技術情報・レポート

2017/11/16

研究室でも、フィールドでも。どんな場面でも高確度な電力解析を! 日置電機 パワーアナライザ PW3390

日置電機株式会社(以下、日置電機)から、コンパクトな筐体のパワーアナライザ PW3390が提供された。測定シーンを選ばすに高確度に電力解析が行なえるのが特長だ。日置電機のテクニカルマネージャーの中山氏に、パワーアナライザ PW3390の開発経緯や製品特長、測定アプリケーションなどを聞いた。

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小型で持ち運びが可能な高確度パワーアナライザ PW3390が登場

近年、ハイブリット・電気自動車のインバータ・モータや太陽光発電のパワーコンディショナなど、技術開発の領域が広がってきた。より一層の高確度な電力測定と解析に対する要望の高まりを受けて、日置電機では2009年から初代パワーアナライザである3390と呼ばれるモデルを提供してきた。

初代機種3390では周波数帯域を150 kHzまでカバーしているが、IGBTインバータ、SiCインバータなどのスイッチング周波数が高速化する傾向のなかで、この周波数帯域では正確な測定が困難な場合がある。そこで、高速スイッチングの技術トレンドに対応すべく、より周波数帯域が広く、最高確度で電力測定ができるパワーアナライザとしてPW6001が2015年に提供された。

今回紹介するPW3390は、フィールドに持ち運んで高確度で測定したい、というお客さまのご要望に応えるために、フラッグシップモデルとなるPW6001の系譜を継ぎながら初代機種3390の性能と機能を向上させたモデルだ。LCD付き電力計としては世界最小クラスのパワーアナライザであるとのこと(2017年時点)。

機種変遷

日置電機 パワーアナライザの変遷(2017年11月時点)

パワーアナライザ PW3390の概要

PW3390では、4チャネルの電力入力を備え、リーディング誤差±0.04%、フルスケール誤差±0.05%、クラストップレベルの電力基本確度を実現している。フィールドでの測定を想定されて設計されており、大きさは、340(W)×170(H)×156(D)mmとボストンバックにも入るくらいで、本体重量は約4.6 kgと持ち運びが十分に可能な筐体だ。また、LAN、USB、CFカード、RS-232Cなどの主要な外部インタフェースを搭載している。別売りのシリアル-Bluetooth変換アダプタを使用することで無線でデータロガー(日置電機 LR8410などのBluetooth対応のデータロガー)に測定データを送信することができる。

PW3390 前面
PW3390 側面

PW3390の前面操作パネル部(左)と側面外部インタフェース部(右)

従来機種である3390と比較して周波数帯域を200 kHzまで拡大をさせた。100 kHzまでは電力誤差がフラットな周波数特性となっており、IGBTインバータなどの電力変換効率測定にも対応ができる。

有効電力周波数特性

PW3390と先代機種3390の周波数特性の比較

機能面では、電力解析エンジンを搭載している。測定波形をA/D変換を行なったあと、周期検出、広帯域電力解析、高調波解析、波形解析、ノイズ解析の5系統すべてを独立でデジタル処理する。この電力解析エンジンにより、複数の解析を同時に実行することができる。

電力解析エンジンの概要

電力解析エンジンの概要

持ち運びが可能なため、太陽光発電のパワーコンディショナの電力変換効率を現地で測定したり、実車環境において電力解析をしたりというように、現場で高確度に電力測定を行なうことができるのが強みだ。

電流センサの位相補正機能

電流センサは周波数に応じた位相特性があり、一般的に高い周波数になるにつれて位相が遅れる特性を持つ。また、センサの機種によっても個々に位相特性が異なる。このため、正確な電力測定には位相のズレを把握し、補正することが重要となる。矩形波のように、基本周波数以外に高調波の周波数成分が多く含まれるような信号の場合、電流センサの位相特性がバラついていると位相補正を正確に行うことができない。正確な測定を行なうためには、パワーアナライザ本体だけでなく電流センサの位相特性の良さがセットで求められる。

日置電機の電流センサは、周波数が高くなるにつれて、きれいに位相が遅れる特性を持っている。これを、位相の角度ではなく遅延時間として捉えると、どの周波数においても遅延時間がほぼ一定と言い替えられる。このため、電流センサの代表特性(周波数と位相誤差)を1点入力するだけで全周波数帯において位相補正を行うことができる。これが、PW3390が高確度な電力測定を可能としている電流センサの位相補正機能の概要だ。

