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初めて使うデジタルマルチメータ・・・第7回 「周波数測定と仕様の見方」

連載記事一覧
第1回:デジタルマルチメータが届いたら最初にすること
「はじめに」「6.5桁ベンチトップ型のデジタルマルチメータのパネル」「パネルに書かれた警告表示」「テストリード」「電源の投入と日付時刻の設定」
第2回:デジタルマルチメータの基礎知識
「直流電圧を正確に測る歴史」「現在のデジタルマルチメータの構造と機能」「デジタルマルチメータの選定」「【ミニ解説】測定カテゴリーとは」
第3回:直流電圧の測定と仕様の見方
「直流電圧を測定するための結線」「デジタルマルチメータの直流電圧測定の仕様表現」「直流電圧を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「直流測定で発生する誤差要因」「1000Vを越える直流高電圧の測定」「微小な直流電圧の測定」「【ミニ解説】デジタルマルチメータで採用されている安全端子」
第4回:交流電圧の測定と仕様の見方
「交流電圧を測定するための結線」「平均値検波と実効値検波の違い」「交流電圧測定での周波数帯域」「デジタルマルチメータの交流電圧測定の仕様表現」「交流電圧を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「歪んだ波形を測る際の注意点」「750Vrmsを越える交流高電圧の測定」
第5回:抵抗の測定と仕様の見方
「抵抗を測定するための結線」「デジタルマルチメータの抵抗測定の仕様表現」「抵抗を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの2端子測定での抵抗測定の操作手順」「4端子式測定を行う場合の注意事項」「高抵抗を測定する際の注意事項」「【ミニ解説】直流による抵抗測定と交流による抵抗測定」
第6回:直流/交流の電流測定と仕様の見方
「直流電流を測定するための結線」「デジタルマルチメータの直流電流測定の仕様表現」「直流電流を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの3Aレンジ以下の直流電流測定の操作手順」「電流入力端子に実装されている保護用ヒューズの断線を防ぐ」「直流電流測定時の注意事項」「10Aを越える直流電流の測定」「交流電流を測定するための結線」「デジタルマルチメータの交流電流測定の仕様表現」「交流電流を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの3Aレンジ以下の交流電流測定の操作手順」「10Aを越える交流電流の測定」
第7回:周波数測定と仕様の見方
「周波数を測定するための結線」「34461Aで採用されているレシプロカル・カウント方式」「34461Aで設定可能なゲート時間」「34461Aの周波数測定の仕様表現」「周波数/周期を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの周波数/周期測定の操作手順」「【ミニ解説】ユニバーサル・カウンタとの違い」
第8回:温度測定と仕様の見方
「温度を測定するための結線」「【ミニ解説】さまざまな温度センサ」「34461Aの温度測定の仕様表現」「温度を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの温度測定の操作手順」「【ミニ解説】温度測定で使われる多点温度計」
第9回:導通/ダイオード試験、容量測定
「導通/ダイオード試験をするための結線」「34461Aでの導通試験の操作手順」「34461Aでのダイオード試験の操作手順」「コンデンサの容量を測定するための結線」「34461Aの容量測定の仕様表現」「容量を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの容量測定での操作手順」「【ミニ解説】正確にコンデンサの容量を測定するときはLCRメータを使う」
第10回:デジタルマルチメータをシステムで使う
「デジタルマルチメータをシステムで使う」「外部トリガ入力と測定完了出力端子」「外部トリガ機能の設定」「34461Aに搭載されている通信インタフェース」「ラックを選定する際の注意点」「測定システムのノイズ対策」
第11回:デジタルマルチメータの周辺アクセサリ
「測定器メーカが用意しているアクセサリ」「DC結合電流プローブ」「30A電流シャント抵抗」「ターミナル・コネクタ」「34401Aから34461Aへの置き換え」
第12回:キーサイトの新しい教育向け汎用測定器
「【インタビュー】キーサイト・テクノロジーが考える教育向け汎用測定器」

周波数を測定するための結線

今回の解説に使っている34461Aには付加機能として3Hz~300kHzの交流電圧源の周波数と周期を測定する機能がある。この機能は34461Aの前のモデルの34401Aにもあった。市場にあるすべてのデジタルマルチメータにある機能ではないが、交流電圧信号を測定する際に同時に周波数を知れるので便利な機能である。

周波数を測るための結線は交流電圧の測定と同じである。

図62. 34461Aでの交流電圧信号の周波数を測定する場合の結線

図62. 34461Aでの交流電圧信号の周波数を測定する場合の結線

入力回路は接地から絶縁されており最大750Vrmsまで可能であるため、50Hz/60㎐の商用電源の周波数を安全に測定できる。

34461Aで採用されているレシプロカル・カウント方式

34461Aの時間測定はレシプロカル・カウント方式が採用されていると仕様に書かれている。時間計測方式には下記に示すように2つの方法があり、古くは構造が単純なためダイレクト・カウント方式が採用されていた。しかしこの方式はゲート時間が同じでも入力される周波数によって表示桁数が変わるという欠点がある。

一方、レシプロカル・カウント方式は構造が複雑になるが、ゲート時間が同じであれば表示される周波数の桁数は同じになる特長があるため最近の周波数測定器ではレシプロカル・カウント方式が採用されている。

