初めて使うデジタルマルチメータ・・・第11回 「デジタルマルチメータの周辺アクセサリ」
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- 第1回:デジタルマルチメータが届いたら最初にすること
- 「はじめに」「6.5桁ベンチトップ型のデジタルマルチメータのパネル」「パネルに書かれた警告表示」「テストリード」「電源の投入と日付時刻の設定」
- 第2回:デジタルマルチメータの基礎知識
- 「直流電圧を正確に測る歴史」「現在のデジタルマルチメータの構造と機能」「デジタルマルチメータの選定」「【ミニ解説】測定カテゴリーとは」
- 第3回:直流電圧の測定と仕様の見方
- 「直流電圧を測定するための結線」「デジタルマルチメータの直流電圧測定の仕様表現」「直流電圧を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「直流測定で発生する誤差要因」「1000Vを越える直流高電圧の測定」「微小な直流電圧の測定」「【ミニ解説】デジタルマルチメータで採用されている安全端子」
- 第4回:交流電圧の測定と仕様の見方
- 「交流電圧を測定するための結線」「平均値検波と実効値検波の違い」「交流電圧測定での周波数帯域」「デジタルマルチメータの交流電圧測定の仕様表現」「交流電圧を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「歪んだ波形を測る際の注意点」「750Vrmsを越える交流高電圧の測定」
- 第5回:抵抗の測定と仕様の見方
- 「抵抗を測定するための結線」「デジタルマルチメータの抵抗測定の仕様表現」「抵抗を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの2端子測定での抵抗測定の操作手順」「4端子式測定を行う場合の注意事項」「高抵抗を測定する際の注意事項」「【ミニ解説】直流による抵抗測定と交流による抵抗測定」
- 第6回:直流/交流の電流測定と仕様の見方
- 「直流電流を測定するための結線」「デジタルマルチメータの直流電流測定の仕様表現」「直流電流を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの3Aレンジ以下の直流電流測定の操作手順」「電流入力端子に実装されている保護用ヒューズの断線を防ぐ」「直流電流測定時の注意事項」「10Aを越える直流電流の測定」「交流電流を測定するための結線」「デジタルマルチメータの交流電流測定の仕様表現」「交流電流を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの3Aレンジ以下の交流電流測定の操作手順」「10Aを越える交流電流の測定」
- 第7回:周波数測定と仕様の見方
- 「周波数を測定するための結線」「34461Aで採用されているレシプロカル・カウント方式」「34461Aで設定可能なゲート時間」「34461Aの周波数測定の仕様表現」「周波数/周期を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの周波数/周期測定の操作手順」「【ミニ解説】ユニバーサル・カウンタとの違い」
- 第8回:温度測定と仕様の見方
- 「温度を測定するための結線」「【ミニ解説】さまざまな温度センサ」「34461Aの温度測定の仕様表現」「温度を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの温度測定の操作手順」「【ミニ解説】温度測定で使われる多点温度計」
- 第9回:導通/ダイオード試験、容量測定
- 「導通/ダイオード試験をするための結線」「34461Aでの導通試験の操作手順」「34461Aでのダイオード試験の操作手順」「コンデンサの容量を測定するための結線」「34461Aの容量測定の仕様表現」「容量を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの容量測定での操作手順」「【ミニ解説】正確にコンデンサの容量を測定するときはLCRメータを使う」
- 第10回:デジタルマルチメータをシステムで使う
- 「デジタルマルチメータをシステムで使う」「外部トリガ入力と測定完了出力端子」「外部トリガ機能の設定」「34461Aに搭載されている通信インタフェース」「ラックを選定する際の注意点」「測定システムのノイズ対策」
- 第11回:デジタルマルチメータの周辺アクセサリ
- 「測定器メーカが用意しているアクセサリ」「DC結合電流プローブ」「30A電流シャント抵抗」「ターミナル・コネクタ」「34401Aから34461Aへの置き換え」
- 第12回:キーサイトの新しい教育向け汎用測定器
- 「【インタビュー】キーサイト・テクノロジーが考える教育向け汎用測定器」
測定器メーカが用意しているアクセサリ
デジタルマルチメータはさまざまな測定対象の電圧や電流などを測定するので、対象物に合わせたアクセサリが測定器メーカから提供されている。これらを有効に使うと効率的な測定が可能となる。下記はキーサイト・テクノロジーが測定のために提供しているベンチトップ型デジタルマルチメータ向けのアクセサリである。

図93. キーサイト・テクノロジーのベンチトップ型デジタルマルチメータ向けアクセサリ群
DC結合電流プローブ
キーサイト・テクノロジーが提供するアクセサリ中でDC結合電流プローブは電池駆動の直流から8kHzまでの交流電流を測定できる便利なセンサである。

