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ファンクションジェネレータの基礎と概要 (第3回)

<連載記事一覧>

第1回:「はじめに」「ファンクションジェネレータの歴史と種類」「DDS方式ファンクションジェネレータの構造」「ファンクションジェネレータ利用でよくある疑問点」「【コラム】よいファンクションジェネレータとは」

第2回:「ファンクションジェネレータの基本機能」「ファンクションジェネレータの拡張機能」「ファンクションジェネレータの周辺機器」「【コラム】国内でファンクションジェネレータを販売する主なメーカの製品一覧表」

第3回:「ファンクションジェネレータの用途」「ファンクションジェネレータの校正」「終りに」「【インタビュー】エヌエフ回路設計ブロックのファンクションジェネレータ事業への取り組み」

ファンクションジェネレータの用途

ファンクションジェネレータはμHzオーダーの超低周波から、MHzオーダーの高周波まで発振ができるため、電気・電子回路の評価以外にも、部品、材料、機械、構造物、生体など幅広い用途の試験に使われている。ここではいくつかの応用分野について紹介を行う。

ロータリエンコーダの模擬

ロータリエンコーダは回転するものに取り付けられて、回転数や回転の方向を検出するために使われている。自動車、ロボット、工作機械など機械制御を行う機器や、電子機器の回転式のジョグダイヤルにも使われている。

図30. ロータリエンコーダの原理図

図30. ロータリエンコーダの原理図

ロータリエンコーダの出力は電子回路に接続される。接続された電子回路やファームウェアの評価を行う場合は、実際のロータリエンコーダを接続して試験を行うことも可能であるが、ロータリエンコーダの代わりに2相出力のファンクションジェネレータを使えば、再現性のよい試験を行うことができる。また実際のロータリエンコーダでは実現しないような高速回転や波形の異常などの模擬はファンクションジェネレータを使えば簡単に行える。

図31. ファンクションジェネレータを使ったロータリエンコーダ模擬

図31. ファンクションジェネレータを使ったロータリエンコーダ模擬

レゾルバの模擬

レゾルバはロータリエンコーダと同じく角度を検出するためのセンサであるが、耐環境特性が優れているため、自動車、ロボット、工作機械など厳しい環境で使われる機械に組み込まれている。原理はトランスと同じであり、図32に示すように一次側に正弦波信号を入力して、二次側の2つの検出コイルからの出力が、回転角に対して正弦波状に振幅の変化は90度位相がずれるようにコイルが配置されている。

図32. レゾルバの原理図

図32. レゾルバの原理図

レゾルバから出力される信号は角度検出回路に入力されて、角度信号を得る仕組みになっている。この検出回路を評価するためにファンクションジェネレータが利用できる。最近のファンクションジェネレータは多出力であるため、1台のファンクションジェネレータで3相のレゾルバの模擬信号を出力することができる。

図33. レゾルバ角度検出回路の評価

図33. レゾルバ角度検出回路の評価

車載電装品の電源試験(1)

自動車に搭載された電子回路が常に正常に動作することを確認するための試験はISO規格で規定されている。この中で電源電圧変動試験(ISO 16750-2)はシーケンス動作が可能なファンクションジェネレータとバイポーラ電源の組合せて試験環境が構築できる。

図34. 車載電装品の電源電圧変動試験環境

図34. 車載電装品の電源電圧変動試験環境

発生する波形の事例として、ISO 16750-2:2012 Starting Profile(起動プロフィール)を図35に示す。この波形はファンクションジェネレータのシーケンス機能を使えば、発生することは容易である。

図35. ISO 16750-2:2012 Starting Profile(起動プロフィール)

図35. ISO 16750-2:2012 Starting Profile(起動プロフィール)

車載電装品の電源試験(2)

ISO 11452シリーズでは車載電子機器が無線機器や放送機器からの電磁的な影響に耐えることを試験する方法が規定されている。この規格で周波数が低い15Hz~250kHzの範囲の影響を試験する仕組みにはファンクションジェネレータが利用できる。

