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ユニバーサルカウンタの基礎と概要 (第2回)

ユニバーサルカウンタの構造

さまざまな機能を持っているユニバーサルカウンタを理解するためには内部の構造を知っておくことが必要である。

ブロック図

岩崎通信機のユニバーサルカウンタSC-7217Aのブロック図を下記に示す。

図25. ユニバーサルカウンタSC-7217Aのブロック図

図25. ユニバーサルカウンタSC-7217Aのブロック図

提供:岩崎通信機

入力にはさまざまな時間パラメータを測定するためのA入力とB入力と高い周波数までの信号を測定するためのC入力が用意されている。この製品ではC入力にバースト信号の周波数を測定するための機能が備わっている。またこの製品ではユニバーサルカウンタを駆動している交流電源の周波数を測る特徴的な機能がある。

ユニバーサルカウンタはラックに組み込まれて利用されることがあるため、この製品では背面から信号入力ができるようにA入力、B入力、C入力は前面と背面のパネルに端子に用意されている。

2つの周波数カウント方式

周波数を測定する方法には2つの方式があり、測定される周波数によって自動的に切り替えられる。

図26. 2つの周波数カウント方式の動作原理図

図26. 2つの周波数カウント方式の動作原理図

周波数カウンタが登場したときに考えられたのはダイレクト・カウント方式である。ダイレクト・カウント方式は入力された波形を設定したゲート時間でカウントする方式である。例えば20MHzの入力信号finをゲート時間1msで測定した場合は20×103個のパルスがカウントされるため、下記の式によって20MHzの測定結果を得ることができる。

fin=(入力信号のカウント数)/(ゲート時間(秒))=20×103 / 1×10-3Hz=20MHz

その後に登場したのがレシプロカル・カウント方式で入力された波形もしくは入力された波形を分周した波形を既知の周波数の発振器を使って周期を測定する方法である。例えば2kHzの入力信号finを2分周して、その信号を既知の10MHzクロックで周期を測定すると、10MHz(10×106Hz)クロックは104カウントされるため、下記の式によって2kHzの測定結果を得ることができる。

fin=(分周比)/(カウント数)×クロック周波数=2/104×10×106=2×103Hz=2kHz

ダイレクト・カウント方式は簡単な仕組みで周波数を測定できるが、周波数が低くなると有効桁数が減少する特性を持っている。一方レシプロカル・カウント方式は仕組みが複雑になるが、低い周波数でも高い有効桁数を得ることができる。

図27. 2つのカウント方式での入力周波数と有効桁数の関係

図27. 2つのカウント方式での入力周波数と有効桁数の関係

ユニバーサルカウンタでは高い有効桁数が表示できるように、低周波ではレシプロカル・カウント方式、高周波ではダイレクト・カウント方式となるように動作を変えて周波数測定を行っている。

高分解能時間測定を行う方法

カウンタは内部クロック周波数を基準に時間測定を行っているため、高い時間分解能の測定をするためにはクロック周波数を上げる方法があるが回路素子に限界があるため、さまざまな方法が考案されてきた。

・多相クロック方式

基準となるクロック信号を多相に分割して時間分解能を上げる方法である。相数を多くすると回路規模が大きくなる欠点はあるが、簡単な仕組みで実現できるので高い時間分解能を求めない場合に使われる。

図28. 多相クロック方式

図28. 多相クロック方式

基準となる内部クロックを使って非同期の入力信号を測定した場合は下図に示すように波形の始まりと終わりに端数が生じる。この端数を切り出してほかの方法で時間測定すれば高分解能時間測定が可能となる。

図29. 端数パルスの生成

図29. 端数パルスの生成

端数パルスの時間を測定する方法にはタイム・エクスパンション方式、時間-電圧変換方式、タイム・バーニア方式がある。

・タイム・エクスパンション方式

端数パルスの時間を使ってコンデンサに定電流で充電を行い、その後長い時間を使って定電流で放電を行う。この時間を基準のクロックで測定することによって高い分解能の時間測定ができる。

図30. タイム・エクスパンション方式

図30. タイム・エクスパンション方式

・時間-電圧変換方式

タイム・エクスパンション方式では高分解能を得るには長い測定時間が必要となるため、端数パルスの期間に充電した電圧を高分解能A/D変換器を使って高速に測定する。

計測自動制御学会が発行する計測と制御誌の2005年Vol. 44, No. 10に「分解能の限界にせまる:時間,周波数の測定技術」に詳しい技術解説がされている。

図31. 時間-電圧変換方式

図31. 時間-電圧変換方式

・タイム・バーニア方式

ノギスで使われているバーニア(副尺)の原理を使った方式で端数パルスが生じたときからスタートする発振器の周波数を基準クロックの周波数と少しだけずらしておく。これによって基準クロックとスタート発振器の位相が一致する点が生じる。この点を見つけることによって高分解能測定ができる。

詳しくはHewlett-Packard Journalの1978年8月号にタイム・バーニア方式を採用したModel 5370 Aの技術解説が掲載されている。

図32. タイム・バーニア方式

図32. タイム・バーニア方式

基準発振器の選択

ユニバーサルカウンタに搭載される基準クロックは一般に水晶発振器が使われる。一部の製品ではルビジウム原子時計を搭載するものがあるが一般的な用途ではない。

下記に示すように、各種の水晶発振器は様々な電子機器に搭載されている。

表2. 電子機器に使われるさまざまな水晶発振器
種類 概要 主な市場分野
パッケージ
水晶発振器
(SPXO)
温度制御や温度補償をしていない一般的な水晶発振器.周波数温度特性はほぼ水晶振動子に依存する.周波数安定度は±50~±100×10-6程度 有線通信機器,無線通信機,産業機器(OA・情報端末,医療,カー・エレクトロニクス),民生用電子機器(映像,音響など)
電圧制御
水晶発振器
(VCXO)
外部からの制御電圧により,出力周波数を可変または変調できる水晶発振器 受信装置など
温度補償
水晶発振器
(TCXO)
温度補償回路を付加して,周囲温度の変化による周波数変化が少なくなるようにした水晶発振器.周波数安定度は±0.5~±2.5×10-6程度 無線通信機(携帯電話など)
恒温槽付き
水晶発振器
(OCXO)
恒温槽によって水晶振動子の温度を一定に保ち,周囲温度の変化による出力周波数の変化量を最も少なくなるようにした水晶発振器.周波数安定度は±1×10-7 ~ 5×10-10程度 携帯電話基地局など
SPXO:simple packaged crystal oscillator
VCXO:voltage controlled crystal oscillator
TCXO:temperature compensated crystal oscillator
OCXO:oven controlled crystal oscillator

出典:水晶発振器の選び方・使い方(Design Wave Magazine 2007年2月号)

ユニバーサルカウンタに使われる水晶発振器はTCXOが標準搭載されており、オプションでOCXOが搭載できるようになっていることが多い。

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