コンパクトでポータブルでありながら、3種類の計測器を搭載しているネットワーク・アナライザ R&S ZNL | 技術コラム|TechEyesOnline|計測器専門の情報サイト

技術コラム

2017/11/06

コンパクトでポータブルでありながら、3種類の計測器を搭載しているネットワーク・アナライザ R&S ZNL

RF測定器に強みをもつ、ローデ・シュワルツ・ジャパン株式会社(以下、ローデ・シュワルツ)から、3-in-1 allrounder コンセプトのネットワーク・アナライザ R&S®ZNLが10月2日に発表された。3-in-1 allrounder コンセプトとは、ネットワーク・アナライザにスペクトラム解析オプション、パワーセンサを追加することで、3種類の計測器を搭載できることである。今回は他社にはないユニークなR&S®ZNLをローデ・シュワルツのマーケティング部 統括部長 関野敏正氏に紹介してもらった。

バナー画像

3台の計測器を1台に凝縮

なんと言ってもR&S®ZNLの最大の特徴は、フル2ポートのネットワーク・アナライザでありながら、スペクトラム・アナライザ(オプション)と、パワーセンサ(オプション)によるパワーメータ機能を搭載可能なところだ。スペクトラム・アナライザは、専用のハードウェアを搭載することにより、同日に発表された、R&S®FPL1000とほぼ同等な性能と機能を有する。R&S®FPL1000で搭載可能なオプションのほとんどが、このR&S®ZNLに搭載可能なことも驚きだ。ハードウェア的に独立していて、マルチビュー(MultiView)により動作しているモードを一目で確認することができ、モード切り替えも画面をタッチするだけで簡単に行うことが可能だ。

パワーメータ機能は、R&S®NRPシリーズのUSBパワーセンサと組み合わせることで、複雑な調整(ゼロ調整や校正等)をする必要なく、すぐにパワーセンサの仕様通りの精度で測定可能だ。

マルチビュー

MultiViewはモードを一目で確認できる。画面例は、スペクトラムアナライザとネットワークアナライザ組み合わせ表示。

各計測器(モード)の特長

ネットワーク・アナライザ

代表値で130 dBのダイナミックレンジ、出力パワーは最大+3 dBm(代表値)の実力を持つ。この機能により、仕様要求の高いバンドリジェクションフィルタの測定も可能だ。

また、高確度を実現するために、10 kHz帯域幅で代表値0.0005 dBと非常に低いトレースノイズを実現している。この低いトレースノイズにより、より広いIF帯域幅においても正確で安定し、再現可能な測定が可能だ。また優れたトレース安定性を維持しながら高速な測定を実現している。

バンドリジェクションフィルタの測定例

バンドリジェクションフィルタの測定例

スペクトラム・アナライザ(オプション:R&S®ZNL3-B1)

スペクトラム解析として、基本構成でもあらゆる用途に対応する。チャネル・パワー、ACLR、S/N比、スプリアス、3次インターセプトポイント、AM変調などの多くのスペクトラム解析が可能だ。さらにオプションR&S®FPL1-K7を実装することにより、振幅、周波数および位相変調信号に対応した、アナログ変調解析機能が使用可能になる。一方、デジタル解析は、オプションR&S®VSE-K70が用意されている。シングル・キャリア信号の解析や、IQ信号のI信号とQ信号の振幅表示および、位相表示にも対応している。また、このクラスでは非常に広い40 MHz帯域幅の信号解析が可能だ(オプションR&S®FPL1-B40)

スペクトラムアナライザモード

スペクトラムアナライザモード

パワーメータ(オプション:R&S®FPL1-K9)

R&S®NRP パワーセンサと組み合わせて使用することで、振幅範囲を-67 ~ +45 dBm、110 GHzまでの周波数範囲をカバーし、高精度なパワー測定ができる。

パワーメータとしての使用も可能

パワーメータとしての使用も可能

共通部分

スマートフォン同様な静電式タッチスクリーンを搭載し、直感的に操作が可能だ。そのスクリーンは、10.1インチ(1280×800ピクセル解像度)と大型で、正確に操作可能であることはもちろんのこと、測定信号を詳細に確認することが容易にできる。また、オペレーティングシステムには、最新のWindows 10が採用されている。


コンパクトで軽量な1BOX測定器、場所を選ばずに測定ができる

奥行きが小さくなった

奥行きが小さくなかったことにより、測定作業スペースが広がった

通常ネットワーク・アナライザでは、正面に測定ポートがありデバイス等の測定では正面側に作業スペースを必要とする。R&S®ZNLは、奥行きが235 mmとコンパクトな筐体設計となっているため、狭い作業スペースでも余裕をもって測定が可能だ。DUT(被測定物)と接続する同軸ケーブルは、低損失のセミフレキシブルケーブルを使うケースも多く、ケーブルの曲げに制限があるので、DUTが小さくても意外と測定器の前のスペースを必要とする。ユーザとってはありがたい設計だ。

また、ベンチトップタイプでありながら、6~8 kgと非常に軽量だ。据え置き型としてではなく、例えば実験室では、使用者と一緒に簡単に場所を変えて測定することが出来る。3つの測定器があるので、複数の人で使うなど重宝しそうだ。

