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電力計の基礎と概要 (第2回)

電力計の構造

電力計は歴史が長く、初期の製品は精密機械である指示計器として作られた。その後高性能なアナログ乗算回路が開発されて電子回路による電力計が登場した。アナログ信号処理によって電力を求める方式から、高速ディジタル信号処理によって電力を求める方式に進化して現在に至っている。最近ではメモリレコーダやディジタルオシロスコープなど波形測定器をベースにした瞬時電力が測定できる電力計も出現している。

ここでは歴史の順にさまざまな電力計の構造を示す。

機械式電力計

精密機械として作られた電力計で内部構造は下記の示すとおりである。電力値はメータの指針で示され目盛りを読み取ることによって得られる。

図27. 機械式電力計(電流力計型計器)の構造

機械式電力計(電流力計型計器)の構造

機械式電力計は構造がシンプルであるが、自己消費電力が大きい欠点がある。現在ではあまり見られなくなった電力計である。

アナログ電子回路で構成された電力計

1970年ころに電力計に使える高性能なアナログ乗算回路が開発され、ディジタル表示ができる電力計が登場した。その後パワー半導体の高速化に伴って広帯域のアナログ電力計が数多く登場した。下記にアナログ乗算器を用いた電力計の構造を示す。

図28. アナログ電子回路で構成された電力計(2533 横河電機)

アナログ電子回路で構成された電力計(2533 横河電機)

注)2533は販売が終了しており、製品は横河計測に移管されている

アナログ電子回路で構成された電力計は下記の課題を持っていたため、1990年初めころからディジタル電子回路で構成された電力計に置き換わっていった。

  1. アナログ回路の占める割合が多く、経時変化や素子のばらつきの影響を受けやすい
  2. ローパスフィルタの時定数の違いで、電圧、電流間の応答の違いが発生する
  3. 応答時間が遅い
  4. 多機能を実現することが難しい

ディジタル電子回路で構成された電力計

ディジタル半導体の進化によってA/D変換器で取り込んだ電圧波形と電流波形からディジタル演算によって電力値が求められるようになった。その後、ディジタル化した電力計は高機能化が進みグラフィック画面を持つパワーアナライザに進化した。

ディジタル電子回路で構成された電力計の構造は下記に示す。

図29. ディジタル電子回路で構成された電力計(WT1800E 横河計測)

ディジタル電子回路で構成された電力計(WT1800E 横河計測)

高機能なパワーアナライザは電力エネルギー計測に関わる多くの測定値を得ることができるため開発の現場に広く普及している。

波形測定器ベースの電力計

メモリレコーダやオシロスコープなど波形測定器をベースに作られた電力計が1990年代の後半に登場した。この電力計の登場によって瞬時的な電力が測定できるようになり、放電現象や急負荷時の短い時間の電力消費を観測できるようになった。

波形測定器ベースの電力計の構造は下記に示す。

図30. 波形測定器ベースの電力計(PX8000 横河計測)

波形測定器ベースの電力計(PX8000 横河計測)

波形測定器ベースの電力計は測定対象の電力値とセンサ信号や制御信号を同時に観測できるためパワーエレクトロニクス装置の制御特性の評価に使うことができる。

但し、波形測定器ベースの電力計は取り込んだ波形を演算して電力を求めるため、観測時間は波形メモリ長とサンプルレートの制約を受ける。

電力計による主な測定や演算結果

電力計ではさまざまな測定結果を得ることができる。ここでは電力計から得られる測定値や演算結果について解説する。

電圧、電流、周波数

電力計が電圧や電流の信号から直接得ることができる基本的な測定値である。得られる測定値は電圧と電流の平均値、実効値、ピーク値、直流成分、交流成分として表示することができる。また基本周波数も測定して表示することができる。

電力(VA、W、Var)

電力には皮相電力、有効電力、無効電力の3つがある。皮相電力は電流と電圧のそれぞれの実効値を掛けた結果である。そのため電圧と電流の位相差は考慮されない。有効電力は負荷で消費される電力のことである。無効電力は負荷で消費されない電力である。有効電力と無効電力は電圧と電流の位相差が考慮されている。

力率

皮相電力に対する有効電力の割合を示す指標である。モータや鉄芯(磁気)式安定器を使った蛍光灯などコイルが電源に接続される機器では無効電力が大きくなり、必要な有効電力を得ようとすると大きな電流が必要となり配電線に負担が掛かる。このような機器は力率が低い機器と言われる。力率が低い機器では力率改善のために進相コンデンサや交流リアクトルが取付けられている。

積算電力

連続して電圧波形と電流波形を測定することによって、有効電力、無効電力、皮相電力の積算値を得ることができる。

効率

インバータ装置やスイッチング電源など電力変換器では変換効率の測定が必須となる。効率測定では電力変換器の入出力の電圧と電流を測定することによって得られる。

高機能な電力計ではモータに取り付けられたトルクセンサからの機械的な力を同時に測定することができる製品もある。このような電力計を使うとモータを含めたエネルギー変換効率を測定できる。

高調波

1994年の名古屋市科学館での電源高調波による爆発火災事故を契機に国内では高調波への関心が高まり、高調波の発生源である電力変換器への規制が始まった。現在ではIEC規格によって高調波エミッションの測定法や基準値が定められている。

高調波規格試験には規格が要求した性能を満足する交流電源と電力計が使われ、高調波電流を次数ごとに測定する。

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