単位についてあれこれ ~メートルのはなし「地球の大きさから光へ」 (2/2) ~ | 技術コラム|TechEyesOnline|計測器専門の情報サイト

技術コラム

2018/03/27

単位についてあれこれ ~メートルのはなし「地球の大きさから光へ」 (2/2) ~

地球の大きさから光へ

前回、地球の大きさから生まれたメートルですが、その後現在の定義に至るまでの経緯をお話したいと思います。

子午線の長さから導き出された1メートルを現示する純白金製の原器が作られました。共和国文書保管所(Archives de Republique)に保管されたことから、保管場所の名称にちなみアルシーヴ原器 (Metre des Archives) と呼ばれます。この原器が後に重要な役割を果たすようになります。

この長さの原器と同じくして、質量も原器が作られます。その定義は、このメートルを基準として、1立方デシメートル(1リットル)の水の質量を1キログラムと定めました。純白金製で製作され、同じ共和国文書保管所に保管されたことから、こちらもアルシーヴ原器(kilogramme des Archives)と呼ばれます。

こうして、長さはメートル、質量はキログラムを基本単位とした、十進法による、自然の標準に準拠し、永遠に世界で用いられる新単位系としてメートル法が生まれました。

フランス生まれのメートルや、グラムですが、フランス語が由来ではなく、ギリシャ語やラテン語が由来となっています。それは、このメートル法の目的が永遠に世界で用いられる単位系を目指したものであるからです。

単位名称 単位記号 由来 意味
メートル m 古代ギリシャ語のmetron ものさし、測る
キログラム kg ラテン語のgramma わずかな重量

こんな苦労をして定義されたメートルですが、フランスではもともと使用されていた単位もあるため、なかなか普及されずにいました。

現在、日本でも尺貫法による単位が残っておりますし、慣習的に使用してきた単位を変えるというのは大変であったと思います。

その後、フランスで1837年にメートル法以外の単位使用を法律で禁じ、1851年のロンドン万国博や1867年のパリ万国博を契機に次第にメートル法が広まっていきました。

科学技術が発展し、地球の大きさ、形状の研究が進んでくると、メートルの定義について以下のような問題点が出てきました。

  • 地球は単純な球体や楕円体でないことから、普遍的では長さを定義するのには望ましくない。
  • 北極から赤道までの子午線の1,000万分の1の長さが正確にはアルシーヴ原器と等しくない。

再度測量すればよいと思うかもしれませんが、費用と時間と労力をかけなければいけません。そのため、1869年に副原器の立場であったアルシーヴ原器自体がメートルの基準に変更されました。

人工物である原器を国際基準とする以上、原器の変化を可能な限り抑える必要となりました。新たな原器は白金90%、イリジウム10%の合金で、曲げに強い断面形状が「X」字型の原器0℃において1メートルの長さを示す目盛線が引かれたものが30本製作されました。

1889年、第1回国際度量衡総会において、30本のメートル原器のうち、No. 6原器を「国際メートル原器」とすることが承認され、この「国際メートル原器」に基づきメートルが定義されました。同時に各国用原器の配布先が決定し、日本にはメートル原器No. 22が配布されました。

メートル原器

メートル原器

この国際メートル原器は、フランスの国際度量衡局のもと厳重に保管されていきました。人工の原器であるため、物質的にも精度の限界や経時的な変化や、紛失、焼損の恐れが付きまとっていました。日本においても戦時中の戦火を逃れるため、メートル原器は疎開していました。

日本のメートル原器は、日本の近代度量衡制度における歴史的、学術的価値が評価され2012年に重要文化財指定されました。茨城県つくば市にある国家研究開発法人産業技術総合研究所にあるサイエンス・スクエアにメートル原器のレプリカが展示されているのですが、実は2017年7月22日にオリジナルが一日限定で一般公開されていたようです。重要文化財のため、次にオリジナルが見られる機会がくるのはいつになることか・・・。人工物のため不変性についての危惧されるなか、より普遍に高い精度が得られる標準が追い続けられました。地球という自然界のもので長さを定義されたメートルは、一旦人工物に基準となりましたが、再び自然界にあるもので定義できないかと研究が重ねられ、それで注目されたのが光です。

定義の遍歴(長さ)

定義の遍歴(長さ)

そして、1960年にクリプトン86原子のスペクトル線の波長を用いて定義することになりました。この時、人工物であるメートル原器の役割は終わりを告げました。その後、レーザ技術の発展により、1983年に真空中の光の速さを用いた現在の定義に変更され、より高精度の標準となりました。

現在、1メートルは1秒の299,792,458分の1の時間に光が真空中を伝わる行程の長さと定義されています。

2回にわたりメートルの歴史に関してお話させて頂きましたが、計量単位は、科学技術の発展と共にあるといえるのではないでしょうか。今後、さらなる技術の発展により定義が変わっていく可能性があります。


次回は、「色々な単位について」です。(4月下旬ごろ公開予定)

単位あれこれシリーズのバックナンバーは こちら

タグ