計測・測定の基礎 | 電圧・電流を測る
写真1. デジタルマルチメータの製品例
フルーク
80シリーズⅤ
キーサイト・テクノロジー
34461A
変化しない、変化のスピードが遅い電圧や電流、抵抗を確度高く測定するにはデジタルマルチメータ(DMM)が使われます。表示桁数も多いので高い確度で測定できるイメージがありますが、何を測るのか、また測る対象によっては予想をしない誤差を発生しますので注意が必要です。
測定原理を理解するとより正確な測定ができます。
図1. DMMの基本は直流電圧測定器
DMMの基本は直流電圧測定です。内部の高分解能ADコンバータにより、DC電圧値が測定されます。交流電圧測定ではACをDCに変換するため多くは実効値変換回路が採用されています。歪んだ信号の実効値の測定できますが、DC電圧測定より確度は低下します。また測定できる周波数の制限があります。
電流測定では回路直列に抵抗(シャント抵抗)を挿入し電流を電圧に変換して測定しますので、シャント抵抗の精度が測定確度に大きく依存します。またこのシャント抵抗値が回路の抵抗に対して無視できない場合、回路の動作に影響を与えてしまいます。
簡単な例で見てみましょう。
図2.DMMによる電圧・電流測定
電池に抵抗負荷を接続して、負荷にかかる電圧と流れる電流を測定します。
図3.DMMの電圧・電流入力部
電圧測定での入力インピーダンスは10MΩですので、回路に与える影響は無視できます。
DC電圧入力端子の入力インピーダンス仕様例
入力抵抗:
0.1V、1V、10Vレンジ 10MΩまたは >10,000MΩを選択可能
一方電流測定ですが、回路に直列に挿入された電流入力端子のインピーダンスはゼロが理想ですが、この場合には5Ωになります。
DC電流入力端子の入力インピーダンス仕様例
DC電流:
シャント抵抗 5Ω(10mAおよび100mAレンジ)、0.1Ω(1Aおよび3Aレンジ)
負荷抵抗値が5kΩならば入力インピーダンス5Ωの影響は0.1%ですが500Ωの場合は1%にも及び、本来の誤差を大きく超えたものになります。
電圧測定においても、稀に内部インピーダンスがMΩオーダーの回路の測定することがあります。そうなると電圧測定時の入力インピーダンス10MΩでは全然足りません。DMMの上位機種では入力インピーダンスが10MΩ/ >10GΩ切替えのものがあります。
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