技術情報・レポート

2018/03/26

大電流・広帯域測定可能な岩崎通信機の「ロゴスキー電流プローブ」

次世代半導体と呼ばれるSiCやGaNの開発が活発になってきており、実用化も徐々に始まっている。従来のSi半導体と比べ、高速動作可能な次世代半導体デバイスの電流・電力測定には、広帯域なプローブが欠かせない。そこで、今回は大電流領域で広帯域測定可能なロゴスキーコイル方式の電流プローブを2012年から手がけている岩崎通信機株式会社(以下、岩崎通信機)の第二営業部 フィールドサポート担当の齊藤 弘幸氏に話を聞いた。

岩崎通信機 バナー画像

ロゴスキーコイル電流プローブとは?

簡単にロゴスキーコイル電流プローブの原理にについておさらいをしておこう。

ロゴスキーコイル方式電流プローブは、測定電流の周りに生じる交流磁界により空芯コイルに誘起される電圧を変換して測定する。誘起される電圧は、測定導体に流れる交流電流による磁界が空芯コイルと鎖交することで得ることが出来る。得られた電圧は、測定電流の時間微分値となるため、積分器を通すことで測定電流に比例した出力信号となる。

ロゴスキーコイル電流プローブ動作原理

ロゴスキーコイル電流プローブ動作原理
出典:岩崎通信機

他の電流プローブと違いや特徴については、下表にまとめたので確認いただきたい。

センサ 利点 欠点
ロゴスキーコイル
  • 大電流測定が可能
  • クランプ式で取り付け操作が容易
  • 磁気飽和しない
  • 測定温度範囲が広い
  • 狭小スペースのセンシングに対応
  • 絶縁測定が可能
  • DCからの測定が出来ない
  • 外部磁場の影響を受けやすい
  • 小さい電流測定は難しい
シャント抵抗
  • 低コスト
  • 磁気飽和しない
  • 優れた直線性
  • DCから数MHz程度まで測定
  • 絶縁測定が難しい
  • 大電流タイプは、形状が大きい
  • 基板上の電流は回路を切断して挿入する
ホール素子+CT(フレックスゲート方式)
  • DCから100 MHz程度まで測定
  • 絶縁測定が可能
  • 磁性体の飽和/ヒステリシスがある
  • 少し外部磁場の影響を受ける
  • 基板上の電流は回路を切断して挿入する
カレントトレンス(CT)
  • 大電流測定が可能
  • 20 MHz程度まで測定
  • 絶縁測定が可能
  • DCからの測定が出来ない
  • 磁性体の飽和/ヒステリシスがある
  • 少し外部磁場の影響を受ける
  • 基板上の電流は回路を切断して挿入する

アプリケーションノート「ロゴスキーコイル電流プローブの基本動作」より
出典:岩崎通信機

豊富なラインナップ

以前よりパワーエレクトロニクス計測に貢献してきた岩崎通信機だが、大電流領域の広帯域測定には、一般的なクランプ式の電流プローブでは技術的に困難のため、ロゴスキーコイル方式の電流プローブの製品化に向け開発が始まったとのこと。ロゴスキーコイルは、大電流領域での広帯域化が容易なことは、以前より知られていたが、実用化にはコイルの製作や低雑音積分回路の設計など、大きな課題があることも知られていた。しかし、岩崎通信機はこれらを克服し、2012年10月にロゴスキーコイル電流プローブを発表した。

最初に発表したSS-280シリーズの販売を皮切りに、お客さまのニーズに応えながら、ランナップを増やしており、現在(2018年2月時点)では、大きくSS-280A(SS-280シリーズの後継シリーズ)、SS-290シリーズ、SS-620シリーズがラインナップされている。

SS-280Aシリーズは、最初にリリースしたSS-280シリーズの後継機種にあたり、もっともお客さまに使われているシリーズとのこと。周波数帯域は最大30 MHzをサポートしており、測定電流値は、30 A、60 A、120 A、300 A、600 A、1,200 A、3,000 A、6,000 A、12,000 Aの9種類がラインナップされている。プローブ先端部のコイル長は80 mm、コイル線径は1.7 mmと細く、パワー半導体の端子のリード部分にも直接プロービング可能となっている。

[SS-280Aシリーズ] 製品写真(左)とプローブ先端部とプロービング例(右)

[SS-280Aシリーズ] 製品写真(左)とプローブ先端部とプロービング例(右)
出典:岩崎通信機

SS-290シリーズは、SS-280シリーズの次に開発されたシリーズとのこと。周波数帯域は、SS-29xLが10 MHz、SS-29xSが20 MHz、電流値12,000 Aまでサポートしている。SS-290シリーズのコイル長は、700 mm/300 mm(SS-29xL/SS-29xS)と大きく、コイル線径も8.5 mmと太い。バスバー(ブスバー)とよばれる幅広い箇所をプロービングできることが特長だ。

[SS-290シリーズ] 製品写真(左)とプローブ先端部とプロービング例(右)

[SS-290シリーズ] 製品写真(左)とプローブ先端部とプロービング例(右)
出典:岩崎通信機

SS-620シリーズは最後にリリースしたモデルで、周波数帯域は、SS-62xMが20 MHz、SS-62xSが25 Mz、最大電流は12,000 Aまでサポートされる。SS-620シリーズのコイル長は、200 mm/100 mm(SS-62xM/ SS-62xS)でSS-280AシリーズとSS-290シリーズの中間のモデルとなっている。SS-280Aシリーズでは直径の足りない(Φ25mm以上)のパワー半導体やモータなどに繋がるパワーケーブルなどのプロービングも余裕を持って行うことが可能だ。また、コイル線径3mmであるにも関わらず、最大ピーク電圧5 kVを実現していることも特長だ(SS-280Aシリーズの最大ピーク電圧は1.2 kV)。

