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技術情報・レポート

2022/05/17

初めて使うデジタルマルチメータ・・・第3回 「直流電圧の測定と仕様の見方」

連載記事一覧
第1回:デジタルマルチメータが届いたら最初にすること
「はじめに」「6.5桁ベンチトップ型のデジタルマルチメータのパネル」「パネルに書かれた警告表示」「テストリード」「電源の投入と日付時刻の設定」
第2回:デジタルマルチメータの基礎知識
「直流電圧を正確に測る歴史」「現在のデジタルマルチメータの構造と機能」「デジタルマルチメータの選定」「【ミニ解説】測定カテゴリーとは」
第3回:直流電圧の測定と仕様の見方
「直流電圧を測定するための結線」「デジタルマルチメータの直流電圧測定の仕様表現」「直流電圧を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「直流測定で発生する誤差要因」「1000Vを越える直流高電圧の測定」「微小な直流電圧の測定」「【ミニ解説】デジタルマルチメータで採用されている安全端子」
第4回:交流電圧の測定と仕様の見方
「交流電圧を測定するための結線」「平均値検波と実効値検波の違い」「交流電圧測定での周波数帯域」「デジタルマルチメータの交流電圧測定の仕様表現」「交流電圧を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「歪んだ波形を測る際の注意点」「750Vrmsを越える交流高電圧の測定」
第5回:抵抗の測定と仕様の見方
「抵抗を測定するための結線」「デジタルマルチメータの抵抗測定の仕様表現」「抵抗を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの2端子測定での抵抗測定の操作手順」「4端子式測定を行う場合の注意事項」「高抵抗を測定する際の注意事項」「【ミニ解説】直流による抵抗測定と交流による抵抗測定」
第6回:直流/交流の電流測定と仕様の見方
「直流電流を測定するための結線」「デジタルマルチメータの直流電流測定の仕様表現」「直流電流を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの3Aレンジ以下の直流電流測定の操作手順」「電流入力端子に実装されている保護用ヒューズの断線を防ぐ」「直流電流測定時の注意事項」「10Aを越える直流電流の測定」「交流電流を測定するための結線」「デジタルマルチメータの交流電流測定の仕様表現」「交流電流を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの3Aレンジ以下の交流電流測定の操作手順」「10Aを越える交流電流の測定」
第7回:周波数測定と仕様の見方(7月12日公開予定)
「周波数を測定するための結線」「34461Aで採用されているレシプロカル・カウント方式」「34461Aで設定可能なゲート時間」「34461Aの周波数測定の仕様表現」「周波数/周期を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの周波数/周期測定の操作手順」「【ミニ解説】ユニバーサル・カウンタとの違い」
第8回:温度測定と仕様の見方(7月26日公開予定)
「温度を測定するための結線」「【ミニ解説】さまざまな温度センサ」「34461Aの温度測定の仕様表現」「温度を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの温度測定の操作手順」「【ミニ解説】温度測定で使われる多点温度計」
第9回:導通/ダイオード試験、容量測定(8月9日公開予定)
「導通/ダイオード試験をするための結線」「34461Aでの導通試験の操作手順」「34461Aでのダイオード試験の操作手順」「コンデンサの容量を測定するための結線」「34461Aの容量測定の仕様表現」「容量を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの容量測定での操作手順」「【ミニ解説】正確にコンデンサの容量を測定するときはLCRメータを使う」
第10回:デジタルマルチメータをシステムで使う(8月23日公開予定)
「デジタルマルチメータをシステムで使う」「外部トリガ入力と測定完了出力端子」「外部トリガ機能の設定」「34461Aに搭載されている通信インタフェース」「ラックを選定する際の注意点」「測定システムのノイズ対策」
第11回:デジタルマルチメータの周辺アクセサリ(9月6日公開予定)
「測定器メーカが用意しているアクセサリ」「DC結合電流プローブ」「30A電流シャント抵抗」「ターミナル・コネクタ」「34401Aから34461Aへの置き換え」
第12回:キーサイトの新しい教育向け汎用測定器(9月20日公開予定)
「【インタビュー】キーサイト・テクノロジーが考える教育向け汎用測定器」

直流電圧を測定するための結線

デジタルマルチメータを使って直流電圧を測定する場合は測定対象の電圧範囲がデジタルマルチメータ本体およびテスト・リード・セットなどの耐電圧を越えていないことを確認する必要がある。今回の解説記事で使う34461Aの最大入力レンジは直流1000Vとなっている。また標準添付のテストリードは定格が1000Vとなっているため、1000Vまでの直流電圧測定を安全に行うことが可能となる。1000V以上の高電圧の測定方法については記事後半で説明する。

