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デジタルオシロスコープの基礎と概要 (第2回)

オシロスコープの基本仕様の理解

市場にある多くのオシロスコープから適切な製品を選ぶには仕様の正しい理解が必要となる。ここでは基本的な仕様項目について説明する。

周波数帯域

オシロスコープは直流から高周波までの変化を観測できる。測定可能な周波数の上限を仕様で規定している。ただしオシロスコープの周波数帯域は -3dB(本来の振幅の約70%)で規定されているので、仕様に規定された最高周波数で波形観測すると振幅は本来の -3dBとなる。

一般的なオシロスコープの入力の周波数特性はガウシアン・カーブに類似したものであるため、正確な振幅測定を行うにはオシロスコープの仕様に規定された周波数帯域の1/3~1/5の周波数の信号までとなる。

ただし、ハイエンドの超高速オシロスコープでは、周波数帯域を有効に利用するため、周波数特性を高域までできるだけ平坦に伸ばし、その後急に減衰するようにしたり、A-D変換後の信号をDSPによって補正したりするものがある。

図22. 100MHzオシロスコープの周波数特性

図22. 100MHzオシロスコープの周波数特性

立ち上り時間

オシロスコープは周波数帯域が規定されているため、理想的な立ち上り時間がゼロ秒の信号を入力しても、オシロスコープの画面には有限の立ち上り時間の波形が表示される。

オシロスコープ画面上の立ち上り時間(To)= 定数k ÷ オシロスコープの周波数帯域(Ts)

定数kの値は0.35~0.45の範囲であり、オシロスコープの周波数特性曲線とパルス応答特性によって変わる。周波数帯域が1GHz未満のオシロスコープでは通常0.35を使用する。1GHzを超えるオシロスコープでは0.40~0.45を使用する。

オシロスコープの画面に映る波形の立ち上り時間は信号の立ち上り時間とオシロスコープの立ち上り時間が合わさったものになる。したがって正確な立ち上り時間を測定するためには信号の立ち上り時間の4~5倍の立ち上り時間がオシロスコープで必要となる。

図23. 立ち上り時間の誤差

図23. 立ち上り時間の誤差

サンプル・レート

デジタルオシロスコープはA/D変換器によって波形の振幅を等間隔にサンプルする構造となっているため、サンプリング周波数が速いほど波形を細かく見ることができる。

図24. 入力信号とサンプル点の関係

図24. 入力信号とサンプル点の関係

上図ではサンプル間隔が200nsのときはパルス波形がまったく見つけることができない可能性がある。またサンプル間隔が20nsのときはパルスがリンギングしていることが判らない。

一般に観測した周波数成分の5~10倍以上のサンプル・レートが必要となる。

レコード長

サンプルした波形を記録する長さをレコード長(メモリ長)という。レコード長はポイント数もしくはワード数で表現される。サンプルした波形をすべてディスプレイ上に映すだけであればレコード長と画面の表示分解能が同じであれば問題はない。そのため安価なデジタルオシロスコープでは数kポイントのレコード長となっている。取り込んだ波形を時間軸方向に拡大する場合などは長いレコード長が必要となる。

また、複数の現象をトリガごとに繰り返して記録したい場合は、1回の観測で波形を取り込むレコード長を指定して、複数回繰り返して波形を記録する。

最近のデジタルオシロスコープはレコード長の長いものが多くなってきている。レコード長の長いデジタルオシロスコープの利用が望ましい分野の事例を示す。

・メカトロニクス機器の駆動観測

メカトロニクス機器などは、電子回路で作られた制御部は高速に動作するが、モータやエンジンなど機械は電子回路に比べて低速の動作しかできない。電子回路の動作と機械の動作を同時に観測する場合は広い周波数帯域と長い観測時間が必要となるため、レコード長の長いデジタルオシロスコープが必要となる。

・シリアル通信波形と伝送データの同時観測

シリアル通信の波形と伝送情報の観測を同時にする場合は、データ列で構成された伝送情報の波形を広帯域にデジタルオシロスコープに取り込む必要があるため、レコード長の長いデジタルオシロスコープが必要になる。

