWavy

図32. 菊水電子工業から提供されるシーケンス作成・制御ソフトウェアWavy

シーケンス機能を使えば高度な直流電源の使い方ができるが、利用する際には直流電源の取扱説明書を熟読して機能を理解する必要がある。

ソフトスタート/ソフトストップ機能

白熱電球や大容量コンデンサなど突入電流の影響を受ける負荷に対しては緩やかな電源の立ち上がりが必要である。またプリント基板上にある電源電圧検出回路(パワーオンリセット回路)の試験をする場合も緩やかな電源の立ち上がりや立下りが必要である。

ソフトスタート時間を設定して直流電源をオンすると指定した時間で設定した電圧値もしくは電流値まで立ち上がる。ソフトストップも同様の設定を行えば指定した時間でオフの状態になる。

ソフトスタート/ストップ機能は可変スルーレート機能と言われることもある。

図33. ソフトスタート/ソフトストップ機能

図33. ソフトスタート/ソフトストップ機能

負荷に接続する際の注意

起電力を持った負荷への接続

電池など起電力を持ったものに直流電源を接続して使用する場合は電池から直流電源に電流が流れ込まないように安全のため逆流防止ダイオードを挿入する。

図34. 起電力を持った負荷への接続

図34. 起電力を持った負荷への接続

DRPは「逆方向電圧耐量:定格出力電圧の2倍以上、順方向電流容量:定格出力電流の3~10倍」を目安に選ぶ。またダイオードは発熱するので破損を防ぐため放熱器を取り付ける。

直流電源の出力部には大容量のアルミ電解コンデンサが入っているため、電源の出力をオフにした時に電荷を放電させるためのブリーダ制御回路が電源に搭載されている。通常は安全のためブリーダ制御回路はオンになっている。電池やコンデンサなどを逆流防止ダイオードを使わないで直接直流電源に接続する際は放電を少なくするためブリーダ制御回路をオフにする。ブリーダ制御機能のことを電流シンク機能という場合もある。

誘導負荷への接続

誘導負荷に直流電源を接続した場合はサージ電圧を発生することがあり、直流電源に損傷を与える可能性がある。このためサージの発生を防ぐためダイオードを誘導負荷の両端に接続する。

図35. 誘導負荷への直流電源の接続

図35. 誘導負荷への直流電源の接続

パルス電流負荷への接続

急峻なパルス状の電流が間欠的に流れる負荷に直流電源を接続する場合は大きなピーク電流によって電流リミットが検出されることがある。これを防ぎたい場合はパルス電流負荷の両端に大容量のコンデンサを接続すると解決する。

図36. パルス電流負荷への接続

図36. パルス電流負荷への接続

利用上の一般的な注意点

直流電源を安全に利用するためや、直流電源を再現性のよい試験環境として使うには注意が必要である。

供給電力

大きなエネルギーを消費する大型の直流電源では配電盤から入力電源を供給する。そのため配電盤の受電容量を予め確認しておく必要がある。また同じ配電系統に接続されている機器に影響をしないかを確認する必要がある。配電盤から直流電源まで接続するケーブルは直流電源の取扱説明書に指定されているものを使用する。

多くの直流電源をラックに組んで利用する場合はリーク電流によって漏電ブレーカが動作する可能性があるので、電源メーカにあらかじめ相談するのが望ましい。

小型の電源ではコンセントにプラグを接続して利用するが、電源コードやプラグの容量を予め確認する必要がある。

もし発熱する場合は配線にゆるみがないか、電源コードの選択に誤りがないか確認する。

接地は安全のために必ず取る必要がある。また樹脂製の端子カバーがあるものは必ず取り付ける。

冷却

直流電源は発熱するために冷却が必要になる。冷却が十分できない環境で利用すると過熱保護が動作することがある。また電解コンデンサや冷却ファンは温度が高いほど寿命が短くなるため、製品寿命を長くするためにも十分な冷却は必要である。

また、発熱する装置の近くで直流電源を利用する場合は吸気口に熱風があたらない向きに設置する。

出力配線の選択

直流電源の出力から負荷に配線するケーブルは小さな抵抗値を持っているため、大きな電流を流すと発熱する。発熱が大きいと火災の恐れや、端子などが損傷する危険がある。このため配線材の選定は慎重に行う必要がある。

下記には菊水電子工業が推奨する配線材の種類と電流の関係を示す。

表7. 負荷用電線の電流容量
(菊水電子工業 PWR-01の取扱説明書から抜粋)
公称断面積
[mm2]
AWG 許容電流[A]
(Ta=30℃)
菊水電子工業
推奨電流[A]
2 14 27 10
5.5 10 49 20
8 8 61 30
14 6 88 50
22 4 115 80
38 1 162 100
80 3/0 257 200

注1)この表は周囲温度30℃の空気中において、単独で横に張られた、最高許容温度60℃の耐熱ビニル線に流せる電流容量としている。
注2)許容電流は電気設備技術基準 第146条(省令第57条)「低圧配線に使用する電線」から転載

出力配線が設置される環境が30℃以上である場合または配線を束ねる場合は、推奨電流を上記の記載より小さくする必要がある。

ノイズ対策

直流電源には制御線や出力から負荷への配線がある。これらの配線に外部からのノイズが混入しないようツイストペア線を使って配線を行う。ただし出力配線はツイストペア線が利用できない場合がある。

シールド線の利用も有効であるが、シールド線をどこに接続するかは取扱説明書の指示に従って行う。

図37. 配線のノイズ対策

図37. 配線のノイズ対策

磁界対策

直流電源にはトランスやチョークコイルが使われているため、直流電源から磁界ノイズが発生している。このため磁界の影響を受けやすい測定器は干渉を防ぐために直流電源から離れた場所に置くことが望ましい。

地震対策

大型の直流電源は重量があるので、地震で転倒した場合は人的な被害が発生する危険がある。複数の直流電源や重量のある大型の直流電源をラックに実装する場合は地震や輸送時に転倒しないようにラックの配置に考慮が必要である。またラック総重量に合わせた床への固定方法を取る必要がある。

また、床の構造によっては重量物である大型の直流電源の設置が耐荷重不足で難しいことがある。大型の直流電源を設置する場合は床の耐荷重を調べて、不足した場合は補強することが望ましい。

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