技術情報・レポート

2017/09/13

デジタルマルチメータの基礎と概要 (第3回) 「DMM測定機能と確度仕様」

エンジニアにとって、いちばん身近でポピュラーな測定器のひとつは、DMM※1やマルチメータ、テスタなどと呼ばれているデジタルマルチメータでしょう。実験ベンチには必ず1台は在って、電圧や抵抗のちょっとしたチェックに使われます。受配電設備の現場でも、なくてはならない測定器のひとつです。この記事では、マルチメータが歩んできた歴史、動作原理、測定機能と確度仕様、使用上の注意、安全規格などについて、なるべく平易に4回にわたって解説していきます。

※1 DMM:Digital Multi Meterの略称で、読みはディーエムエム

デジタルマルチメータの基礎と概要(第1回) DMMの歴史と変遷
デジタルマルチメータの基礎と概要(第2回) DMMの原理、AD変換方式、ノイズの影響
デジタルマルチメータの基礎と概要(第4回) DMM使用上の注意と安全規格、精度維持管理


AC測定

DMMの交流測定は、被測定AC電圧に比例したDC電圧に変換して行います。変換回路は、AC-DC変換回路と呼ばれます。入力のAC電圧に比例したDC電圧はAD変換器でデジタル化されます。ACからDCの変換は、平均値整流方式と真の実効値※5変換方式が一般的です。

※5 True RMS(ツルーアールエムエス)とも呼びます。RMS: Root Mean Squareの略

メーカカタログを見て、「交流検波方式:平均値方式(平均値を実効値に換算)‐三和計器カタログの記載」のような表現で仕様が書かれていれば、これは平均値整流方式のDMMです。安価なDMMは、この方式が多いようです。平均値と実効値の関係を図6に示しますが、表3の記載にある正弦波の波形率(実効値と平均値の比)1.11を乗じて実効値に換算し、交流電圧の測定値を得ます。

いっぽう真の実効値変換方式のDMMは、整流回路の代わりにRMS-DC変換回路を用います。正弦波でなくても正しい変換を行うことで、真の実効値を求めることができます。RMS-DC変換回路には、トランジスタのLog特性を利用した対数変換(Log-Antilog)方式やデジタル・ダイレクト・サンプリング方式でデジタル演算して求める方式などがあります。第1回のDMMの歴史で紹介したキーサイト・テクノロジー社のTruevoltシリーズ34465Aは、後者の方式です。

真の実効値変換方式のDMMの測定で気をつけなければいけないことに、クレストファクタがあります。DMMの仕様よりも大きいクレストファクタの被測定電圧波形の場合には、大きな誤差が生じます。表2記載のように、クレストファクタ(波高率)はピーク値/実効値で定義されていて、正弦波で1.414、三角波では1.732ですが、図7のような波形ですと、クレストファクタは4前後にもなります。大きいクレストファクタ仕様を有するDMMは、少ない誤差でAC測定が可能です。

図6. ピーク値、実効値、平均値の関係

図6. ピーク値、実効値、平均値の関係

表3. 各種波形の実効値、波形率、波高率(クレストファクタ)

表3. 各種波形の実効値、波形率、波高率(クレストファクタ)

会員登録 (無料) が必要です

この記事は会員限定です。
続きをお読みいただくには会員登録が必要です。