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パワーレールプローブとオシロスコープで真の電源ノイズを捉える キーサイト・テクノロジー 電源ノイズアナライザ

キーサイト・テクノロジー合同会社(以下、キーサイト・テクノロジー)から、オシロスコープをベースにした電源ノイズの観測・解析に最適化されたソリューションが提供されている。これは、主に回路基板上の電源ノイズ測定に着目をあてたもので、電源ノイズアナライザと名を打っている。今回は、キーサイト・テクノロジーでアジアパシフィック統括マーケティング部門のマネージャーである堀部勝義氏に電源ノイズアナライザの特長や問題解決事例について話をきいた。

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デジタル回路における回路基板のトラブルの8割は電源起因

現在のデジタル回路では、USB、PCI-Exprees、HDMIなどに代表されるような高速デジタル伝送技術の採用が増えている。このようなアプリケーションに対応したLSI/FPGAなどは、クロックの高速化と同時に電源電圧が低くなってきている。

キーサイト・テクノロジーの堀部氏によれば、90年代までのLSI/FPGAの電源電圧は5V~3.3V程度が主流であったが、現在では1.5~1.0V以下にまで電源電圧が低くなり、電源電圧の許容マージンも狭くなってきたそうだ。例えば、DDR3メモリでは供給するDC電源電圧は1.5Vであるが、その許容マージンはわずか±15mVしかない。電源電圧の低電圧化が進むと負荷変動に大きく影響を受けやすくなりトランジェントノイズなどの発生要因になる。また、デジタル回路ではスイッチング電源が一般的だが、スイッチングノイズなどのノイズ発生源も多い。消費電流量が増加してきていることも見逃せない。

キーサイト・テクノロジーでは、電源電圧の低電圧化を背景にした電源周辺のトラブルが増えてきたことに注目している。回路基板のトラブルの8割が電源に起因しているのではないかと分析をしている。このため、電源ノイズを正確に把握することがトラブル解決の第一歩であると話してくれた。

トラブル要因

デジタル回路における電源トラブル増加の背景
※出典:キーサイト・テクノロジー

従来の電源ノイズ測定の課題

電源レール上の電源ノイズを観測するためにはオシロスコープが利用される。従来は、パッシブ・プローブなどを用いて測定している例が多かった。パッシブ・プローブは汎用性に富みよく使われるものであるが、電源レールを測定するためには課題も多く、電源ノイズを正確に把握することが難しかった。こうしたことで、電源トラブルの原因を見逃してしまっていた技術者が多かったそうだ。下表に従来のプロービング方式における測定課題を整理した。

プロービング例
プロービング方式 主な測定上の問題点
1:1 パッシブ・プローブ 測定周波数帯域の不足(高調波ノイズを捉えられない)
10:1 パッシブ・プローブ 測定周波数帯域の不足(高調波ノイズを捉えられない)
内蔵プローブアンプによりノイズが10倍に増幅されてしまう(ノイズフロアが大きい)
N:1 アクティブ・プローブ 内蔵プローブアンプによりノイズがN倍に増幅されてしまう(ノイズフロアが大きい)
同軸ケーブル 電源へ負荷として作用(誤動作要因)
オフセット制限
同軸ケーブル + DCブロック 電源へ負荷として作用(誤動作要因)
オフセット制限
DC~低周波信号の取りこぼし

従来の電源ノイズ測定の問題点
※出典:キーサイト・テクノロジーの資料をもとに作成


電源ノイズを観測するために求められるプローブの主な要件としては、①測定系のノイズフロアが小さいこと、②広帯域であること、③オシロスコープ本体のオフセット制限がないこと(オフセットレンジが広いこと)、④プローブの負荷が低い(非測定系に対して十分ハイインピーダンス)、などが求められるとのこと。

正確な電源ノイズ測定を可能にしたパワー・レール・プローブ

これまでは、こうしたプロービングを実現することは困難であった。そこで、キーサイト・テクノロジーは、上記の要件を満たす新しいコンセプトのプローブを開発した。その名もパワー・レール・プローブ N7020Aだ

パワーリールプローブ

N7020A パワー・レール・プローブ(左)とプローブ部の拡大写真(右)

N7020A パワー・レール・プローブは、主にプローブ部と同軸ケーブル(長さ1.2m)から構成される。プローブ・システムとしての周波数帯域幅は2GHzあり、トランジェントノイズやスパイクノイズなどの高い周波数成分までも捉えることができる周波数帯域を持っている。1:1減衰比であるためノイズが増幅されてしまう心配がなく、低いノイズフロアを実現している。また、プローブの入力インピーダンスはDC時に50kΩあるので、測定する電源回路に対して低負荷で接続することができる。

