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学び情報詳細

初めて使うデジタルマルチメータ・・・第10回 「デジタルマルチメータをシステムで使う」

連載記事一覧
第1回:デジタルマルチメータが届いたら最初にすること
「はじめに」「6.5桁ベンチトップ型のデジタルマルチメータのパネル」「パネルに書かれた警告表示」「テストリード」「電源の投入と日付時刻の設定」
第2回:デジタルマルチメータの基礎知識
「直流電圧を正確に測る歴史」「現在のデジタルマルチメータの構造と機能」「デジタルマルチメータの選定」「【ミニ解説】測定カテゴリーとは」
第3回:直流電圧の測定と仕様の見方
「直流電圧を測定するための結線」「デジタルマルチメータの直流電圧測定の仕様表現」「直流電圧を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「直流測定で発生する誤差要因」「1000Vを越える直流高電圧の測定」「微小な直流電圧の測定」「【ミニ解説】デジタルマルチメータで採用されている安全端子」
第4回:交流電圧の測定と仕様の見方
「交流電圧を測定するための結線」「平均値検波と実効値検波の違い」「交流電圧測定での周波数帯域」「デジタルマルチメータの交流電圧測定の仕様表現」「交流電圧を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「歪んだ波形を測る際の注意点」「750Vrmsを越える交流高電圧の測定」
第5回:抵抗の測定と仕様の見方
「抵抗を測定するための結線」「デジタルマルチメータの抵抗測定の仕様表現」「抵抗を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの2端子測定での抵抗測定の操作手順」「4端子式測定を行う場合の注意事項」「高抵抗を測定する際の注意事項」「【ミニ解説】直流による抵抗測定と交流による抵抗測定」
第6回:直流/交流の電流測定と仕様の見方
「直流電流を測定するための結線」「デジタルマルチメータの直流電流測定の仕様表現」「直流電流を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの3Aレンジ以下の直流電流測定の操作手順」「電流入力端子に実装されている保護用ヒューズの断線を防ぐ」「直流電流測定時の注意事項」「10Aを越える直流電流の測定」「交流電流を測定するための結線」「デジタルマルチメータの交流電流測定の仕様表現」「交流電流を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの3Aレンジ以下の交流電流測定の操作手順」「10Aを越える交流電流の測定」
第7回:周波数測定と仕様の見方
「周波数を測定するための結線」「34461Aで採用されているレシプロカル・カウント方式」「34461Aで設定可能なゲート時間」「34461Aの周波数測定の仕様表現」「周波数/周期を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの周波数/周期測定の操作手順」「【ミニ解説】ユニバーサル・カウンタとの違い」
第8回:温度測定と仕様の見方
「温度を測定するための結線」「【ミニ解説】さまざまな温度センサ」「34461Aの温度測定の仕様表現」「温度を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの温度測定の操作手順」「【ミニ解説】温度測定で使われる多点温度計」
第9回:導通/ダイオード試験、容量測定
「導通/ダイオード試験をするための結線」「34461Aでの導通試験の操作手順」「34461Aでのダイオード試験の操作手順」「コンデンサの容量を測定するための結線」「34461Aの容量測定の仕様表現」「容量を測定するためのデジタルマルチメータの操作」「34461Aでの容量測定での操作手順」「【ミニ解説】正確にコンデンサの容量を測定するときはLCRメータを使う」
第10回:デジタルマルチメータをシステムで使う
「デジタルマルチメータをシステムで使う」「外部トリガ入力と測定完了出力端子」「外部トリガ機能の設定」「34461Aに搭載されている通信インタフェース」「ラックを選定する際の注意点」「測定システムのノイズ対策」
第11回:デジタルマルチメータの周辺アクセサリ
「測定器メーカが用意しているアクセサリ」「DC結合電流プローブ」「30A電流シャント抵抗」「ターミナル・コネクタ」「34401Aから34461Aへの置き換え」
第12回:キーサイトの新しい教育向け汎用測定器
「【インタビュー】キーサイト・テクノロジーが考える教育向け汎用測定器」

デジタルマルチメータをシステムで使う

研究開発や生産などでは測定対象のさまざまな挙動を複数の測定器とパーソナルコンピュータやPLC(Programmable Logic Controller)など制御装置を使って測定システムを構築することがある。特に電圧や電流の測定をする機会は多くあるので、デジタルマルチメータが測定システムに組み込まれることは多い。

測定システムにデジタルマルチメータを組み込む場合に知っておかなければならない下記のことについて解説する。

  • 外部トリガの使い方
  • 通信インタフェース
  • ラックを選定する際の注意点
  • ノイズ対策

測定システムを構築する場合は組み合わせる他の測定器や制御装置の知識も必要となるが、今回の記事では省略する。

外部トリガ入力と測定完了出力端子

人が操作してデジタルマルチメータを使う場合は連続して電圧値などを測定して人が目で測定結果を見ている。デジタルマルチメータの内部では測定が終わると内部でトリガが発生させて自動的に次の測定が行うようになっている。

