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ユニバーサルカウンタの基礎と概要 (第1回)

<連載記事一覧>

第1回:「はじめに」「カウンタが普及するまでに使われていた時間測定器」「カウンタが登場して以降の主な時間測定器」「ユニバーサルカウンタの主な測定項目」「【コラム】時間標準」

第2回:「ユニバーサルカウンタの構造」「ユニバーサルカウンタの仕様の見方」「【コラム】各社のユニバーサルカウンタ」

第3回:「ユニバーサルカウンタの利用」「ユニバーサルカウンタの校正」「おわりに」「【インタビュー】岩崎通信機の測定器事業の取り組み」

はじめに

時間を正確に測りたいという要求は古くからあり、人類は紀元前4000年頃に日時計を発明した。その後、水時計、燃焼時計、砂時計といった時計を作ってきた歴史がある。なお、日本で671年6月10日に初めて水時計を使って時を太鼓や鐘で知らせたということが日本書紀に書かれていることから、1920年に6月10日が「時の記念日」と制定された。

機械式の時計はルネッサンス時代の13世紀の終わり頃に北イタリアから南ドイツに至る地域で塔時計として登場したと言われている。

機械式の時計の仕組みなど使って正確な時間を測定するさまざまな道具が作られたが、その後アナログ電子回路を使って高い周波数の測定も可能になっていった。第二次世界大戦後に発展したデジタル電子回路により周波数を数字で読み取ることができるカウンタが登場した。

現在の多くの電子機器には水晶振動子が搭載されて、正確な周波数のクロック信号で電子回路が動作するようになったことや、デジタルオシロスコープなどに時間を測定できる機能が搭載されるようになったため、過去に比べてカウンタを使って測定することは減ってきたが、高分解能で正確な時間を測る要求はセンサ開発や物理学の研究分野などであること、また生産ラインなどコスト要求が厳しい分野があることなどから、現在でもカウンタは多く使われている。

時間測定器は歴史が長いため、下記にあるようにさまざまな測定器が登場した。時間測定器には周波数計(光波長計は除く)、回転計が含まれる。

図1. さまざまな時間測定器

図1. さまざまな時間測定器

今回はユニバーサルカウンタを生産する岩崎通信機の協力によって記事を執筆した。

カウンタが普及するまでに使われていた時間測定器

機械式時間測定器

時計の仕組みを使った機械式ストップウォッチやさまざまな機構を使った回転計などがある。例えば昔の自動車に搭載された回転計や速度計は下記のような仕組みで作られていた。この回転計は回転軸とともに磁石が回転すると、磁極から出ている磁束も回転し、それを包むドラッグカップに渦電流を発生する。この渦電流によってドラッグカップには回転軸と同方向に力が作用し(積算電力量計と同じ原理)、バネと平衡する角度までメータ指針は回転する。

図2. ドラッグトルク式の自動車の速度計

図2. ドラッグトルク式の自動車の速度計

出典:物理量を変換するのがトランスデューサの役割(TDK Techno Magazine)

指示計器

周波数を測定する指示計は主に交流電源の周波数を測るために使われた。最初に普及したのは異なる固有振動数持つ複数の鉄で作られたリードを並べた振動片形周波数計である。リードの上部は振動を示す表示部となるため白く塗られている。下記にその構造を示す。

図3. 振動片形周波数計の構造

図3. 振動片形周波数計の構造

振動片形周波数計は第二次大戦前から1960年代ころまでは多く使われていたが、リードの振動による金属疲労が原因となる故障があること、また応答が遅いため現在ではほとんど見られなくなった。

図4. RPA型携帯用振動片型周波数計(横河電機製作所)

図4. RPA型携帯用振動片型周波数計(横河電機製作所)

提供:横河電機

その後、簡単な電子回路と電流計によって構成されたトランスデューサ内蔵周波数計器が登場した。この方式の周波数計は広角度計器やパネル用計器として現在でも多く使われている。下記にはトランスデューサ内蔵周波数計器の構造を示す。

図5. トランスデューサ内蔵周波数計器の内部構造

図5. トランスデューサ内蔵周波数計器の内部構造

出典:配電盤用計器(Fシリーズ)(米田明、阿部栄介 横河技報 1963年 Vol.7)

周波数の値は電流計によって示されるため、周波数は針が示す目盛りを読む仕組みとなる。

図6. 携帯用指針形周波数計 2038

図6. 携帯用指針形周波数計 2038(横河計測)

提供:横河計測

リサジュー図形(オシロスコープ)

校正された周波数が可変できる信号源とX-Y動作ができるオシロスコープを使うと、未知の信号源の周波数と位相を知ることができる。オシロスコープへの配線は下記のように行う。

図7. リサジュー図形を得るための配線

図7. リサジュー図形を得るための配線

オシロスコープの画面上には既知の波形と未知の波形の周波数比と位相によって決まった形の図形が映し出される。これを既知の周波数を発信する信号源から未知の周波数の信号源の周波数を知ることができる。

リサジュー図形の描画の原理を下記に示す。

図8. 周波数比:2、同振幅、位相差0°のリサジュー図形

図8. 周波数比:2、同振幅、位相差0°のリサジュー図形

現在ではリサジュー図形を利用することは減ったが、過去にはステレオのテープレコーダのアジマス調整(ヘッドの傾き調整)でリサジュー図形が使われていた。

校章に周波数比5対6のリサジュー図形を使っている電気通信大学のホームページにリサジュー図形について詳しい解説が書かれている。

リサジュー図形とは?(電気通信大学のホームページ) https://www.uec.ac.jp/about/profile/pdf/lissajous_01.pdf

ヘテロダイン周波数計

ヘテロダイン周波数計は未知の周波数と周波数が校正された可変周波数信号源をヘテロダイン回路によって周波数の差分を得て、差分の周波数をヘッドホンによって人が聞く仕組みとなっている。未知の周波数と可変周波数信号源の周波数が近づくと音の周波数(音程)は低くなり、一致した時は人が聞けなくなる。それによりの未知の周波数を知るとこができる。

図9. ヘテロダイン周波数計のブロック図

図9. ヘテロダイン周波数計のブロック図

出典:Frequency Measurements(ELECTRONICS TECHNICIAN 3、1963 U.S. NAVY Training Course)

ヘテロダイン周波数計はカウンタが登場する前までは無線通信の分野で広く使われていたが、取扱いに熟練が必要なため現在では使われなくなった。

図10. アメリカ海軍で過去に使われていたヘテロダイン周波数計

図10. アメリカ海軍で過去に使われていたヘテロダイン周波数計

出典:LM21 HETERODYNE FREQUENCY METER(http://junkboxjewels.blogspot.com/

空洞波長計

吸収型波長計の一種であり、主にマイクロ波の周波数測定用に使われている。測定確度は高くないが安価なため現在でも使われている。

図11. 空洞波長計の構造

図11. 空洞波長計の構造
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