電力計の基礎と概要 (第2回)
電力計への結線
電子機器や電気機器と電力計の配線は単相2線式、単相3線式、三相3線式、三相4線式のいずれかとなる。電力計への接続はそれぞれの方式に合わせた結線となる。電力計を使う上では最も注意が必要な作業となる。
単相2線式
住宅や事務所などにある多くの電子機器や電気機器は単相2線式が使われている。単相2線式での電力計への結線を下記に示す。
単相3線式
住宅や事務所で使われる大きな電力を消費するIHクッキングヒータ、大型住宅用エアコン、業務用洗濯機、電気温水器、電気式床暖房などで200Vを得るために単相3線式が使われている。単相3線式は100Vと200Vを同時に得ることができるので、大きな消費電力を消費する電気設備を持つ住宅や事務所で広く利用される。
単相3線式での電力計への結線を下記に示す。
三相4線式
中性点を基準に三相電源の各相での電力をそれぞれの入力モジュールで測定して、その合計を三相電力として表示する。
三相3線式
三相3線の電力は電力モジュール2台を使用して、その和から求めることができるという「ブロンデルの定理」がある。この方法は2電力計法と言われている。
この方法での測定は線間電圧と相電流の位相差がそれぞれ異なるため、それぞれの電力モジュールに表示される値は異なる。線間電圧と相電流との位相差が90度以上になる場合があるため、負の電力値を示すことがある。
三相3線式での電力測定は入力モジュールで測定した電力値の和が意味を持つ。また各相電流のベクトル和がゼロにならない場合は測定に誤差が生じるので注意が必要である。
三相3線式(3電圧3電流計法)
すべての線間電圧と相電流を測定する方式である。三相有効電力の測定原理は2つの線間電圧と2つの相電流を測定する三相3線式と同じく「ブロンデルの定理」によるものである。三相皮相電力はすべての線間電圧と相電流の測定値を使って計算され、線間電圧、相電流が不平衡であるとき、より正確な皮相電力が求めることができる方式である。
ノイズ対策
電力計の測定対象の多くは大きな電気エネルギーを扱う機器であるため、測定対象や電源からの影響を受けることがあり、安定した測定環境を構築するにはノイズ対策が必要な場合がある。
配線でのノイズ対策
電界、磁界、伝導によってノイズが電力計に伝わり、測定や電力計の制御に影響を与えることがある。電力計が外来ノイズの影響によって安定した測定ができない場合は、ノイズ源から影響を受けないように対策を行う。
- 電力計や周辺機器の接地を行う
- 電源供給配線と信号線を近づけないように分離して配線する
- モータやトランスからは交流磁界が発生しているのでツイストペア線で接続する
- 電源からの伝導ノイズを遮断するためにノイズカットトランスを利用する
- 遠隔から制御を行う場合はノイズが混入しないように通信制御線に光ファイバを用いる
ノイズ対策は有効な手段を選んで実施する。
入力フィルタの設定
電力計には電圧と電流の入力信号に重畳したノイズを除去するための2種類のローパスフィルタがある。1つは信号そのものからノイズを除去するためのラインフィルタである。もう一つは周波数測定などを行うめのゼロクロス検出回路の入力にあるゼロクロスフィルタである。
電力計と組み合わせて使う大電流センサ、PCソフト
電力計を使って測定を行う場合、外部に大電流センサを取り付けることや、PCと組み合わせて測定環境を構築する場合がある。
外付け電流センサ
大型空調機器や電気自動車など大電流を取り扱う機器の場合は電力計に内蔵された電流センサでは測定できないため、外付け電流センサを使う。電力計メーカが指定する外付け電流センサから選べば配線法や使用上の注意点は電力計メーカが示している。
ケーブルと電流センサの位置を固定して再現性のよい測定したい場合は、電流センサユニットの利用を勧める。
PCソフト
電力計に取り込んだ測定値を加工して表示する機能はあるが、電力計に搭載されたCPUの能力や本体の画面サイズの制約により高度な解析や大量の測定データを取り扱うことができない。
このような場合は測定したデータをPC環境で処理することになる。
電力計メーカからは測定データを「PC画面上での表示、ほかのソフトウェアを使って解析するためのデータのフォーマット変換、基本的な解析、測定データの保存」が行えるPCソフトが用意されている。
また、低周波EMCや待機電力などの規格試験を行うための専用ソフトを用意している電力計メーカもある。