技術情報・レポート

2019/04/24

ローデ・シュワルツ ミッドレンジでIQ信号解析帯域幅400MHzのシグナル・スペクトラム・アナライザを発表 R&S FSVA3000/R&S FSV3000

ローデ・シュワルツ・ジャパン株式会社はスペクトラムアナライザのボリュームゾーンである、据え置き型ミッドレンジクラスの機種更新を続けている。2017年10月にエントリークラスのR&S FPL1000シリーズを発表したが、ミッドレンジの最上位モデルR&S FSVA/FSVシリーズの後継機としてR&S FSVA3000/FSV3000(周波数レンジ4 GHz~44 GHzの各5機種)を発表した。TechEyesOnline取材班は、2019年4月12日にローデ・シュワルツ・ジャパン本社で開催された新製品発表会に参加し、従来はハイエンドクラスでしかできなかったIQ信号の400 MHz帯域幅での解析や、他製品と共通のGUI設計など旧モデルとの違いを取材した。5G NR(※1)信号の測定、スマート・ジェネレータ・コントロールなどのデモと、今後の同社の計画についてお伝えする。

※1

5G NR:(NR:New Radio)5G(第五世代移動通信システム)用に3GPPが規定した新しい無線技術。

周波数レンジを最高44 GHzに引き上げ5Gに対応

ローデ・シュワルツ・ジャパン株式会社(以下ローデ・シュワルツ)は、「新たな潮流のスペクトラム解析をサポートしたR&S FSVA3000/FSV3000シグナル・スペクトラム・アナライザ(以下スペアナ)」の新製品発表会を開催した。同社は屈指の通信測定器メーカとしてハイエンドからミッドレンジ、ハンドヘルドまで多くのスペアナを品揃えしているが、ミッドレンジの最上位R&S FSVA/FSVの2シリーズ、10モデルの後継機を発表した。従来のモデルFSVA4、FSVA7、FSVA13、FSVA30、FSVA40は数字が周波数レンジ(4 GHz、7GHz、13.6 GHz、30GHz、40 GHz)を示していたが、新製品はFSVA3004、FSVA3007、FSVA3013、FSVA3030、FSVA3044の5機種で、最高44 GHzとなった(FSVも同様)。44 GHzは今年から世界中で運用が開始される「5Gの39 GHz帯で想定される最大43.5 GHzをカバーできる仕様」(ローデ・シュワルツ Test & Measurement プロダクト・マーケティング部 スペクトラム・アナライザ / シグナル・ジェネレータ担当 青野祐也氏)だ。

スペアナのラインナップ

スペアナのラインナップ
(クリックして拡大)

R&S FSV3030(上)

R&S FSV3030(上)
(クリックして拡大)

青野裕也氏(左)と関野敏正氏

青野祐也氏(左)と関野敏正氏

今回の新製品は「一部分のRFのアナログ性能がハイエンド機種と同等で、測定スピードはハイエンド機R&S FSW以上のため、同社スペアナの中では最速モデルとなった」(ローデ・シュワルツ マーケティング部 統括部長 関野敏正氏)。

同クラスでは初めてのIQ信号解析帯域幅400 MHzを実現

旧R&S FSVA/FSVのIQ信号解析は160 MHzまでの帯域幅だったが、これを大幅に向上させ400 MHzまたは200 MHzまで可能にした(オプション仕様)。これは他社製品と比較するとハイエンドクラスに匹敵し、基本性能が同じ同クラスのモデルとしては破格の性能といえる。IQ信号解析時には通常のスペクトラム測定とは異なり、広帯域の信号を通す必要がある。そのためYIG(※2)バイパス・オプションでバンドパスフィルタをパスする。これはIQ信号解析が可能なスペアナでは通常は標準搭載されている機能だが、「旧モデルのFSVでは7 GHz以上ではYIGをバイパスすることができなかった(図1 薄い青色)。この点も今回大きく改善された性能」(青野祐也氏)だ。

※2

YIG:(Yttrium Iron Garnet)イットリウム、鉄、ガーネットによる素子は、広範なRF周波数レンジで共振するため、スペアナ、シグナルアナライザの内部でフィルタとして使用されている。

図1 IQ信号解析帯域幅の新旧比較

図1 IQ信号解析帯域幅の新旧比較
(クリックして拡大)

EVM値1%と優れた操作性

同製品はRF性能が優れていることも特長である。5G NRの変調解析ではEVM(Error Vector Magnitude)値1%が1つの指標になっているが、「ミッドレンジ製品でありながら、28 GHz帯、帯域幅100 MHzでEVM値は1%以下を実現」(青野祐也氏)している。また、デモでは優れた操作性を実演した。スマートフォン感覚で操作ができるWXGAスクリーンの画面はもちもん、シーケンサ機能をONに設定すると、測定したい4つの画面が一度に画面に表示され、自動で順番に測定を行う。

5G NRの変調解析(EVM値1%以下)

5G NRの変調解析(EVM値1%以下)
(クリックして拡大)

WXGAスクリーン

WXGAスクリーン
(クリックして拡大)

シーケンサ機能で4つの測定を行う

シーケンサ機能で4つの測定を行う
(クリックして拡大)

バーチャルなワンボックス機器を実現する、スマート・ジェネレータ・コントロール機能を使うと、LAN接続されたSG(デモではR&S SMW200A)の周波数とレベルをスペアナ画面で設定することができる。スペアナの周波数など設定変更時に、SGを操作して出力設定を変える手間が省ける。「スペアナのGUIでSGを操作する機能は今後他の機種群にも搭載していく」((青野祐也氏)計画である。

自動計測ではSCPI(※3)言語でプログラムするが、作成をアシストする機能がSCPIレコーダである。スペアナ画面でSCPIレコーダをONして操作すると、操作に沿ったSCPIコマンドが自動作成されるので、コマンドを探してプログラムを作成する必要がない。以上のような優れた操作性はすべて標準搭載されている。

※3

SCPI:(スキッピ Standard Commands for Programmable Instruments)自動計測に使用される計測器のコマンドを統一して1990年に制定された。1999 年改訂のIEEE488.2-1999 規格に含まれている。

SGの設定をする画面

SGの設定をする画面
(クリックして拡大)

自動作成されたSCPIコマンド

自動作成されたSCPIコマンド
(クリックして拡大)

オプション例と5G向けの特長

オプション例と5G向けの特長
(クリックして拡大)

オプションについては、5Gだけでなく幅広い市場向けのミッドレンジ製品のため、各種が用意されている。価格帯は本体、オプションともに旧R&S FSVA/FSVとほぼ同じで、R&S FSV3000は価格270万円から、R&S FSVA3000は350万円からとなっている。具体的に5Gの変調解析では、同社ハイエンドのR&S FSWに比べて25%ほど安価になる(28 GHz変調解析、400 MHz帯域幅の場合)としている。