2023/10/17
季節のバナー画像シリーズ【Vol.41】巾着田の曼殊沙華
“TechEyesOnline”のバナー画像として採用した取材先をご紹介していくシリーズです。
うつろい変わりゆく季節感や日本の四季折々を、TEO取材班がお届けします。第四十一回は、“巾着田の曼殊沙華”です。
巾着田曼殊沙華公園(埼玉県日高市)
「曼殊沙華 どれも腹出し 秩父の子」金子兜太 ※1
たくさんの曼珠沙華が咲く畑径を、秋になってもお腹を出して元気いっぱいに遊んでいる秩父の子供たちの情景が目に浮かぶ。
句の明るさとは裏腹に、曼殊沙華は球根に毒があることから ※2、死人花、地獄花、幽霊花などと呼ばれ、昔は墓場に咲く不吉な花だとして遠ざけられていたこともあったらしい。
埼玉県日高市の巾着田曼殊沙華公園 ※3は、500万本の曼殊沙華が咲き誇る日本最大級の群生地として有名だ。
高麗川の流れに沿って自然に作られ、その円を描いたような地形が巾着に似ていることから巾着田(きんちゃくだ)※4と呼ばれるようになった。曼殊沙華が群生した理由については、巾着田の内側の耕地に、河川の増水などで上流から球根が流れてきて漂着したものと考えられている。
見渡す限り燃えるような赤色は、「情熱」という花言葉に相応しく、強い生命力を感じさせる。
秋を代表する花となった曼殊沙華を見ようと押し寄せる観光客の姿からは、昔は相手にもされなかった花だったとは想像もつかない。
※1:金子兜太(かねことうた)1919-2018:昭和を代表する俳人。元現代俳句協会名誉会長。埼玉県中西部の小川町の生まれで、曼殊沙華の句は1955年発表で埼玉県西部の皆野町にある水潜寺に句碑がある。 ※2:曼殊沙華の毒:曼珠沙華には鱗茎(球根)にアルカロイドの一種でリコリンという毒がある。花茎の汁に触れた場合、皮膚炎を起こす可能性がある。 ※3:巾着田曼珠沙華公園:直径約500メートル、面積約22ヘクタールの川に囲まれた平地に、菜の花やコスモスなど季節ごとに花々が咲き、中でも秋の曼珠沙華群生地は辺り一面が真紅に染まり、まるで赤いじゅうたんを敷き詰めたような美しさ。昭和40年代後半に巾着田の用地を日高町が取得し、昭和50~60年代に草薮であった河川敷地の草刈りを始めた。生息していた曼珠沙華の姿が見られるようになり、群生の規模が予想外に大きく、報道機関等が美しさを紹介して、今では観光名所となった。 ※4:巾着田:古代朝鮮時代、高句麗から渡ってきた人が定住し、高麗郷と呼ばれた(最寄り駅の西武秩父線の駅名に「高麗」が残る)。近くを流れる高麗川が大きく蛇行することで形成された巾着のような形状の平地から、巾着田となった。曼殊沙華は、高麗川から流れついた球根が自生し群生したのではないかと言われている。 【曼殊沙華について】
・生育はチューリップなどと同じく、球根から育てるので、比較的簡単に増やせる。ただし、球根からだと咲くまでには何年かかかる。また、水はけが良い、日当たりが良い、などの環境でないと球根から上手に発育しない。密集させず間隔をあけて植えるのが良く、群生させるには管理が必要。巾着田曼殊沙華公園は「巾着田管理事務所」が常設され、春の菜の花、桜から秋の曼殊沙華、コスモスと年間で楽しめる。 ・曼殊沙華の別名ヒガンバナ(彼岸花、石蒜、学名 : Lycoris radiata) ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草。学名からリコリス・ラジアータとも呼ばれる。原産地は中国大陸。日本では帰化植物に分類される。分布は北海道や東北地方を除く日本全国。秋の彼岸(9月頃)に花茎の先に強く反り返った鮮やかな赤い花を咲かせ、秋の終わりに葉が伸びて翌年の初夏に枯れるという、多年草としては珍しい性質。地下の鱗茎(球根)に強い毒性がある有毒植物で、かつては救荒作物として鱗茎のデンプンを毒抜きして食べられた。
巾着田の曼殊沙華
【お問い合わせ】
巾着田 公式ホームページ
TEO取材班
(取材日:2023年9月29日)
(取材日:2023年9月29日)
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