このコンパクト・軽量を生かし、バッテリ駆動(オプション)で野外での測定も可能だ。バッテリは最大2つ実装でき、ホットスワップが可能なため、突然のバッテリ切れや、残量を心配することなく使用可能だ。さらには、DC12V / DC24V駆動のオプションも用意されており、車載でのRF測定などで有用だ。

優れたRF性能

ローデ・シュワルツでは、エコノミークラス(その他ハイエンド/ミドルクラスがある)に位置するR&S®ZNLは、クラス最高峰の性能を有し、ミドルクラス相当のRF性能を有するとのこと。同コンセプトで同社から現在も販売されているR&S®ZVLと代表的なスペックを比較してみたのが、下記表だ。

ネットワーク・アナライザ機能の主な仕様
モデル 新製品 R&S®ZNL R&S®ZVL
周波数レンジ 5 kHz ~ 3/6 GHz 9 kHz ~ 3/6/13.6 GHz
ダイナミックレンジ 120 dB(仕様)
130 dB(代表値)
115 dBm(仕様)
123 dBm(代表値)
出力パワー 0 dBm 0 dBm
測定スピード※1 9.6 ms(100 kHz IFBW) 50 ms(100 kHz IFBW)
※1・・・201ポイント、2ポート校正、200 MHzスパン

同様に、スペクトラム・アナライザ機能の主な仕様を比較した。

スペクトラム・アナライザ機能の主な仕様
モデル 新製品 R&S®ZNL R&S®ZVL
周波数レンジ 5 kHz ~ 3 GHz 9 kHz ~ 3/6/13.6 GHz
SSB表示雑音※2 -108 dBc/Hz -96 dBc/Hz
表示平均雑音レベル※3 -167 dBm@2 GH -163 dBm@1 GHz
解析帯域幅 40 MHz 20 MHz
※2・・・10 kHzオフセット ※3・・・プリアンプON、代表値

R&S®ZVLは、新製品R&S®ZNLの前の世代のモデルとなるが、周波数帯域が13.6 GHzまでカバーされているのが特長で、まだ現行製品として販売していくとのこと。新製品R&S®ZNLのスペクトラム・アナライザ周波数帯域は、将来的には6 GHzを超える周波数まで拡張予定とのことだ。

校正

校正キット

校正のデモンストレーションで使用した手動校正キット(R&S®ZV-Z135)。「オープン」「ロード」「ショート」「スルー」を備えている。

ネットワーク・アナライザは、計測器メーカ各社から用意されている基準器を用いて、ネットワーク・アナライザ自身が持つ誤差を取り除いて、初めて仕様通りの高い精度のネットワーク・アナライザとして使用することが出来る。この処理のことを校正と呼び、基準器は、校正キット(Calibration Kit)などと呼ばれている。校正キットには、手動(機械式)校正キットと、自動(電子式)校正キットに分けることが出来る。ローデ・シュワルツからも当然2種類の校正キットが用意されている(R&S®ZV-Z1xx、R&S®ZN-Z15x/5xなど)。

今回は、手動校正キットでデモを見せてもらった。校正ウィザードを使い、簡単に行っていた。ウィザードを見れば、手順をひとつひとつ確認しながら行えるので、R&S®ZNLをはじめて使うときでも迷わず、正確に校正を行うことが可能だ。また、他社メーカの校正キットを使用した場合のウィザードも用意されているので、既に保有している資産(校正キット)を使うことも出来る配慮がされている。

汎用的なRF計測器として

国内のネットワーク・アナライザのマーケットサイズは、部品メーカが多いこともあり、スペクトラム・アナライザの市場とあまり差がないという。部品メーカの生産ラインでは据え置き型の高速なハイエンドのネットワーク・アナライザを求める傾向があるが、R&S®ZNLは、特定の市場に絞った製品ではなく、幅広ユーザに使っていただきたいとのこと。

繰り返しになるが、R&S®ZNLの最大の特徴は、3台の計測器が1台に搭載していること、さらにDC電源やバッテリ駆動が可能なことだ。これらの特長を生かして、限られた予算の研究機関・教育機関であれば、1台で複数の測定器を購入できる。車載でのRF計測を必要とするお客様であれば、DC駆動が可能、これまで複数の計測器を持ち出していたメンテンス業務(航空機やヘリコプターの整備)であれば1台で済む。野外評価(無線設備の設置)ではバッテリ駆動が可能など、幅広いお客様使っていただきお客様の課題を解決していきたいと関野氏が語ってくれた。

ローデ・シュワルツ 関野氏

新製品R&S®ZNLの実機操作をしながら、製品紹介をしてくれた ローデ・シュワルツ・ジャパンの関野敏正氏

1台に3台のRF計測器を凝縮した1BOXの計測器は業界唯一となるので、さまざまな用途に柔軟に対応できる魅力ある製品だ。


R&S®ZNLの製品情報、カタログダウンロードはこちらから

制作協力:ローデ・シュワルツ・ジャパン株式会社 ホームページはこちら