技術情報・レポート

2020/10/27

直流電子負荷の基礎と概要 (第1回)

はじめに

スイッチング電源など直流の安定したエネルギーを供給する装置を効率的に評価するために1970年代初めに登場した直流電子負荷装置は、スイッチング電源の需要の拡大とデジタル回路の低電圧化による電源品質への要求の高まりによって直流電子負荷装置の需要は拡大を続けた。最近ではリチウムイオン電池や燃料電池を使う電気自動車や太陽光発電の開発が活発化してきたため、大容量直流電子負荷装置の需要が拡大している。電子負荷の世界市場は2億USドル以上といわれており、用途が拡大しているため年率5%成長が見込める。

直流電子負荷装置は広義の電源装置の一種である。広義の電源装置の機能は図1に示すように4つの象限で表現される。第1象限と第3象限のあるのが電気エネルギーを負荷に供給する狭義の電源装置(一般に電源装置という)である。第2象限と第4象限にあるのが電気エネルギーを電源から受け取る負荷装置である。すべての象限の動作が可能な電源をバイポーラ電源と呼ぶ。

図1. 広義の電源装置の機能を示す4象限図

図1. 広義の電源装置の機能を示す4象限図

今回は長年に渡って直流電子負荷装置の開発と販売に取り組んできた計測技術研究所の協力を得て直流電子負荷装置の概要、利用するときの注意点、内部構造、利用事例などを判り易く解説する。

負荷装置の種類と概要

さまざまな負荷装置

高機能な電子負荷装置が登場するまでは抵抗器やコンデンサ、インダクタなどの受動素子を組み合わせて直流や交流の電源装置を評価していた。現在でも受動素子を用いた負荷装置は使われている。現在では図2に示すようにさまざまな種類の負荷装置があり、用途に応じて使われている。

図2. さまざまな負荷装置

図2. さまざまな負荷装置

抵抗負荷装置

もっとも古くからある負荷装置で銅ニッケル線やニクロム線など抵抗を有する金属線をホーローなどに巻き付けて作られた抵抗器を用いた負荷装置がある。抵抗器に直流や交流の電気を流すと発熱するので大型の抵抗負荷装置を利用する場合は廃熱ができる環境を用意する必要がある。

また、大型の電気メッキ用の電源などを評価する際には金属抵抗ではなく、水などの液体抵抗を利用した負荷装置を使う場合がある。

図3. 抵抗負荷装置(RZ-Bシリーズ)

図3. 抵抗負荷装置(RZ-Bシリーズ 山菱電機)

提供:山菱電機

直流電子負荷装置(ドロッパー方式)

スイッチング電源やDC-DCコンバータを試験するときに使われる負荷装置である。高精度かつ高機能である特長を持つため、高性能な電源装置や電池の評価には必須のツールとなっている。直流電子負荷は電圧による分類と負荷容量による分類がされている。おおよそ30Vくらいまでは低電圧、500Vくらいまでが中電圧、それ以上が高電圧と分類される。またおおよそ10kW以上の直流電子負荷装置は大容量に分類される。

直流電子負荷装置には電源からのエネルギーを熱に変換するドロッパー方式と、交流の電源系統に回生するスイッチング方式がある。大型以外の直流電子負荷装置の多くはドロッパー方式となっている。

図4. ドロッパー方式の直流電子負荷装置(Load Stationシリーズ)

図4. ドロッパー方式の直流電子負荷装置(Load Stationシリーズ 計測技術研究所)

提供:計測技術研究所

高機能な直流電子負荷装置には端子間の電圧や電流を高精度に測定する機能があるため、電源を評価する際に外部にデジタルマルチメータを接続しなくても電圧値や電流値を測定することができる。また機種によっては直流電子負荷装置の内部にスイッチング電源のリップルノイズを測定する機能や、太陽電池の暴露試験をする際に必要なMPPT動作ができるものがある。

直流電子負荷装置(スイッチング方式)

大容量の電子負荷装置をドロッパー方式で作ると発熱が多くなることと、熱となったエネルギーを再利用することは難しいので、負荷のエネルギーを交流に変換して電力系統に戻す回生を行う仕組みを持ったスイッチング(回生)方式の負荷装置が使われる。

スイッチング(回生)方式はドロッパー方式より構造は複雑になるが、電気エネルギーの有効利用には適している。

一般に大型のDC-DCコンバータの試験などでは電源装置と組み合わせて試験装置が作られる。

図5. スイッチング(回生)方式直流電子負荷装置(Ene-phant(50kW)シリーズ)

図5. スイッチング(回生)方式直流電子負荷装置(Ene-phant(50kW)シリーズ 計測技術研究所)

提供:計測技術研究所

LEDモード対応電子負荷装置

LED素子を駆動する専用の電源装置や電源基板の生産が拡大したことによって登場した特定用途向けの電子負荷装置である。

LEDは半導体であるため負荷特性は抵抗とは異なる。そのためLEDと同じような挙動を示す電子負荷が作られた。LEDモード対応電子負荷装置を利用すると再現性のよい定量的なLED駆動電源の評価が可能となる。

図6. LEDモード対応電子負荷装置(3340Gシリーズ)

図6. LEDモード対応電子負荷装置(3340Gシリーズ 計測技術研究所)

提供:計測技術研究所

R.C.L負荷装置

交流電源装置を評価する際には力率を規定できる負荷が必要となるため、R.C.L負荷装置は受動部品である抵抗、コンデンサ、インダクタで構成される。パワーコンディショナなどの系統連系試験などの規格にはR.C.L負荷装置を使って試験をすることが規定されている。

図7. R.C.L負荷装置(総合負荷装置 UL/3ULシリーズ)

図7. R.C.L負荷装置(総合負荷装置 UL/3ULシリーズ 山菱電機)

提供:山菱電機

交流電子負荷装置

交流電源などを評価する際に使用する電子回路によって構成された負荷装置である。受動部品によって構成された抵抗負荷装置やR.C.L負荷装置に比べて高性能/高機能である。このため最近では抵抗負荷装置やR.C.L負荷装置から交流電子負荷への置き換えが進んでいる。

直流電子負荷装置と同じようにドロッパー方式とスイッチング方式がある。

図8. 交流電子負荷装置(32701シリーズ)

図8. 交流電子負荷装置(32701シリーズ 計測技術研究所)

提供:計測技術研究所