[SS-620シリーズ] 製品写真(左)とプローブ先端部とプロービング例(右)

[SS-620シリーズ] 製品写真(左)とプローブ先端部とプロービング例(右)
出典:岩崎通信機

国内開発・製造の安心サポート

国内のお客さまは、今まで選択肢がなかったこともあり、海外製の製品を使っていることが多く、サポートを心配されながら使っていたという。岩崎通信機製のロゴスキー電流プローブは、すべて国内で開発・製造されているので、国内のお客さまには安心してお使いいただけるとのこと。

岩崎通信機株式会社 第二営業部 フィールドサポート担当の齊藤 弘幸氏

SS-280Aシリーズのデモ機で特長などを分かりやすく説明してくれた第二営業部 フィールドサポート担当の齊藤 弘幸氏

これまで、お客さまの声を伺いラインナップを増やしてきた。一方で、精度を保つために、センサ(コイル)と本体(積分器)を1つ1つ作りこんでいると、製造の苦労話をしてくれた。長くアナログオシロを開発している岩崎通信機であるからこその製品であることが改めて感じた。

オシロスコープとのソリューション提案

インバータでの実動作上での損失がどの程度なのかを測るには、電流と電圧を高品位に測定する必要がある。電圧と電流測定には、高電圧差動プローブとロゴスキーコイル電流プローブ、ViewGoⅡシリーズ(DS-5600A/DS-5400A)のオシロスコープのセットでの提案を行なっているとのこと。ロゴスキーコイル電流プローブや、高電圧差動プローブは、他社オシロスコープでも接続・測定可能であるが、これらのセットに加え、お客さま向けにカスタマイズしたリモートソフトウェアの提供(有償)も行っているとのことで、長年パワーエレクトロニクス計測に携わっている岩崎通信機の強みだと自身を持って語ってくれた。

デジタル・オシロスコープ ViewGoⅡ DS-5600Aシリーズ

デジタル・オシロスコープ ViewGoⅡ DS-5600Aシリーズ
出典:岩崎通信機

主な仕様

■SS-280Aシリーズ
型番 型番周波数帯域
[-3 dB]
センサ部
使用温度範囲
感度
[mV/A]
ピーク電流
[A]
ピークdi/dt
[kA/μs]
ノイズ
[mV rms]
絶対最大di/dt
Peak
[kA/μs]
RMS
[kA/μs]
SS-281A 110 Hz ~ 30 MHz -40 ℃ ~ +125 ℃ 200 30 2 3.5 80 1
SS-282A 65 Hz ~ 30 MHz 100 60 4 2.5 1.5
SS-283A 32 Hz ~ 30 MHz 50 120 8 2
SS-284A 9 Hz ~ 30 MHz 20 300 20 1.8
SS-285A 6 Hz ~ 30 MHz 10 600 40
SS-286A 3 Hz ~ 30 MHz 5 1,200 80 2
SS-287A 2 Hz ~ 30 MHz 2 3,000 1.4
SS-288A(受注生産) 1 6,000
SS-289A(受注生産) 0.5 12,000
■SS-290シリーズ
型番 型番周波数帯域
[-3 dB]
センサ部使
用温度範囲
感度
[mV/A]
ピーク電流
[A]
ピークdi/dt
[kA/μs]
ノイズ
[mV rms]
絶対最大di/dt
Peak
[kA/μs]
RMS
[kA/μs]
SS-293L 1 Hz ~ 10 MHz -40 ℃ ~ +125 ℃ 5 1,200 32 3.5 80 3
SS-293S 1 Hz ~ 20 MHz 60
SS-294L 0.8 Hz ~ 10 MHz 2 3,000 80 2
SS-294S 0.8Hz ~ 20 MHz
SS-295L 0.6 Hz ~ 10 MHz 1 6,000 1.4
SS-295S 0.6 Hz ~ 20 MHz
SS-296L 0.4 Hz ~ 10 MHz 0.5 12,000 1.2
SS-296S 0.4 Hz ~ 20 MHz
■SS-620シリーズ
型番 型番周波数帯域
[-3 dB]
センサ部
使用温度範囲
感度
[mV/A]
ピーク電流
[A]
ピークdi/dt
[kA/μs]
ノイズ
[mV rms]
絶対最大di/dt
Peak
[kA/μs]
RMS
[kA/μs]
SS-625M 2 Hz ~ 20 MHz -40 ℃ ~ +125 ℃ 10 600 32 5.0 80 3.0
SS-625S 2 Hz ~ 25 MHz 40
SS-626M 1 Hz ~ 20 MHz 5 1,200 60 3.5
SS-626S 1 Hz ~ 25 MHz 80
SS-627M 0.8 Hz ~ 20 MHz 2 3,000 2.0
SS-627S 0.8 Hz ~ 25 MHz
SS-628M 0.6 Hz ~ 20 MHz 1 6,000 1.4
SS-628S 0.6 Hz ~ 25 MHz
SS-629M 0.4 Hz ~ 20 MHz 0.5 12,000 1.2
SS-629S 0.4 Hz ~ 25 MHz

岩崎通信機のロゴスキーコイルや電流プローブの詳細は こちら

取材協力:岩崎通信機株式会社 電子計測機器ホームページは こちら

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