技術情報・レポート

2019/12/25

ユニバーサルカウンタの基礎と概要 (第1回)

【コラム】時間標準

時間標準の歴史

昔は正確な時間の標準を地球の自転や太陽の周りをまわる公転の運動を基準にしてきたが、天体の動きには微妙な変動がある。正確な時間の標準が求められるようになり、1967年にセシウム原子時計が国際単位系(International System of Units) において1秒を定義する基準標準となり、現在まで世界の時間標準はセシウム原子時計が使われている。

原子時計の仕組みは1945年にアメリカのイジドール・ラビによって考案された。最初に作られた原子時計はアンモニア分子を使ったものであったが高精度は実現できなかった。1955年にイギリスの国立物理学研究所(NPL)のルイ・エッセンらによってセシウム133原子時計が開発され、10-10(300年に1秒の誤差)の精度が実現できた。1964年にはHewlett-Packard社(現在のキーサイト・テクノロジー社)によってセシウム原子周波数標準器(HP 5060A)が世界で初めて販売された。セシウム原子時計の精度はその後の研究開発によって向上し、現在では10-16(3億年に1秒の誤差)に達している。

セシウム原子時計は「セシウム133の原子の基底状態の二つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の91億9263万1770倍の継続時間が1秒である」ことを利用して作られた時間標準である。実際のセシウム原子時計の構造は下記のようになっている。

図24. セシウム原子周波数標準器構成図

図24. セシウム原子周波数標準器構成図

出典:新周波数標準装置の概要と特徴(気象衛星センター技術報告 第40号 2002年3月)

国家標準はセシウム原子時計が基準となっている。日本の時間の国家標準は産業技術総合研究所計量標準総合センターと情報通信研究機構の2つの国家機関で管理されている。一般の企業が測定器の精度維持を目的に国家標準にトレーサブルな周波数標準を持つことがあるが、目的に応じてさまざまな方式の高精度発振器を企業内標準として持つことができる。下記には現在ある主な高精度発振器を示す。

表1. 高精度発振器の比較
発振器の種別 温度補償
水晶発振器
(TCXO)
恒温槽付
水晶発振器
(OCXO)
ルビジウム
(Rubidium)
セシウム
(Cesium)
水素メーザー
(Hydrogen Maser)
一次標準と
なりうるか
× × × ×
固有周波数 寸法による
(可変)
寸法による
(可変)
6.834682608 GHz 9.19263177 GHz 1.42040575 GHz
有効寿命品 なし なし ルビジウムランプ
(15年以上)
セシウムビーム管
(3~25年)
水素の消耗
(7年以上)
安定度
σy(τ)、τ=1秒
1 × 10-9 1 × 10-12 5 × 10-11
5 × 10-12
5 × 10-11
5 × 10-12
1 × 10-12
ノイズフロア
σy(τ)
1 × 10-9
(τ = 1 ~ 102 s)
1 × 10-12
(τ = 1 ~ 102 s)
1 × 10-12
(τ = 103 ~ 105 s)
1 × 10-14
(τ = 105 ~ 107 s)
1 × 10-15
(τ = 103 ~ 105 s)
エージング/年 5 × 10-7 5 × 10-9 2 × 10-10 ------ ~1 × 10-13
ウォームアップ後の
周波数オフセット
1 × 10-6 1 × 10-8
1 × 10-10
5 × 10-10
5 × 10-12
5 × 10-12
1 × 10-14
1 × 10-12
1 × 10-13
ウォームアップに
要する時間
< 10 秒 to
1 × 10-6
< 5 分 to
1 × 10-8
< 5 分 to
5 × 10-10
30 分 to
5 × 10-12
24 時間 to
1 × 10-12

出典:An Introduction to Frequency Calibrations(NIST Frequency Measurement and Analysis System: Operator’s Manual)

新しい時間標準

現在、セシウム原子時計を上回る原子時計の研究が行われている。東京大学の香取秀俊教授によって考案された光格子時計は世界の最先端の精度を持っている。光格子時計は理論上10-18の精度(300億年に1秒の誤差)を実現できるものであるため、将来この原子時計が新たな時間標準になると期待されている。

産業技術総合研究所の時間標準研究グループ長の安田正美氏が執筆した時間標準について判りやすく解説した新書「1秒って誰が決めるのか?(ちくまプリマ―新書)」があるので紹介する。


執筆協力:岩崎通信機株式会社 電子計測機器ホームページは こちら

執筆:横河レンタ・リース株式会社 事業統括本部 魚住 智彦