プローブ測定比較画面

パワー・レール・プローブ(黄色)とアクティブ・プローブ(緑色)のノイズフロア比較
※出典:キーサイト・テクノロジー

上図は、パワー・レール・プローブ(黄色)と一般的なアクティブ・プローブ(緑色)の測定結果の比較である。前述の通り、アクティブ・プローブは内蔵のプローブアンプにより分圧比によってノイズを増幅させてしまうため、ノイズフロアが約16mVp-pと大きくなっているのが分かる。一方で、パワー・レール・プローブは約0.9mVp-pを示しており、ノイズフロアを非常に低く抑えられているのが分かる。

オシロスコープの性能も重要だ。一般的にオシロスコープのAD変換器は8bitである。電源ノイズ測定では数mVレンジの測定をすることがあるため、オシロスコープの垂直電圧分解能が高いほど、細かく測定することができる。しかしノイズ性能に見合った分解能でなければ意味がない。キーサイト・テクノロジーでは、10bitのAD変換器と低雑音のフロントエンドを有したInfiniium Sシリーズ オシロスコープとの組み合わせを推奨している。キーサイト・テクノロジーでは、この組み合わせによるソリューションを、電源ノイズアナライザと呼んでいる。

電源ノイズアナライザ

電源ノイズアナライザ(N7020A パワー・レール・プローブとInfiniium Sシリーズ オシロスコープの組み合わせ)としてソリューション提供している。

電源ノイズアナライザ(N7020A パワー・レール・プローブとInfiniium Sシリーズ オシロスコープの組み合わせ)によるデバッグの一例が下図だ。ここでは、パワー・レール・プローブ(黄緑色)とパッシブ・プローブ(橙色)で測定結果を比較している。

解析の流れは、スイッチング電源波形を観測(画面左上)し、同時スイッチングノイズを拡大する(画面右上)。このスイッチングノイズをオシロスコープのFFT解析機能を使って周波数ドメインで表示する(右下)といった具合だ。

電源ノイズアナライザ測定画面

パワー・レール・プローブとパッシブ・プローブの解析結果比較
※出典:キーサイト・テクノロジー

ここで着目したいのが、画面右下のFFT解析結果だ。パッシブ・プローブである橙色の周波数分布が、200MHz以下ではパッシブ・プローブ自身のノイズによって信号が埋もれてしまっている。また、200MHz以上になってくると急速に周波数のレベルが下がってきている。これは周波数帯域不足によるものだ

一方で、パワー・レール・プローブでは良好な周波数応答と低いノイズフロアによって、300~500MHz付近に電源ノイズがあると解析することができる。パワーインテグリティでは、まずは問題箇所の把握をすることが重要だ。電源ノイズアナライザでは、1mVクラスの電源ノイズまで把握できるのが大きなメリットだろう。

キーサイト・テクノロジーの堀部氏は、電源ノイズアナライザはこれまで見逃してしまっていた小さな電源ノイズを正確に把握することができるため、近年増加している電源トラブルによる対策に有効なソリューションだと語ってくれた。

キーサイト堀部氏

パワー・レール・プローブを持ちながら解説をしてくれた、キーサイト・テクノロジー アジアパシフィック統括マーケティング部門 ビジネスデベロップメントマネージャーの堀部勝義氏

仕様

N7020A パワー・レール・プローブの主な仕様
項目 主な仕様/機能
プローブ帯域幅 2 GHz
減衰比 1:1
オフセットレンジ ± 24 V
入力インピーダンス(DC) 50 kΩ
入力ダイナミックレンジ ±850 mV
プローブ・ノイズ オシロスコープ・ノイズの10%
プローブ・タイプ シングルエンド
Infiniium Sシリーズ オシロスコープの主な仕様
項目 主な仕様/機能
周波数帯域 500 MHz ~ 8 GHz (モデルにより異なる)
チャネル数 DSOタイプ:アナログ 4 チャネル
MSOタイプ:アナログ 4 チャネル + デジタル 16 チャネル
最大サンプリングレート 20 GS/s(2 チャネル時)
10 GS/s(4 チャネル時)
最大メモリ長 800 Mpts (オプション選択性)
垂直分解能 10 bit ADC

※その他詳細な仕様はメーカカタログをご参照ください


パワー・レール・プローブ N7020Aのカタログはこちら
Infiniium Sシリーズ オシロスコープのカタログはこちら

制作協力:キーサイト・テクノロジー合同会社 ホームページはこちら

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