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年間50回超! 有名企業から引く手あまたの人気講師に聞く(2/2)

デジタルの時代ですが、アナログを極めていただきたい


Q:長年、計測業界に関わってこられた経験から、昔と今を比べて、現在のエンジニアを取り巻く環境の変化にお気づきの点はありますか?
シミュレータに対する依存度が高まっています。「シミュレーションで確認して、正常に動作しているのに、何故測定による検証が必要ですか?」と、ある課長さんに言われて驚いたことがあります。この方は大きな勘違いをしています。「シミュレーションで設計して、物が完成しました。なのに何故動かないのだろう、不思議だ」というエンジニアに会ったことがあります。シミュレータは100%ではありません。ある程度の所までしかできません。特に最近は高速化(信号のスピードが速くなる)の傾向です。これもシミュレーションでは細かいところまではできない要因のひとつです。実測をして、自分なりにシミュレーションの確度を高めていくことが求められます。料理の塩加減ではありませんが、ここは少しこうするとより現実に近づくな、という感覚です。実験を通してシミュレータの確度を高めていくことが必要です。


Q:これからの日本のものづくりを支える、若手エンジニアの方たちにメッセージをお願いします。
これからの若いエンジニアに言いたいのは、「デジタルの時代ですが、アナログを極めていただきたい」ということです。例えば、高速デジタル信号とはすべてアナログなのです。ノイズ、グラウンド、EMIと全部アナログの要素です。”アナログ技術を極めていただきたい”と考えています。

パワーエレクトロニクスもアナログです。電気の基本はアナログです。昨今は、デジタルの方向にどんどん走っていって、SE(システムエンジニア)という方は、ほとんどデジタルの世界です。でも、IoTなど低消費電力ではノイズとの戦いですから、これもアナログの世界です。諸先輩が書かれた書籍、ノイズに関する本、アースに関する本がまだ残っています。こういった本で勉強してほしいです。

一例をあげると伊藤健一先生の本です。東京大学卒で東芝に入り、定年で東京農工大学に教授としてこられました。私の恩師です。ノイズ関係では権威の方で、Webで検索するとたくさん出てきます。もう亡くなられていますが、非常にわかりやすい本です。数式が一切でてこない、絵解きの解説です。ノイズとは? インピーダンスとは? とわかりやすい解説となっているので、特に若手エンジニアには購読をお薦めします。オシロスコープはデジタルですが、測る対象はアナログです。

余談ですが、オシロスコープのプローブが使用前に調整が必要なことは、40歳以上のマネージャークラスなら常識でしょうが、思った以上に知らない方が多い。このような作法・使い方が常識では無くなってしまっているのが、根本的におかしいと私は思っています。マニュアルは読まないといけません。マニュアルが付属されない製品も増えましたが、読んだらプローブ調整のことは、ほとんどのオシロスコープのマニュアルには記載されています。ぜひとも参考にしていただきたいと思います。
ーーーーーーーーーーおわり


渡邊 潔 氏 略歴

小学校5年生でラジオの製作。アマチュア無線、オーディオなど電子工作が趣味。 東京農工大学 電子工学科を卒業。
ソニー・テクトロニクス株式会社(現 株式会社 TFF テクトロニクス社)入社。 電子計測器のサービス部門に3年間勤務後、デジタルオシロスコープの奔りというべきA/Dコンバータ・システム製品のサポートを担当。 以後、技術営業、アプリケーションエンジニア、マーケティングなどを経験。
2008年、横河レンタ・リースに入社。 2015年よりコンサルタントとして現在に至る。

渡邊 潔 氏の技術セミナー

・『オシロ&プローブ活用手法』 ・『高速化するデジタル信号の評価』 ・『電子計測の基礎』 ※理工系新入社員向け
Agenda&Text_sampleダウンロード:『 波形観測の基礎・基本計測器の使いこなし』【会員のみ】(PDF)

渡邊 潔 氏の推薦書籍

全て伊藤 健一 著
・『アース回路-こうすれば電子回路は正しく働く』 日刊工業新聞社刊 絶版(中古のみ) ・『アースのはなし』 日刊工業新聞社刊 ・『インピーダンスのはなし』 日刊工業新聞社刊 ・『イラストでよむノイズとEMCのはなし』 日刊工業新聞社刊

渡邊 潔 氏の著作書籍

・天野 典 (渡邊氏のペンネーム)著『ディジタル・オシロスコープ実践活用法』 CQ出版社刊 ⇒こちら


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