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計測器の形名・・・第1回「形名とは」

計測器は商品なので、必ず名前があります。名前には形名(かためい)、品名(ひんめい)などがあります。本稿は「計測器の形名」について考察するコラムです。第1回は形名とは何かから始まり、計測器の形名の例、命名の法則を紹介します。形名はそのメーカが自由に、独自に決めます。形名を眺めながらそのメーカの製品群を思い浮かべ、形名の付け方について考えます。各社の形名の意味は公開されませんから、製品一覧や新製品から推測するしかありませんが、形名にはそのメーカの特長が現れていると思います。

形名とは

定義を「メーカが商品(仕様)を特定するために設定する文字列(番号)」とします。呼称はメーカによって様々です。形名、型名、型番、型式、品番、モデル番号、モデル名。具体的にメーカの表現をホームページや製品カタログで調べると、横河計測は形名、テクトロニクスは型名です(テクトロニクスでは製品のことを「MSO3000型」というように、形名の後に「型」とつける表記を良くしています)。パソコンの例では、メーカホームページでは、富士通は型名、日本電気は型番、と表現しています。大企業では呼称が複数ある場合もあるようです。数字だけの番号であることも多いので「型番」や「品番」と呼ぶメーカもあります。「計測器については型名と形名が同じ割合で多い」と筆者は感じています。型名か形名かは、各メーカが自由に決めるのでどちらが正しいということはありません。メーカによって呼称が異なるので、一般的には「モデル番号」というと無難かもしれません。本稿では「形名」で、以下進めます。

図1 テクトロニクス MDO3000

図1 テクトロニクス MDO3000

余談ですが、辞典で「形名」を調べると「形名:(読み方:けいめい)刑名もしくは型名の異表記・別表記」とありましたが、本稿では「形名:(読み方:かためい)商品のモデル番号として広く普及している呼称。型名とも表記される」として進めます。

計測器の形名

計測器に限らず、商品には形名があります。多くは英字と数字を組み合わせた文字列で、数字だけの場合もあります。計測器の形名は大きく2種類あり、数字が主のものと、頭が英字で数字が続くものがあります。

1 数字が主の形名

従来の計測器の形名は数字だけで4文字の場合が多かったです(数字を文字として使っているので4桁ではなく4文字と表記しました)。表1に例を示します。数字の後に「-」(ハイフン)やブランクで2文字の数字を付けるメーカがあります(日置電機はハイフンを採用、横河計測は長らくブランクでしたが、最近その法則の形名をやめました)。

数字の後(形名の末尾)に英字の大文字を付けて改良版(エンハンスド・モデル)を識別するメーカもあります(キーサイト・テクノロジーやテクトロニクス、アンリツなど)。表1の3325Bは3325Aを改良したモデルです。1980年代から1999年まで発売されたキーサイト・テクノロジーのベストセラー、8753ネットワークアナライザは、8753Aで始まり、8753B、8753C、8753Dがあり、最後のモデルは8753Eや8753ESでした。

表1 数字を使った形名の例
形名 品名 計測器メーカ
3325B シンセサイザ/ファンクションジェネレータ キーサイト・テクノロジー
4502 精密電力増幅器 エヌエフ回路設計ブロック
7101 30 デジタルオシロスコープ(DLM2054) 横河計測
9290-10 クランプオンアダプタ(クランプ電流計のアクセサリ) 日置電機

図2 エヌエフ回路設計ブロック 4502

図2 エヌエフ回路設計ブロック 4502

形名(番号)の意味や発番法則について、カテゴリー(機種群)が豊富な総合計測器メーカであるキーサイト・テクノロジーを例に説明します(表2)。数字4文字(または5文字)の大変シンプルな形名です。形名は数字を使い機種群を識別していますが、数字は数ではなく文字列として意味を持たせています。そのため数字としての桁ではなく頭からの文字に意味があります。頭の3文字が機種群を意味し、場合によってはその3文字を含んでシリーズと呼びます。たとえば1650シリーズと呼称して、1650A、1651A、1652A・・・というように4文字目の数字を使って順番に製品の形名を発番していきます。数字が足りなくなることが予想される場合は5文字目も使い、はじめから5文字の形名の機種群もあります。54100Dなど、2005年頃までの同社のオシロスコープは(原則)数字5文字の形名でした。

表2 キーサイト・テクノロジーの形名の例(1990~2000年頃)
頭の数字 数字の意味 製品の例
形名 品名 概要
165 ~ 169 ロジックアナライザ 1650A ロジックアナライザ 計測器本体(スタンドアロン)
16500C ロジックアナライザ メインフレーム(測定部は別モジュール)
16510B ステート/タイミングカード 16500用測定モジュール(ボード)
16521A パターン発生器カード
1663E ロジックアナライザ 計測器本体(スタンドアロン)
16700B ロジック解析システム メインフレーム(測定部は別モジュール)
16701A ロジック解析システム 拡張フレーム
1680A ロジックアナライザ 計測器本体(スタンドアロン)
16823A ロジックアナライザ
1693A ロジックアナライザ
541 ~ 548 オシロスコープ 54100D ディジタイジングオシロスコープ
54110D ディジタイジングオシロスコープ 0から順番に1,2・・と発番している。
54111D ディジタイジングオシロスコープ
54112D ディジタイジングオシロスコープ
54832B ディジタルオシロスコープ
54855A ディジタルオシロスコープ 2005年発売の広帯域モデル