図36. ISO 11452-10 (拡張オーディオ周波数範囲における伝導妨害へのイミュニティ)環境

図36. ISO 11452-10 (拡張オーディオ周波数範囲における伝導妨害へのイミュニティ)環境

エンジンECU評価

図37に示すようにエンジンの燃焼制御を行うためにクランクとカムに回転センサが取り付けられており、エンジンECUにクランクとカムからのセンサ信号が入力される。エンジンECUは最適な燃料噴射と点火を制御する。

図37. エンジンの燃焼制御

図37. エンジンの燃焼制御

エンジンECUを評価する際に実際のエンジンからクランク角信号やカム角信号を使わないで、2出力のファンクションジェネレータを使ってエンジンECUの評価を行うことができる。任意波形発生機能とシーケンス機能を使えば容易に発生波形を作ることができる。

図38. エンジンECUの評価

図38. エンジンECUの評価

磁性材料の鉄損測定

磁性材料はモータやトランスなど多くの電気部品に使われおり、用途に適した磁性材料の開発が行われている。特にインバータのスイッチング周波数が高くなってきたため、磁性材料の鉄損計測の要求が高まっている。鉄損測定では正弦波の振幅や周波数を変化させて、磁性材料を評価する。鉄損測定システムの基本は図39に示すとおりである。

図39. 鉄損測定システム

図39. 鉄損測定システム

注)エプスタイン試験枠とは
短冊状の軟磁性材料をコイル枠の中に井桁状に入れる。コイル枠は同じ巻数の1次コイル(励磁)と2次コイル(誘起電圧)で構成され、直流や交流の励磁を行い、磁気特性(B-H曲線、ヒステリシス損、鉄損など)を測定するために使う。

図40. エプスタイン試験枠の外観

図40. エプスタイン試験枠の外観

提供:メトロン技研

実際の磁性材料測定システムは用途に応じたさまざまな試験枠や解析ソフトが必要となるため、専業の測定器メーカが作った装置が使われている。

図41に示したインバータ励磁鉄損測定装置は実際のモータに印加されるインバータ波形での評価とJIS規格で規定されている正弦波での磁性材料の評価ができるようになっている。励磁周波数は40Hz~20kHzまでとなっている。

図41. インバータ励磁鉄損測定装置

図41. インバータ励磁鉄損測定装置

提供:メトロン技研
メトロン技研株式会社のホームページ http://www.metron.co.jp/

セラミックコンデンサの音鳴き

強誘電性のセラミックコンデンサは、誘電体に交流電圧がかかると誘電体が変形する(歪む)という特性がある。このため、可聴域の周波数(20Hz~20kHz)の電圧がセラミックコンデンサにかかるとセラミックコンデンサが振動し、基板にその振動が伝達されて音鳴きが発生する。電子機器からの不快な音が発生することが問題となり、コンデンサメーカではセラミックコンデンサからの音を図42で示すようなシステムで評価している。

図42. セラミックコンデンサの鳴き評価システム

図42. セラミックコンデンサの鳴き評価システム

MEMSアクチュエータの駆動

MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)は、機械要素部品、センサ、アクチュエータ、電子回路を微細加工技術によって集積化したものである。1960年代から研究が始まり、現在では自動車に搭載された加速度センサや、プロジェクタに使われているミラーデバイスなど多くの製品に組込まれている。

インクジェットプリンタや超音波モータに使われているMEMS素子を使った圧電アクチュエータは小さくかつ高速で動作するため、図43のような装置が評価試験で使われる。MEMS素子の駆動はファンクションジェネレータとバイポーラ電源によって行い、MEMS素子の挙動はレーザ変位計と顕微鏡を使って観測される。

図43. MEMSアクチュエータ評価装置

図43. MEMSアクチュエータ評価装置

D級アンプのスピーカ駆動

携帯電話やパソコンなどで使われている効率のよいデジタルアンプのことをD級アンプという。アンプの入力はアナログ波形をPWM変調したものであるため、ファンクションジェネレータのPWM変調機能を使って評価信号波形が作れる。図44にはD級アンプの駆動評価回路を示す。

図44. D級アンプの駆動

図44. D級アンプの駆動

インバータなどもPWM変調を使ってモータなどの駆動波形を作るため、同様にして駆動回路の評価環境を構築できる。

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