パーソナルコンピュータなどが制御する測定システムではシステムに組み込まれた測定器に測定開始を外部から指令する必要がある。外部から測定開始を制御する方法には2つあり、1つは通信インタフェース経由で測定開始を行うコマンドを測定器に送る方法である。もう1つは電気信号によってスタート信号を伝える方法である。デジタルマルチメータには測定スタート指令を受け取る外部トリガ入力端子(34461AではExt Trigと表示されている端子)と測定の完了を外部に伝える測定完了出力端子(34461AではVM Compと表示されている端子)がある。通信インタフェースを使って測定の開始を指令するより、電気信号を使ったほうが正確な測定の同期が確保される。

図87. 外部トリガ入力端子と測定完了出力端子

図87. 外部トリガ入力端子と測定完了出力端子

外部トリガ機能の設定

前面パネルにある「Acquire」キーを押すと下記の画面が表示されてトリガ条件が設定できるようになる。

34461Aが持つ多くのトリガ機能のうち基本的な操作についてのみ説明する。

図88. 34461Aでのトリガ設定の初期画面

図88. 34461Aでのトリガ設定の初期画面

最初にトリガの種類を選択する。34461Aには下記の3つのトリガが用意されている。

  • Auto
    デジタルマルチメータは1つの測定が完了するとすぐに新しいトリガを自動的に発生させて測定を継続させる。一般的な使い方ではAutoを選択する。
  • Single
    デジタルマルチメータの前面パネルの「Single」キーが押されるたびにトリガを1つ発生させて測定を行う。
  • Ext
    指定されたトリガスロープの信号が背面パネルにある「Ext Trig」コネクタに入力されるたびにデジタルマルチメータは測定を実行する。

表示画面にある「Trg Src」キーを押すとトリガの種類を選択することができる。外部トリガを設定した時は下記に示すようにトリガ信号のスロープを「立ち上がり」か「立ち下がり」を選択できるようになっている。

図89. 34461Aでの外部トリガ(Ext)の設定画面

図89. 34461Aでの外部トリガ(Ext)の設定画面

この設定の状態で外部制御信号によってデジタルマルチメータにトリガを与えて1回の測定をすることができる。1回のトリガで複数回の測定をする場合は「Samples/Trigger」のキーを選択して回数を入力する。

34461Aに搭載されている通信インタフェース

34461AではUSB、LAN、GPIB(オプション)の通信インタフェースが使えるようになっている。通信コネクタはデジタルマルチメータの背面にある。

GPIBは耐ノイズ特性がよい特長を持つが、パーソナルコンピュータと接続する際には専用の通信インタフェースボードが必要となるため他の通信インタフェースよりコストは掛かる。

図90. 34461Aの背面にある通信インタフェースのコネクタ

図90. 34461Aの背面にある通信インタフェースのコネクタ

ラックを選定する際の注意点

測定システムを構築する際には19インチラックに複数の測定器を組み込むことがある。日本で販売されている19インチラックにはJIS規格やEIA規格の2種類あるため、測定器メーカが用意しているラックマウント金具に適応しているラックであるがを事前に確認する必要がある。ラックが準拠している規格の違いによってラックマウント金具の取付け穴の位置が異なっている。34461A用のラックマウント金具はEIA規格に準拠したものとなっている

ラックを作るメーカからは「JIS・EIA変換金具」が販売されているので、すでに保有しているラックの規格が測定器のラックマウント金具と合わないときに利用する。

図91. 規格が異なるラックの取り付け穴位置

図91. 規格が異なるラックの取り付け穴位置

複数の測定器や電源装置などを組み込んだラックは重量物となるため、地震や運搬の際に転倒する危険があるので設置や運搬に際しては転倒を防ぐ対策を取る必要がある。ラックを据え付けるときに使う転倒防止金具はラックメーカから販売されている。

また、扉のついたキャビネットラックに複数の測定器などを組み込むとラック内の温度が上昇して測定精度に影響を及ぼすことがあるので、測定器の実装では風が流れるようにして、ラック内で発生した熱を排気するためにファンをラック上部に取り付ける。

測定システムのノイズ対策

正確で安定した測定結果を得るには測定器に影響を与える外来ノイズからの影響を受けないようにする必要がある。ノイズ対策は放射や伝送で伝わるノイズ信号を信号線や測定器に混入させないようにする工夫であり、ノイズ源の性質によって対策は異なる。

ノイズ対策で最初に行うのはノイズ源自身のノイズ発生を小さくすることである。ノイズ源のノイズ発生を小さくできない場合は「接地の取り方、配線の引き回し、信号線へのフィルタの挿入、シールドの実施」により測定器へのノイズ混入を防止する。デジタルマルチメータでのノイズ対策の一例を下記に示す。

図92. マルチメータを使って電圧を測定する際のノイズ対策の一例

図92. マルチメータを使って電圧を測定する際のノイズ対策の一例

通信インタフェースを使ってパーソナルコンピュータと接続する場合は通信ケーブルを介して測定器にノイズが混入することもあるので、通信ケーブルがノイズ源に近づかないように配線を行い、必要であればフェライトコアをケーブルにつけてコモンモードノイズ対策を行う。


執筆:横河レンタ・リース株式会社 事業統括本部 魚住 智彦

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