最近のオシロスコープにはさまざまなシリアル通信に対応したデコード表示ができるものがある。例えばI2C、SPI、RS-232/422/485/UART、USB 2.0、CAN、CAN FD、LIN、FlexRayなど幅広いシリアル通信規格に対応しているため、ファームウェアのデバックにオシロスコープが利用できる。

図25. 5シリーズMSOによるCAN信号の観測

図25. 5シリーズMSOによるCAN信号の観測

提供:テクトロニクス社

・突発現象の観測

突発現象を効率よく見つけ出すには広帯域で長時間の記録ができることが必要である。これにより突発現象を捉えやすくなる。

最大入力電圧

ミドルクラス以上のオシロスコープは入力インピーダンスを1MΩと50Ωの切り替えを行えるようになっている。標準(受動)プローブを使って測定する場合は1MΩ入力を使うが、50Ω伝送路の高周波信号を測定する場合やアクティブプローブを利用する場合は50Ω入力インピーダンスに切り替えて測定を行う。

オシロスコープの入力回路はおおよそ下記のようになっている。

図26. 1GHz帯域以下のデジタルオシロスコープの入力回路

図26. 1GHz帯域以下のデジタルオシロスコープの入力回路

50Ω入力回路には終端抵抗として50Ω抵抗が接続されている。このため入力された信号が終端抵抗に流れるため、抵抗の許容電力を超えてしまうと破損する。下記にはテクトロニクス社の主なオシロスコープの最大入力電圧を示すが、50Ω入力の最大入力電圧は5Vrmsと低い電圧となっている。

表1. テクトロニクス社の主なデジタルオシロスコープの最大入力電圧
オシロスコープ型名 1MΩ入力 50Ω入力
TBS1000 300Vrms
TDS2000 300Vrms
TBS2000 300Vrms
MSO/DPO2000 300Vrms
MDO3000 300Vrms 5Vrms
TPS2000 300Vrms
THS3000 300Vrms
TDS3000 150Vrms 5Vrms
MDO4000 300Vrms 5Vrms
MSO/DPO5000 300Vrms 5Vrms
5シリーズMSO 300Vrms 5Vrms
6シリーズMSO 300Vrms 5Vrms

入力感度

入力感度は画面の縦軸目盛りを基準に定義されている。安価なオシロスコープは入力感度の幅が狭く、ミドルクラス以上になると入力感度の幅が広くなっている。機種によって入力感度が異なるため小振幅の信号を観測する際は注意が必要である。

オシロスコープは電子回路の動作を観測するために作られているため、生体計測など高感度測定を要求する用途では下記のようなアンプを用意する必要がある。

図27. 外付けの差動プリアンプADA400A

図27. 外付けの差動プリアンプADA400A

提供:テクトロニクス社

DCゲイン確度

オシロスコープは記録された電圧を読み取ることができるので、デジタルボルトメータのような使い方もできるが、DCゲイン確度が1~3%であるため高い測定精度を期待できない。

最近のデジタルオシロスコープにはデジタルボルトメータと同じような表示ができる製品があるが、製品の仕様書に書かれた測定精度で十分であることを事前に確認する必要がある。

垂直軸分解能

デジタルオシロスコープの多くは8Bit分解能のA/D変換器を搭載している。最近では12BitのA/D変換器を搭載して解析機能を向上させたモデルが登場している。また8BitのA/D変換器で得たデータを平均化処理することによってより高い分解のデータに変換する機能(ハイレゾ)を持った製品もある。

下記はテクトロニクス社のデジタルオシロスコープの垂直軸分解能である。

表2. テクトロニクス社の主なオシロスコープの垂直軸分解能
オシロスコープ型名 A/D変換器分解能 ハイレゾ分解能
TBS1000 8 -
TDS2000 8 -
TBS2000 8 16
MSO/DPO2000 8 -
MDO3000 8 11
TPS2000 8 -
THS3000 8 -
TDS3000 9 -
MDO4000 8 11
MSO/DPO5000 8 11
5シリーズMSO 12 16
6シリーズMSO 12 16

12Bitの高速A/D変換器を搭載したオシロスコープには有効ビット数という仕様が規定されている。有効ビット数はダイナミックなA/D変換器の特性を表現する指標である。有効ビット数を比較することによってノイズや歪の影響が判る。

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