図94. DC結合電流プローブ 34134A(キーサイト・テクノロジー)
交流や直流の電流を測定する場合に測定対象の電線を切断しないで測定できる便利な電流センサである。ただしこの電流センサの仕様を見ると判るようにデジタルマルチメータで得られる確度は期待できないので、測定要求が電流センサの仕様の範囲であることを事前に確認が必要である。
小電流から大電流までの直流から交流までに対応したさまざまな種類の電流センサは複数のメーカから市販されているので測定システムを構築する際に利用できる。
30A電流シャント抵抗
34461Aは10Aまでの直流と交流の電流を測定できる。それ以上の電流測定に対応するために30Aまで測定できるシャント抵抗を用意している。

図95. 30Aシャント抵抗 34330A(キーサイト・テクノロジー)
シャント抵抗を利用するとデジタルマルチメータが持つ周波数範囲が狭くなり確度も低下するので、利用する場合は測定要求がシャント抵抗の仕様の範囲であることを事前に確認が必要である。
大電流を取り扱えるシャント抵抗は分流器という名称でもさまざまなメーカから販売されているので用途に応じて選ぶことができる。
ターミナル・コネクタ
測定システムを構築する際には測定対象からデジタルマルチメータに接続するために配線材を直接接続したい要求がある。
34461Aでは下図のようなコネクタが用意されており、配線材をデジタルマルチメータに接続する際に利用できる。

図96. デジタルマルチメータ用ターミナル・コネクタ 34171B(キーサイト・テクノロジー)
安全端子と配線材を接続する安全端子アダプタやバナナ端子アダプタなどの名称で一般に市販されているのでそれらを使うことも可能である。
ターミナル・コネクタが抜け落ちないようにラック実装する際は配線をラックの支柱などに固定するのがよい。
34401Aから34461Aへの置き換え
1992年に発売された6.5桁ベンチトップ型デジタルマルチメータ34401Aは2013年に発売された34461Aに引き継がれるまで長年に渡って販売されてきたため現在でも多くの利用者がいる。
ここでは新旧2機種のデジタルマルチメータの主な違いを示す。新たに34461Aを導入する際は使用の違いを理解する必要がある。またキーサイト・テクノロジーでは新旧2機種の違いを説明する「互換性と相違点:34461Aと34401A6 1/2桁デジタル・マルチメータ」というアプリケーション・ノートを用意している。
34401A(1992年発売) | 34461A(2013年発売) | ||
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主な仕様 | 分解能 | 6.5桁 | 6.5桁 |
基本DCV確度 | 35ppm | 35ppm | |
最高測定速度 | 1,000/s | 1,000/s | |
メモリ | 512個の読み値 | 10,000個の読み値 | |
測定機能 | DC電圧レンジ | 100mV ~ 1,000V | 100mV ~ 1,000V |
AC電圧レンジ | 100mV ~ 750V | 100mV ~ 750V | |
DC電流レンジ | 10mA ~ 3A | 100μA ~ 10A | |
AC電流レンジ | 1A ~ 3A | 100μA ~ 10A | |
2線および4線式抵抗測定レンジ | 100Ω~ 100MΩ | 100Ω~ 100MΩ | |
導通、ダイオード | 可、1V | 可、5V | |
周波数、周期 | 3Hz ~ 300kHz | 3Hz ~ 300kHz | |
温度 | 機能なし | RTD/PT100、サーミスタ | |
キャパシタンスレンジ | 機能なし | 1.0nF ~ 100.0μF | |
ディスプレイ | 1行数字表示、VFD | グラフィック表示、カラーLCD | |
背面入力 | 可能 | 可能 | |
通信インタフェース | USB | 不可 | 標準装備 |
LAN | 不可 | 標準装備 | |
GPIB | 標準装備 | オプション | |
RS-232C | 標準装備 | 不可 | |
外形寸法 | ハンドル、プロテクタ含む | 254.4mm(W)×103.6mm(H)×374.0mm(D) | 261.2mm(W)×103.8mm(H)×303.2mm(D) |
ハンドル、プロテクタ除く | 212.6mm(W)×88.5mm(H)×348.3mm(D) | 212.8mm(W)×88.3mm(H)×272.3mm(D) |
開発や生産の現場などでは旧製品の34401Aと現在の製品の34461Aが混在して使われることがある。最近のパーソナルコンピュータにはUSBやLANは標準装備されているため、自動計測を行う場合はUSBが使われることが多い。旧製品の34401AをUSB環境で使う際には下記のようなUSB/GPIBインタフェースを用いるとGBIBインタフェースしかない測定器でもUSB環境下で利用できる。

図97. USB/GPIBインタフェース 82357B(キーサイト・テクノロジー)
執筆:横河レンタ・リース株式会社 事業統括本部 魚住 智彦