位相特性補正例

電流センサの位相補正の効果。補正後は、位相遅れが低減されている。

これは、日置電機独自のバーチャルオーバーサンプリング技術を用いて実現したとのこと。500 kS/sでサンプリングした電流波形に対して、実際のサンプリング周波数より400倍高い200 MS/s相当のデスキュー処理をリアルタイムに演算して位相補正を行なうものだ。この技術は、フラッグシップモデルのPW6001から継承されたものだ。

電流センサの位相の補正値は、電流センサの形名ごとに固有の値付け(仕様)がされている。お客さまが補正値を1点入力するだけで簡単に全周波数で位相補正を行うことができる。この位相補正機能に対応した電流センサは、日置電機の主にCT6800シリーズを中心とした高確度センサ 貫通タイプ/クランプタイプ/直接結線タイプなどが対応している。

高確度電流センサ

高確度電流センサ CT6844

自動車の新燃費規格 WLTPモードの燃費性能評価試験に選定

注目すべきソリューションとしては、自動車の新燃費規格 WLTPモードでPW3390が選定されていることだ。自動車の燃費試験法では既存のJC08モードがあるが、これに替わる新たな燃費基準達成判定であるWLTP(Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure;乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法)の性能評価試験にPW3390が選定されている(先代機種の3390でも使用されている)。

車両の燃費性能評価試験
WLTPモード測定

車両の燃費性能評価試験例(左)と新燃費基準WLTCモードの性能評価試験(右)


直接結線で高確度に測定しようとしても、完成車両の場合は電流センサでしか測定をすることができない。直接結線方式の方が精度が高いと思われがちだが、電流値が大きくなって周波数が上がってくると直接結線方式が必ずしも精度が高いわけではない。むしろ、このような場合は電流センサ方式の精度が高くなる。電力計の内部には電流を測定するためにシャント抵抗があるが、大電流になるほどシャント抵抗での発熱による損失と配線経路での損失が生じる。これらの損失に加えて、周波数が高くなってくると容量結合による漏れ電流の損失も現れてくる。自動車のモータ・インバータのようなスイッチング周波数が高くなってきたアプリケーションでは、直接結線方式でなく電流センサ方式の測定の方が、原理的に正確に測れる。

電流センサ専用設計

測定方法の違いによる確度への影響

WLTPモードの性能評価試験でPW3390が選定されている理由は、パワーアナライザだけでなく電流センサの特性も含めたトータルの性能の良さを評価された結果とのこと。

このほか、アプリケーションとしてはインバータの電力変換効率、EV/HEVインバータ・モータの解析・評価、太陽光発電用のパワーコンディショナの効率測定などのアプリケーションに対応できるため活躍シーンがとても幅広い。

インバータ解析

EV/HEVインバータ・モータの解析・評価

顧客からの評価

日置電機のテクニカルマネージャーの中山氏によれば、環境問題などを背景にエネルギーの効率化が求められるなかで、さまざまな業種のお客様から電力解析への要求が増えてきているとのこと。研究室レベルで使われる高性能なパワーアナライザではなく、高確度でありながら持ち運びができるパワーアナライザへの要望は高まっているそうだ。これまでフィールドにおいて高確度に測定したくても、なかなか困難であったお客さまにはぜひ使ってみてもらいたい、と話してくれた。

日置中山様

日置電機株式会社 テクニカルマネージャー 中山氏。PW3390を多くのユーザーに使って頂きたいと話してくれた。

仕様

パワーアナライザ PW3390の主な仕様
電力測定入力部 主な仕様
測定ライン 単相2線、単相3線、三相3線、三相4線40 kH
入力チャネル数
()内は端子形状
電圧:4チャネル(プラグイン端子;安全端子)
電流:4チャネル(専用コネクタ;ME15W)
入力方式 電圧:絶縁入力、抵抗分圧方式
電流:電流センサ(電圧出力)による絶縁入力
電圧レンジ 15 V/30 V/60 V/150 V/300 V/600 V/1500 V
電流レンジ 電流センサによる
電力レンジ 1.5000 W ~ 90.00MW
(電圧レンジ/電流レンジ/測定ラインの組み合わせで自動決定)
サンプリング速度 500 kHz,16 bit
周波数帯域 DC、0.5 Hz ~ 200 kHz
※その他詳細な仕様はメーカカタログをご参照ください

パワーアナライザ PW3390のカタログはこちら

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