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記録計・データロガーの基礎と概要 (第2回)

記録計を利用する上での留意点

ノイズ対策

記録計は信号の変化のみを記録するのが目的であるが、ノイズが混入して正しい記録ができない場合がある。

ノイズ対策は下記の3つの視点で行う。

  1. ノイズ発生そのものを小さくする
  2. ノイズが記録計に伝わらないようにする
  3. 記録計自身がノイズの影響を受けない能力を持つ

ノイズ発生源での対策ができない場合は、ノイズが信号に混入しないように記録計に接続される信号線をノイズ発生源やノイズの伝送線路と分離したり、信号線にツイストペアケーブルやシールド線を利用したりする方法がある。またノイズ源と記録計の接地を分離する方法や、商用電源からのノイズの混入を防ぐために絶縁トランスを介して電源を供給する方法もある。

記録計は入力が絶縁されているためノイズの影響は受けにくいようになっているが、記録計自身が電源ノイズの影響をより受けないようにするためには、A/D変換器の積分時間を商用周波数に合わせて20msecもしくは16.67msecの整数倍にしたり、入力にノーマルモードフィルターやコモンモードフィルターを挿入したりする方法がある。

記録計とパソコンなどを接続する通信線もノイズの影響によって誤動作を生じる可能性があるので、ノイズ対策が必要な場合もある。

停電対策

電源事情が悪い場合(停電、瞬停)は、一時的に記録が中断しても、記録済みのデータは保存され、電源が復旧した後に記録が継続できる仕組みを持つ必要がある。

基準接点補償

温度差によって起電力が発生する熱電対を使って温度測定をする場合には、測定対象の温度は「熱電対で得た温度に端子盤温度を加えた温度」となる。

この補償には2つの方法がある。一つは熱電対の端子盤温度を常に0℃にする外部冷接点補償器を使う方法である。氷を使って0℃を実現するものと、ペルチェ素子を使って0℃に温度制御するものがある。この方法は精密な温度測定を行う場合以外はあまり使用されることはない。

図18. 外部冷接点補償器による熱電対温度測定

外部冷接点補償器による熱電対温度測定

もう一つは、測温抵抗体、サーミスタ、トランジスタなどの温度センサを基準接点補償回路として組込む方法である。熱電対が接続された端子盤と温度センサとの温度を均一化するため、端子盤にはアルミ板が埋め込まれている。

図19. 内部基準接点補償による熱電対温度測定

内部基準接点補償による熱電対温度測定

記録計を利用する際には端子盤の温度が一定になるように設置には下記の注意を要する。

  1. 端子盤近くに熱源がないようにする。
  2. 端子盤に直射日光や風が当たらないようにする。
  3. 記録計内の温度上昇を避けるため放熱をよくする

パソコンなど制御装置との組合せ

通信機能を持つ記録計はパソコンやプログラマブル・ロジック・コントローラ(programmable logic controller、PLC)などの制御装置と組み合わせて使われる場合が多い。ここでは記録計に搭載されている通信インターフェースの種類とパソコンからの操作について述べる。

通信インターフェース

記録計にはさまざまなインターフェースが用意されているが、それぞれの特長が異なるので目的に合わせて選択する必要がある。

さまざまな通信インターフェースを変換するアダプタが販売されているので、システム構築に利用することができる。しかし、機能の一部に制約が生じることがあるので注意を要する。

① GP-IB

1960年代後半に最初はHPIBとして登場し、1975年に国際標準として規格化された測定器専用の通信インターフェースである。歴史が長く、測定器の制御に向く機能や耐ノイズ特性が優れているため、多くの測定器がGP-IBに対応している。

しかし、パソコンに専用のGP-IB通信インターフェースボードを組込む必要があることや、専用のGP-IBケーブルが必要など、コストがかかるため利用は減少する方向になっている。

② USB

ほとんどのパソコンに標準で搭載されているため、コストを掛けずにパソコンと接続できる長所がある。最近の測定器はほとんどUSBに対応している。

しかし、USBにはコネクタの抜け止めがないため、利用には注意が必要である。またケーブル長は最大15mという制約がある。

③ LAN(Ethernet)

ほとんどのパソコンに標準で搭載されているため、コストを掛けずにパソコンと接続できる長所がある。最近の測定器にはLAN対応しているものが増えている。

LANは高速で遠隔から測定器を制御できる特長を持っているが、利用にはネットワークの知識が必要となる。

④ RS-485/RS-422/RS-232

古くからあるシリアル通信方式で制御機器などでは対応している機種が多い、RS-232は最大伝送速度の規格では20Kbpsと遅いが、RS-422やRS-485の最大伝送速度は10Mbpsあるため記録計では問題なく使える。

ほとんどのPLCにはRS-485/RS-422/RS-232が搭載されているため、コンパクトな生産システムの構築に有効である。

パソコンの操作環境

記録計は紙に測定結果を記録する時代が続いたが、最近ではパソコンなど外部の装置に記録した結果を転送して、異常波形の検索、高度な解析、制御などを行うことが一般的になってきた。

最新の記録計では専用のソフトを使わないで、Webブラウザから記録計を直接アクセスして、基本的な設定や測定結果の表示できる機能が実装されているので、簡単に操作ができるようになっている。

図20. WebブラウザからのSMARTDAC+の操作

WebブラウザからのSMARTDAC+の操作

出典:横河電機

高度な機能や複数の機器を接続して測定システムを構築する場合は、記録計メーカやソフトハウスから提供されるソフトウェアを利用するか、LabViewやVEEなどシステム開発ソフトウェアを使って自ら制御ソフトウェアを作ることになる。

図21. データロギングソフトウェア GA10(2014年)

データロギングソフトウェア GA10(2014年)

出典:横河電機

インターネットに繋がれたパソコンを使ってシステムを構築する際には、ウィルス対策など十分なセキュリティ対策は必須となる。

コンパクトな測定システムや制御システムを構築する場合は、パソコンよりPLCの利用が便利な場合がある。その際はPLCメーカが提供するソフト開発環境を利用することになる。

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