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2021/05/28

自動車のブレーキ ~ますます高まる重要性

ブレーキ制御システム

1 ABS

ABSとは、アンチロック・ブレーキシステム(Anti-lock Brake System)の略称です。名前の通り、車輪のロックを防ぐシステムです。雪道や降雨時にブレーキをかけた時、ブレーキペダルに振動を感じたことがあると思います。これはABSが作動しているからです。車両の進行方向の安定性を保ち、ハンドル操作で障害物を回避できるようにする装置です。ABSが有効であることのイメージは図8です。

図8 ABSの有効性
図8 ABSの有効性

出典:国土交通省

運転免許を取得する際、ポンピングブレーキを教わったと思いますが、ABSが作動する状況では、この動作をECUが行っています。なお、ABSが作動して振動や音を感じても、ブレーキペダルを踏み続けることが必要です。ABSが作動しても停止距離が必ずしも短くなるわけでないので、天候や道路状況に応じた安全運転を励行すべきです。

ABSシステムを構成する部品は車輪の回転速度を検出する車輪速センサ、油圧を制御する電子制御ユニット、油圧を各車輪へ分配する油圧ユニットです。

図9 ABSの構成
図9 ABSの構成

ABS制御の考え方は図10です。車両を停止させる力(制動力)と車両の横方向力(コーナリングフォース)が大きくなるスリップ率の範囲を0.1~0.2程度にすることが制御の基本です。
スリップ率=(車両速度-車輪速度)/車両速度、スリップ率1.0は車輪がロックしている状態。

図10 ABS制御の考え方
図10 ABSの構成

ABSは制動時の車輪ロックを抑制するシステムですが、加速時に車輪のスリップを抑制するシステムとして、TRC(トラクションコントロールシステム Traction Control System)が導入されました。これらの機能の発展形として、次に説明する横滑り防止装置へ進化していきました。略称は登録商標でないESC(Electronic Stability Control)の使用が推奨されているようですが、各社固有の呼称もあります。トヨタはVSC(Vehicle Stability Control)、ホンダはVSA(Vehicle Stability Assist)、日産はVDC(Vehicle Dynamics Control)、ボッシュはESP(Electronic Stability Program)です。

2 横滑り防止装置(ESC)

コーナリング時の車体を安定させます。制御のイメージは図11です。

図11 横滑り防止装置の制御イメージ
図11 横滑り防止装置の制御イメージ

出典:国土交通省

ドライバが障害物を避けようとして急激なハンドル操作を行ったときや、不意に滑りやすい路面に進入したときなどに、自動車が横滑りなどの不安定な状態になる場合があります。このシステムは、このような状態を制御して車の安定性を向上させるようにした装置です。自動車に横滑りが生じると、それをセンサにより検出し、エンジンの出力や各車輪毎のブレーキ力を適切に制御することにより、自動車のスピン(一般的にオーバーステアと呼称)や外への膨らみ(アンダーステア)を制御します。一般的な横滑り防止装置(ESC)のシステム構成は図12です。

図12 ESCのシステム構成
図12 ESCのシステム構成

横滑り防止装置(ESC)を装着することは平成24年10月(軽自動車:平成26年10月、継続生産車:平成26年10月(軽自動車:平成30年2月24日))から義務化されています。 この時に、ブレーキ力を増大させるブレーキアシスト機能(BAS:Brake Assist System)の装着も併せて義務化されています。ブレーキアシストは、緊急時のような大きなブレーキ力を必要とする時に、通常のよりも少ない踏力で大きなブレーキ力を発生できるように運転者を支援する機能です。この機能により、ABSを効果的に作動させることができ、事故回避力を向上させることができます。

今後の方向性

ブレーキの主な機能は車両を止めることですが、車両の姿勢を安定化する横滑り防止装置(ESC)へ進化してきました。今後は、車両の運動全体を制御する車両統合制御システムへ進化しつつあります。このシステムではブレーキが曲がるためにも使われています。衝突防止や自動運転が普及してくると自動ブレーキが必要になるので、自動車を止めることだけがブレーキに求められる機能でなくなります。ブレーキ制御の高度化が必要になり、従来の油圧ブレーキシステムでは応答性がシステムの要求性能を満足できなくなります。そうなると、車輪毎のブレーキ制御が電動化となることは必然です。

一方、ブレーキの電動化によるリスクとしては、電気システムが失陥した際、安全に車両を止めることができるかどうかです。現状のブレーキシステムでは、電気系が故障しても、油圧系が機能すれば、ドライバがアクセルペダルを強く踏めば最低限の制動力が維持できるようになっています。電気系統の失陥を回避する方策として、油圧系や電気系のシステムを冗長化することが考えられますが、安全性の確保のためには、非常時のブレーキ手段として油圧系は残ると思われます。しかしながら、油圧系を持たないブレーキの電動化は自動運転や脱炭素社会に向けた技術として要求が高まっているので、電動化の方向性は変わらないと認識できます。

関連計測器の紹介

ブレーキシステムの開発で使用される計測器の一例を紹介します。

図13 ブレーキシステム開発で使われる測定器の例
図13 ブレーキシステム開発で使われる測定器の例

その他の製品や仕様については 計測器情報ページ から検索してください。

おわりに

ブレーキは自動車にとって欠かせない基本機能です。車を止める機能に今後も大きな変化はありませんが、自動車事故のさらなる抑制や自動車システムの高度化、自動運転の普及、さらに脱炭素社会に向け、自動車のブレーキ技術は進化していくでしょう。


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