図17. 34461Aでの直流電圧を測定する場合の結線

図17. 34461Aでの直流電圧を測定する場合の結線

デジタルマルチメータの直流電圧測定の仕様表現

デジタルマルチメータの直流電圧測定仕様は温度や湿度が管理されている校正室で国家標準にトレーサブルな任意の直流電圧を発生できる高精度な校正器を基準として値付けされている。デジタルマルチメータの仕様は規定された温度環境(34461Aでは23℃±5℃)での電圧レンジに対する誤差と測定値に対する誤差で規定されており、規定された温度範囲外では温度係数による誤差の加算がされるようになっている。下記の表に示された34461Aの直流電圧測定の仕様では測定レンジごとに仕様が規定されており、前に書かれた数字が測定値に対する誤差、後ろに書かれた数字が測定レンジに対する誤差となっている。いずれも誤差は%表現となっている。測定器メーカによっては誤差を%(百分率、parts per hundred)ではなくppm(百万分率、parts per million)表示する場合がある。1%は1万ppmと同じ意味である。また製品によってはレンジに対する誤差表現は固定された値であるため「最下位桁のカウント数」で表現される場合がある。

レンジ 24時間
TCAL±1℃
90日間
TCAL ± 5℃
1年間
TCAL±5℃
2年間
TCAL±5℃
温度係数/℃
100mV 0.0030+0.0030 0.0040+0.0035 0.0050+0.0035 0.0065+0.0035 0.0005+0.0005
1V 0.0020+0.0006 0.0030+0.0007 0.0040+0.0007 0.0055+0.0007 0.0005+0.0001
10V 0.0015+0.0004 0.0020+0.0005 0.0035+0.0005 0.0050+0.0005 0.0005+0.0001
100V 0.0020+0.0006 0.0035+0.0006 0.0045+0.0006 0.0060+0.0006 0.0005+0.0001
1000V 0.0020+0.0006 0.0035+0.0010 0.0045+0.0010 0.0060+0.0010 0.0005+0.0001
注1)確度仕様の表現は±(読み値の%+レンジの%)となっている。
注2)仕様は、K=2のISO/IEC 17025(JIS Q17025)に準拠している。
注3)温度係数はTCAL±5℃から外れる場合、1℃外れるごとにこの値が追加される。

表2. 34461Aでの直流電圧の仕様表現

ベンチトップ型のデジタルマルチメータでは基準となる校正器を使って校正作業を行ってからの経過時間ごとに誤差を規定する場合がある。一般には校正周期が1年であることが多いのでこの条件で仕様を確認する。

直流電圧を測定するためのデジタルマルチメータの操作

34461Aでは直流電圧を測定するために設定する項目は下記のように構成されている。

図18. 34461Aでの直流電圧測定項目の構成

図18. 34461Aでの直流電圧測定項目の構成

直流電圧を測定するには本体のパネルにある「DCV」キーを押すと液晶パネルに下記の画面となる。この画面からそれぞれの測定条件を設定していくことになる。

図19. 34461Aでの直流電圧を測定するための初期画面

図19. 34461Aでの直流電圧を測定するための初期画面

最初に設定するのが左端にあるレンジの設定になる。「Auto」に設定すると入力電圧に適したレンジが自動的に選ばれるので便利ではあるが、レンジ間誤差や測定スピード低下が生じるので測定対象に合わせたレンジを選択する場合がある。利用目的に合わせて選択を行う。

図20. 34461Aでの直流電圧レンジを設定する画面

図20. 34461Aでの直流電圧レンジを設定する画面

高分解能A/D変換器を搭載しているデジタルマルチメータでは積分時間を設定することができるようになっている。入力電圧信号に50Hzや60Hzの商用交流電源の波形がノイズとして重畳することが多いため、ノイズを取り除くために下記に示すように積分時間を設定して平均化を行い商用交流電源によるノイズの影響を抑制できるようになっている。34461Aでは商用交流電源は50Hzと60Hzがあるため時間で設定するではなく周期(PLC:Power Line Cycle)で設定するようになっている。50Hzであれば1PLCは20ms、60Hzであれば1PLCは16.7msとなる。

図21. 積分時間設定による商用交流電源ノイズ抑制

図21. 積分時間設定による商用交流電源ノイズ抑制

積分時間が1PLC未満の場合は商用交流電源によるノイズ抑制はできないが、測定スピードを速くすることができる。積分時間を1PLCより長くすると平均化の効果が高まり商用交流電源によるノイズの抑制効果は高まるが測定スピードは遅くなる。

