計測・測定の基礎 | 電力を測る
直流電力は、単純に「直流電圧×直流電流」の計算で求められますが、交流の場合は、よく知られているように負荷により電圧・電流間に位相差が発生しますので、位相を考慮して電力を求めます。
負荷Z が消費する交流電力(有効電力という)は、VxI cosθ で求められます。ここでの cosθ は力率と呼ばれています。すなわち、負荷は、VxI cosθ の電力を電源からもらって消費しているのです(図1、図2)。無効電力と皮相電力という言葉が出てきましたが、無効電力は負荷が消費しない電力、皮相電力は電源が送り出している電力です。
負荷が、コイルなど誘導負荷の場合は、電流の位相は遅れ、コンデンサなど容量負荷の場合は進みます。
今日、電力計の多くは、電圧・電流を同時にサンプリングし、デジタル演算で電力を計算する方式を採用しています(図4)。
電力は時間で正規化する必要がありますので、図5の様に演算で得られた瞬時電力波形(電圧X電流波形)から1周期、もしくは数周期を切り取り、電力計算をおこないます。
50Hz/60Hzの商用電源の消費電力を測定する場合は、電圧・電流のサンプリング・レートは高い必要はありません。一方、インバータの出力電力を測定する場合は、スイッチング周波数が10kHzにもなり、スイッチング電圧波形のエッジは急峻です。したがって、インバータ用につくられた電力計の1MS/s前後のサンプル・レートでは、エッジ部分の捕捉には充分と言いがたい速度です。
写真1、写真2に最新の電力計の製品例を示します。
図6の様にインバータを駆動するパルス幅変調された電圧波形は急峻な変化をします。しかし負荷となるモータは誘導負荷ですから『 Z=R+jωL 』と考えると周波数が高いほどインピーダンスが低い、つまり電流に含まれる高い周波数成分は小さくなることがわかります。電力=電圧×電流ですので、高い周波数成分がほとんど無ければ、サンプル・レートは高い必要性は無いことになります。
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