市場動向レポート 「社会インフラの検査・維持管理と計測技術」2018年10月号 TechEyes Vol.31
私たちの生活を支える道路、トンネル、橋梁、堤防など、社会インフラ※1と呼ばれている社会資本ストックは、わが国の高度成長とともに公共投資が拡大し続け、現在では約800兆円ともいわれる資本を積み上げてきました。しかし、今後急速に老朽化していくことが懸念されており、設備の維持管理の水準を向上し、効率的に低コストを実現することが喫緊の課題となっています。2012年12月2日の中央自動車道笹子トンネルで起きた天井板崩落事故は、私たちに大きな衝撃をもたらしました。直近では2018年8月14日に起きたイタリア北部ジェノバでの幹線道路の高架橋崩落事故は多くの犠牲者を出す大惨事となりました。いずれの事故も、維持管理・更新などの対策を怠ったことで起きた事故と見られています。今号では、インフラの現状と課題、維持管理のための点検・モニタリング・診断技術などに触れ、技術開発における実証事例などを紹介いたします。
※1 インフラストラクチャの略(ここでは、よく使われている「社会インフラ」の言葉を使用した):経済活動や社会生活の基盤を形成する構造物。ダム・道路・港湾・発電所・通信施設などの産業基盤,および学校・病院・公園などの公共の福祉にかかわる施設が該当する。インフラ。→ 社会資本(三省堂 大辞林)
社会資本ストックの現状
内閣府発行の「日本の社会資本2017」を参照すると、公的な社会資本ストックに18部門が挙げられ(表1)、そのストック高が推計されています(図1)。ストック推計には、国際的な手法があり、それに沿った推計がなされていますが、ここでは詳しい推計方法については触れず、推計結果を概観します。推計は、次の粗資本・生産的資本・純資本ストックの3つからなります。
- 粗資本ストック:
- 現存する固定資産について、評価時点で新品として調達する価格で評価した値
- 生産的資本ストック:
- 粗資本ストックから供用年数の経過に応じた効率性の低下(サービスを生み出す能力量の低下)を控除した値
- 純資本ストック:
- 粗資本ストックから供用年数の経過に応じた減価(物理的減耗、陳腐化等による価値の減少)を控除した値