2 英字と数字の形名

数字と英字を使った例は、頭が英字で、数字4文字が続くパターンが多いです。英字は2文字のことが多いですが、1文字や3文字もあります(キーサイト・テクノロジーは1文字、テクトロニクスは3文字が多い)。また数字は2文字や、5文字のときもあります。英字と数字の間に「-」(ハイフン)があるメーカもあります(安藤電気はAE-5105というようにハイフンがありましたが、ある時期からAE5105とハイフンのない形名に変更しました)。数字の後にさらに「-」で英数字を続ける場合もあります。また数字の後(形名の末尾)にA、B、C・・などをつけて改良モデルを表すメーカがあるのは前述と同じです。キーサイト・テクノロジーは元々「数字と末尾の英字」のパターンが主でしたが(表2)、1990年頃から頭に英字を付けた形名が増え始め(E4200Aなど)、現在では表3のように頭が英字1文字の製品の方が多くなりました。

表3 英字と数字の形名の例
頭の英字の数 製品の例
形名 品名 計測器メーカ
1文字 N5225B ネットワークアナライザ キーサイト・テクノロジー
P5122 高電圧プローブ テクトロニクス&フルーク社
2文字 AQ6360 光スペクトラムアナライザ 横河計測(旧安藤電気)
CA700-M-01 圧力キャリブレータ 横河計測
CM4375-50 クランプメーター(クランプ電流計) 日置電機
RX4713 電流三相 保護リレー試験器 エヌエフ回路設計ブロック
SG-4262 任意波形/ファンクション・ジェネレータ 岩崎通信機
SH-3000WP デジタル防水はかり エー・アンド・デイ
UV-16 チャージアンプ(振動測定器) リオン
ZX-1600LA 直流安定化電源 高砂製作所
3文字 MDO4104C オシロスコープ テクトロニクス&フルーク社
PSW-360L80 ワイドレンジ直流安定化電源 テクシオ・テクノロジー
RTA4004 デジタル・オシロスコープ ローデ・シュワルツ
TOS5301 AC/DC耐電圧試験器 菊水電子工業

図3 キーサイト・テクノロジー N5225B

図3 キーサイト・テクノロジー N5225B

国産の大手計測器メーカ、アンリツの形名は原則、頭2文字が英字、その後に数字4文字が続きます(4文字でないものもあります)。2文字目に意味があるようです(表4)。

表4 アンリツの形名の例
2文字目 文字の意味 製品の例
形名 品名 カテゴリー(機種群)
A パワーセンサ(RF&光) MA2442D パワーセンサ 高周波電力計
MA24440A USBピークパワーセンサ
MA9333A 光パワーセンサ 光測定器
F カウンタ MF1603A 周波数カウンタ カウンタ
L パワーメータ(RF&光) ML2407A パワーメータ 高周波電力計
ML910A 光パワーメータ 光測定器
G 信号発生器 MG3710E ベクトル信号発生器 信号発生器(通信)
S スペクトラムアナライザ、
ネットワークアナライザ、
光スペクトラムアナライザなど
MS2026C ハンドヘルドベクトルネットワークアナライザ ネットワークアナライザ
MS2690A シグナルアナライザ スペクトラムアナライザ
MS555B ラジオコミュニケーションアナライザ 無線/移動体測定器
MS8604A ディジタル移動無線送信機テスタ
MS9740B 光スペクトラムアナライザ 光測定器
U ユニット MU120118B 10ギガビットイーサネットモジュール IP関連測定器
X ソフトウェア MX703720A LTE基地局自動測定ソフトウェア 無線/移動体測定器

図4 アンリツ MG3710E

図4 アンリツ MG3710E

おわりに

計測器の形名は、以前は数字だけの場合が多かったのですが、最近は先頭に英字を付けて、その後に従来から使ってきた数字を使うメーカが増える傾向です。特定の機種群だけの専業ではなく、広くラインアップしているメーカは、機種群(製品名)の略記を先頭の英字にして意味を持たせるようになってきていると感じます。MSO(ミックスド・シグナル・オシロスコープ)やIR(Insulation Resistance、絶縁抵抗)などの略記が形名に使用されるようになりました。次回はオシロスコープの形名についてお話しします。各計測器メーカが相談していないのに、共通の法則で形名を付けるようになった特異な形名です。


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