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ユニバーサルカウンタの基礎と概要 (第3回)

ユニバーサルカウンタの利用

ユニバーサルカウンタは主に周波数を測定する無線通信分野からさまざまな時間パラメータの測定を行うセンサ分野、メカトロンクス分野、教育分野などまで幅広い分野で利用されている。

ここでは代表的なユニバーサルカウンタの利用事例を紹介する。

VCOの制御電圧‐周波数特性の評価

VCO(電圧制御発振器)やVCXO(電圧制御水晶発振器)はPLL(Phase Locked Loop)回路に使われる重要な部品で入力電圧を変化させることによって発振周波数が変化する。

制御特性を評価する場合は外部からのノイズの影響を少なくしなければならないので、VCO回路を駆動する電源と制御電圧源には低ノイズ直流電源が使われる。発振出力の制御電圧‐周波数特性は下記のような仕組みで測定される。

図42. VCOの評価

図42. VCOの評価

なお、VCO発振出力に負荷特性の影響がある場合は、アクティブプローブを介してユニバーサルカウンタに信号を接続する。

ロータリーエンコーダの評価

ロータリーエンコーダは機械装置に取り付けられる回転センサや回転式の操作つまみなどに使われる。ロータリーエンコーダの評価は軸を回転させて得られる位相が90度異なるA相とB相の信号が正しく出力されるかを測定する。

ロータリーエンコーダのA相とB相の位相差評価は下記に示すような仕組みで行う。

図43. ロータリーエンコーダの評価

図43. ロータリーエンコーダの評価

温湿度センサ回路の評価

温度や湿度を測定する方法は多くあるが、家庭にある電子体温計や温湿度計などの多くはサーミスタ温度センサや抵抗変化型湿度センサを使って測定した結果を周波数に変化して出力する仕組みとなっている。

ここでは指定した温度や湿度に設定できる恒温槽を使っての温湿度センサ回路を評価する仕組みを示す。精度の高い評価を行う場合はセンサの周辺の温度や湿度を一定にする仕組みを作り、基準となる高精度な温度計や湿度計を用いて正確な温度や湿度を測定して評価する温湿度センサ回路との比較を行う。

図44. 温湿度センサ回路の評価

図44. 温湿度センサ回路の評価

出典:電気抵抗変化型湿度センサの駆動回路の設計(トランジスタ技術 2008年3月号)

QCM法による微小物質の検出

液体や気体に含まる微量な物質を検出できるQCM(Quartz Crystal Microbalance)センサは幅広い分野で使われている。QCMセンサは水晶振動子の表面に微量物質が付着するとその量に応じて発振周波数が下がる特性を使っている。水晶振動子の電極表面に測定対象を吸着されるための物質を塗布すれば選択的なセンサとなる。

QCMセンサを評価する仕組みは下記のようになる。

図45. QCMセンサの評価

図45. QCMセンサの評価

タービン流量計の評価

タービン流量計はパイプを流れる流体によって水車を回転させて回転速度から流量を高精度に得ることができる。身近にある水道メータにはタービン流量計が使われている。

測定結果を電子信号として読み取れるタービン流量計はパイプの上部には磁石とピックアップとが有り、流れにより磁性体で出来たタービンの羽根が回転して磁界を横切る際の磁束密度の変化をピックアップコイルで検知する。ピックアップからの信号をユニバーサルカウンタで測るようにすれば流量計の評価が行える。

図46. タービン流量計の評価

図46. タービン流量計の評価

超音波式ガス濃度計の評価

ガスの濃度によって音速が変化する特性を使ったガス濃度計を評価する際には、密閉したパイプの中にある気体の一方から音を発して、パイプの反対側に到達する音を検出するようにする。音速は気体の温度によって変化するので気体の温度測定も同時に行う。

超音波式ガス濃度計を評価する仕組みは下記のとおりである。

図47. 超音波式ガス濃度計の評価

図47. 超音波式ガス濃度計の評価

音叉振動式荷重センサの評価

金属で作られた音叉は両端に加えられた荷重の大きさに比例して振動数が変化することを利用して精密なはかりが作られている。

精密なはかりの機構を評価するには音叉発振器とカウンタを組み合わせて構築する。

図48. 音叉振動式荷重センサの評価

図48. 音叉振動式荷重センサの評価

出典:横振動梁を利用した電子はかり(第20回計測自動制御学会学術講演会 1981年7月)

テルミンの動作学習

テルミンは世界で初めて作られた電子楽器である。テルミンには発振器、ミキサ、フィルタなど高周波回路を学習するための回路が含まれているため電子回路の教育の場で使われることがある。

ユニバーサルカウンタを使うことによってテルミンに組み込まれているヘテロダイン回路の仕組みを学習することができる。

図49. テルミンを使っての高周波回路の学習

図49. テルミンを使っての高周波回路の学習

テルミンとは

テルミンは1919年にロシアのレフ・セルゲーエヴィチ・テルミンが発明した世界初の電子楽器である。テルミンには2つのアンテナがあり、音程と音量をアンテナに手を近づけることによって静電容量を変化させて制御する仕組みとなっている。電子回路の構造は簡単であるが、鍵盤などを使わないため演奏には熟練が必要となる。

図50. テルミンを演奏するレフ・テルミン

図50. テルミンを演奏するレフ・テルミン

現在でもテルミンの演奏会は行われており、テルミンの演奏を教える音楽教室もある。また簡単な回路であるため、電子工作の対象として紹介されることがある。

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