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光スペクトラムアナライザの基礎と概要 (第3回)

【インタビュー】横河計測の光スペクトラムアナライザの取組み

横河計測の光ファイバ通信用測定器事業は安藤電気での開発が原点になっている。2001年に安藤電気が横河電機の傘下に入り、現在は横河グループで測定器事業を担当する横河計測として製品の開発と販売を行っている。今回は光スペクトラムアナライザを長年に渡って担当されてきた横河計測通信ビジネス本部 技術部2グループ長の小島学様と事業開発部マーケティンググループの大塚俊介様にお話を伺った。

図52. 新製品を前にインタビューを受けて頂いた横河計測の小島学様(左)と大塚俊介様(右)

 図52. 新製品を前にインタビューを受けて頂いた横河計測の小島学様(左)と大塚俊介様(右)

Q1:光スペクトラムアナライザの開発ヒストリーについて紹介してください

安藤電気は日本電信電話公社(現在の日本電信電話株式会社(NTT))が光ファイバ伝送方式の商用を開始した1981年に最初に開発した光スペクトラムアナライザを発売した。

図53. 1981年に安藤電気が発売した光スペクトラムアナライザAQ-1404

 図53. 1981年に安藤電気が発売した光スペクトラムアナライザAQ-1404

当時はレーザダイオードや光ファイバなど光部品の測定が主な用途であった。光ファイバ通信はインターネットの普及に伴って急速に需要が増して、1990年代後半に登場した複数の波長を1本の光ファイバで伝送するWDM通信が実用化されるのに伴って光スペクトルの測定要求が増して光スペクトラムアナライザの需要が世界中で急速に高まった。現在ではWDM技術に加えてデジタルコヒーレント光通信による大容量通信が行われるようになり、そこで使われる光変調信号の評価でも高分解能な光スペクトラムアナライザが使われている。

また、データセンター内での光ファイバを使った配線が普及したことも光スペクトラムアナライザの需要を拡大させた要因となっている。

横河計測では光ファイバ通信での需要に加えて、非通信分野でのさまざまな製品で使われる光源や光部品の評価に使える光スペクトラムアナライザを開発して市場に提供している。

Q2:横河計測の光スペクトラムアナライザの強み

横河計測の光スペクトラムアナライザの強みは4つある。1つ目は光ファイバ通信の初期の段階からさまざまな光測定器を市場に提供していたため、国内外の多くの研究者や技術者からの要望を直接聞いて製品に反映してきたことである。また光ファイバ通信分野で使われる測定規格を作る活動にも参加してきたため、測定ノウハウの蓄積もされている。また光スペクトラムアナライザ以外の光測定器のラインアップが充実しているもの強みとなっている。

2つ目は市場の要求にあった光スペクトラムアナライザを作るノウハウを社内に蓄積していることである。光スペクトラムアナライザは光学部品を使った精密機械、アナログ電子回路、デジタル電子回路、ファームウェアによって構成されている。利用目的にあった性能を出すためにバランスよくそれぞれの構成要素に最適な役割分担をさせるには長年に渡って蓄積した知識が必要となる。また精密機械が内蔵されている光スペクトラムアナライザを長期に渡って安心して使えるように、さまざまな工夫がされていることも強みとなっている。下図は5pmの高分解能を実現したAQ6380と広く使われているAQ6370Dを同じ外部共振器レーザ光源を測定した場合の比較である。いずれの光スペクトラムアナライザも原理は同じであるが、設計の工夫や使用する部品の選択で目的にあった製品としている。

図54. 高分解能測定を可能にしたAQ6380

 図54. 高分解能測定を可能にしたAQ6380

光スペクトラムアナライザや分光装置を作る企業は国内外に多くある。横河計測の3つ目の強みは日本国内で設計、生産、修理/校正が行える環境を持つため、日本のお客様には迅速で的確な対応ができることである。海外のお客様には横河グループの海外営業拠点を介して利用支援ができるようになっている。

4つ目の強みは国内外で高いシェアを持つことである。横河計測の光スペクトラムアナライザで測定した結果は市場で高い信頼を持ってみられるようになった。

Q3:横河計測の光スペクトラムアナライザの新たな取り組み

インターネットによる情報通信量の伸びは続いており、大容量高速通信の要求は継続している。大容量高速通信を実現するためのデジタルコヒーレント光通信での光スペクトラム観測には従来の光スペクトラムアナライザ以上の高い分解能やダイナミックレンジが要求されている。この要求に応えるために横河計測は2021年にAQ6380を発売した。この製品はタッチパネルを使った操作ができるようになり操作性も高まった。

図55. 新しい要求に応える高分解能光スペクトラムアナライザ(AQ6380、横河計測)

 図55. 新しい要求に応える高分解能光スペクトラムアナライザ(AQ6380、横河計測)

横河計測の光スペクトラムアナライザを非通信分野でも使えるように測定できる波長の範囲を広げている。現在では可視光から中赤外線までの領域の製品を非通信分野に展開している。特にレーザガス分析計で使われるチューナブルレーザダイオードの評価には光スペクトラムアナライザは必須であるため、この分野での利用拡大を狙っている。

光応用分野は紫外線から赤外線まで幅広く存在する。これらの分野で使われる光源や光部品などの評価に光スペクトラムアナライザが使われる。非通信の分野ではガスの成分分析ほかに医療/バイオテクノロジー、照明、ディスプレイなどに成長分野があるため、光スペクトラムアナライザの活躍の場を積極的に広げていく。

図56. 現在までの横河計測の光スペクトラムアナライザの変遷

 図56. 現在までの横河計測の光スペクトラムアナライザの変遷

今後とも実績のある光ファイバ通信分野と新たにチャレンジする非通信分野でお客様に使っていただける光スペクトラムアナライザを開発していく。


執筆協力:横河計測株式会社 ホームページは こちら

執筆:小島 学 横河計測株式会社 通信ビジネス本部 技術部 2グループ
魚住 智彦 横河レンタ・リース株式会社 事業統括本部

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