図63. ダイレクト・カウント方式とレシプロカル・カウント方式

図63. ダイレクト・カウント方式とレシプロカル・カウント方式

34461Aで設定可能なゲート時間

周波数や周期を測定する際にはゲート時間の設定が必要になる。測定器に表示される周波数や周期は設定したゲート時間での平均値となる。ゲート時間を長く設定すると測定結果の表示桁数は多くなるが、測定に必要な時間は長くなる。

34461Aでは10ms、100ms、1sのいずれかが設定できるようになっている。

34461Aの周波数測定の仕様表現

34461Aの周波数測定の仕様表現は下記のようになっている。周波数や周期を測定する場合は入力された正弦波信号をコンパレータによってパルス信号に変換するため、入力される信号のスルーレート(傾き)による誤差が生じる。このため周波数が低い場合のほうが誤差は生じやすくなる。

34461Aの仕様では波形の傾きが周波数によって変化する正弦波と波形の傾きが周波数に依存しないパルス波では仕様が異なる。

24時間
TCAL±1 ℃
90日間
TCAL ± 5 ℃
1年間
TCAL±5 ℃
2年間
TCAL±5 ℃
温度係数/℃
正弦波 3Hz ~ 10Hz 0.1 0.1 0.1 0.1 0.1
10Hz ~ 100Hz 0.03 0.03 0.03 0.03 0.035
100Hz ~ 1kHz 0.003 0.008 0.01 0.01 0.015
1kHz ~ 300kHz 0.002 0.006 0.01 0.01 0.015
方形波 0.001 0.006 0.01 0.01 0.015
注1)確度仕様の表現は±(読み値の%)となっている。
注2)仕様は、K=2のISO/IEC 17025(JIS Q17025)に準拠している。
注3)温度係数はTCAL±5℃から外れる場合、1℃外れるごとにこの値が追加される。
注4)60分のウォームアップの仕様である。仕様は、ゲート時間1秒(7桁)の場合である。
注5)100mV以上の正弦波および方形波に適用される。10mV ~ 100mV未満の入力の場合、読み値%誤差の値は10倍となる。
ゲート時間が1秒以下の時の追加のゲート時間誤差
1s 0.1s 0.01s
正弦波 3Hz ~ 40Hz 0 0.2 0.2
40Hz ~ 100Hz 0 0.06 0.2
100Hz ~ 1kHz 0 0.02 0.2
1kHz ~ 300kHz 0 0.004 0.03
方形波 0 0 0
注1)確度仕様の表現は±(読み値の%)となっている。

表12. 34461Aでの直流電流測定の仕様表現

周波数/周期を測定するためのデジタルマルチメータの操作

34461Aにおいて周波数や周期を測定するための設定項目は下記のように構成されている。

34461Aでは交流信号の周波数と周期のみの測定であるため、トリガレベルの設定は常にゼロに固定されている。

図64. 34461Aでの周波数/周期測定設定項目の構成

図64. 34461Aでの周波数/周期測定設定項目の構成

34461Aでの周波数/周期測定の操作手順

34461Aのパネルにある「Freq」キーを押して周波数/周期測定の設定画面を表示させる。

図65. 34461Aでの周波数/周期を測定するための初期画面

図65. 34461Aでの周波数/周期を測定するための初期画面

最初に画面左端にある「Freq Period」キーを押して測定した結果を単位がHzの周波数で表示するのか、単位が秒の周期で表示するのかを選択する。

「Rang」や「AC Filter」の設定は交流電圧測定の時と同じである。「Gate Time」は測定に必要な桁数を決めることになる。

図66. 34461Aでのゲート時間の設定

図66. 34461Aでのゲート時間の設定

下図にゲート時間の設定による表示桁数の違いを示す。

図67. ゲート時間の設定による表示桁数の違い

図67. ゲート時間の設定による表示桁数の違い

【ミニ解説】ユニバーサル・カウンタとの違い

さまざまな時間に関する測定を行うことができるユニバーサル・カウンタという測定器がある。この測定器との違いを示す。

図68. ユニバーサル・カウンタ 53220A(キーサイト・テクノロジー)

図68. ユニバーサル・カウンタ 53220A(キーサイト・テクノロジー)

ユニバーサル・カウンタは時間や周波数に関する様々な測定ができる高周波測定器である。一方デジタルマルチメータの周波数/周期測定は低周波測定器の一部の付加機能であるため、高い周波数の測定は対象にしていない。

高周波測定器では10MHzタイムベース基準を複数の高周波測定器の時間基準として共有できるように作られている。高周波測定器のユニバーサル・カウンタ53220Aでは外部のタイムベース基準を使っての時間測定はできるが、デジタルマルチメータ34461Aは高周波測定器でないので外部のタイムベース基準を使っての測定はできない。

ユニバーサル・カウンタが持つ機能とデジタルマルチメータの周波数/周期測定機能の違いは下記の通りである。

1つの入力端子を使う測定 2つの入力端子を使う測定
周波数 周期 パルス幅
時間
立上り/
立下り時間
デューティ比 周波数比 位相 時間差
ユニバーサル・カウンタ
デジタルマルチメータ × × × × × ×

表13. ユニバーサル・カウンタとデジタルマルチメータの測定機能の違い


執筆:横河レンタ・リース株式会社 事業統括本部 魚住 智彦

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