積分時間の設定は「Aperture」キーを押すと下記の画面が表示されるのでここで設定する。通常の測定であれば10PLCの設定でよい。

図22. 34461Aでの直流電圧測定時の積分時間の設定

図22. 34461Aでの直流電圧測定時の積分時間の設定

「Auto Zero」の設定をONにすると測定ごとに入力がショートされた状態の電圧を測定したのちに、測定対象の電圧を測定するとゼロ値の補正をすることができる。測定ごとにゼロ値の補正をすることによって回路内部のゼロドリフトをキャンセルできるが、測定スピードは減少するので高速に測定したい場合はこの機能を設定しない。

「Input Z」は直流電圧測定時の入力インピーダンスを規定する設定である。「Auto」に設定すると入力インピーダンスは0.1V、1V、10Vレンジでは10GΩとなり、100Vと1,000Vレンジでは10MΩとなる。「10MΩ」に設定するとすべてのレンジで同じ10MΩの入力インピーダンスになる。通常の測定では「Auto」の設定でよい。

直流測定で発生する誤差要因

熱起電力による誤差

2種類の異なる金属を接合した状態で両端の温度が異なると起電力が発生するゼーベック効果を積極的に利用したのが温度センサの熱電対である。デジタルマルチメータを使う場合でも端子に接続する金属によって熱起電力が発生する。発生する電圧は大きくないが、微小電圧を測定する場合は誤差要因となる。

銅と接合する金属 近似値(μV/℃)
カドミウム - スズはんだ 0.2
<0.3
0.5
0.5
黄銅 3
ベリリウム銅 5
アルミニウム 5
スズ - 鉛はんだ 5
コバールまたは合金42 40
シリコン 500
銅酸化物 1000

表3.端子が銅合金で作られたデジタルマルチメータで発生する熱起電力

熱起電力の発生を抑制するためにはデジタルマルチメータに接続する配線材に銅を用いるようにする。また温度差が発生しないようにデジタルマルチメータの冷却を妨げないようにする。

負荷による誤差

信号源抵抗が高い電圧源の直流電圧を測定する場合はデジタルマルチメータの入力抵抗の影響を受ける。

下図に示すように測定した電圧源の電圧は信号源抵抗Rsとデジタルマルチメータの入力抵抗Riによって分圧されてしまい誤差が生じる。

図23. デジタルマルチメータの入力抵抗の影響によって発生する誤差

図23. デジタルマルチメータの入力抵抗の影響によって発生する誤差

誤差を小さくするにはデジタルマルチメータの入力インピーダンスが0.1V、1V、10Vレンジでは10GΩとなるように「Input Z」の設定で「Auto」に設定する。

漏れ電流による誤差

デジタルマルチメータを使って高い信号源抵抗を持つ直流電圧源を測定する場合はデジタルマルチメータからの微小な漏れ電流が誤差要因となる。漏れ電流は34461Aでは30pA(25℃)という仕様となっている。漏れ電流は周囲温度が30℃を超えると、8℃ごとにバイアス電流は2倍になる。

図24. 漏れ電流の影響によって発生する誤差

図24. 漏れ電流の影響によって発生する誤差

1000Vを越える直流高電圧の測定

34461Aでは1000Vまでの直流電圧まで測定することが可能となっている。これ以上の高い電圧を測定する場合は外部に分圧器を用意して測定を行う。分圧器は高電圧プローブとして販売される場合もある。高電圧の測定は危険であるため、入力端子の低圧側は接地する。

図25. 分圧器を使って高電圧を測定する場合の接続

図25. 分圧器を使って高電圧を測定する場合の接続

微小な直流電圧の測定

34461Aの直流電圧を測定する最小電圧レンジは100mVとなっている。このレンジより小さい電圧レンジで直流電圧を測定したい場合は微小電圧測定専用のナノボルトメータという測定器を利用する。下記に示すナノボルトメータでは1mVまでのレンジがある。

図26. ナノボルト/マイクロ・オーム・メータ 34420A(キーサイト・テクノロジー)

図26. ナノボルト/マイクロ・オーム・メータ 34420A(キーサイト・テクノロジー)

【ミニ解説】デジタルマルチメータで採用されている安全端子

デジタルマルチメータは高電圧まで測定できるようになっているため、最近のデジタルマルチメータではIEC61010に準拠した安全端子が使われている。設計された時期が古い製品では配線ケーブルを直接接続できるバインディングポスト端子が使われている。配線材の導体が手に触れる危険があるので利用する場合は注意が必要である。

図27. デジタルマルチメータに使われている入力端子

図27. デジタルマルチメータに使われている入力端子


執筆:横河レンタ・リース株式会社 事業統括本部 魚住 智彦

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