技術情報・レポート

2021/03/23

スペクトラムアナライザの基礎と概要 (第1回)

<連載記事一覧>

第1回:「はじめに」「スペクトラムアナライザの概要と主な利用分野」「スペクトラムアナライザの種類」「スペクトラムアナライザの形状」「【コラム】スペクトラムアナライザを理解するための用語」

第2回:「スペクトラムアナライザの構造」「スペクトラムアナライザの基本的な設定」「スペクトラムアナライザの使用上の注意」「【コラム】日本国内で販売されている主なスペクトラムアナライザ」

第3回:「スペクトラムアナライザの周辺機器」「スペクトラムアナライザの利用事例」「スペクトラムアナライザの校正」「おわりに」「【インタビュー】アンリツの無線通信用測定器の取組み」(4月下旬頃掲載予定)

はじめに

無線通信機などの高周波を取り扱う機器の開発、生産、保守の現場では周波数軸で測定することが要求されるためスペクトラムアナライザは必須の測定器となっている。そのほかにも発振器や周波数フィルターなどの特性評価や、高周波ノイズ測定を行う際もスペクトラムアナライザが使われる。

高周波信号を時間軸で観測するのはオシロスコープであり、周波数軸で観測するのはスペクトラムアナライザである。それぞれの関係は図1に示すようになっている。オシロスコープで取り込んだ信号をFFT演算によって周波数軸に変換することができるが、スペクトラムアナライザに表示される周波数軸の観測結果には位相情報がないため時間軸表示に変換することはできない。

図1. オシロスコープとスペクトラムアナライザの違い

図1. オシロスコープとスペクトラムアナライザの違い

スペクトラムアナライザは測定器としてではなく、電波探査を行うための装置として第二次大戦中に軍事目的で使われた。第二次大戦後にこの技術が民間でも使われるようになり、アマチュア無線などの分野でも電波を発している無線局を探すために使われた。下記の写真の白い受信機の上に載っている黒い箱(商品名:SP-44 Skyrider)の装置がスペクトラムアナライザの原型となった電波探査装置である。この当時の電波探査装置の詳細は、アメリカのオハイオ大学のホームページ(https://people.ohio.edu/postr/bapix/SP44.htm)に詳しく書かれている。

図2. 第二次大戦後にアマチュア無線家が使った電波探査装置

図2. 第二次大戦後にアマチュア無線家が使った電波探査装置

出典:米国のRadio News Magazine(1947年3月号)の表紙

1960年代中頃になると電波探査装置は測定器として進化し、現在のスペクトラムアナライザの原点となる851A/8551AがHewlett-Packard社から発売された。

電波はさまざまな通信用途に使われており、現在は周波数の空きが少なくなっている。正しく電波を利用しないと通信障害が生じるため、スペクトラムアナライザによる電波環境の監視の重要性は高まっている。

また、新しい通信方式の携帯電話やIoTで使われる新しいさまざまな通信方式が登場してきているので、製品開発に使われるスペクトラムアナライザの重要性は高まっている。

図3. 周波数帯ごとの主な用途と電波の特徴

図3. 周波数帯ごとの主な用途と電波の特徴

出典:周波数帯ごとの主な用途と電波の特徴(総務省 電波利用ホームページ)

この記事の執筆にあたっては長年に亘ってスペクトラムアナライザの開発を行ってきたアンリツからの協力を得た。

スペクトラムアナライザの概要と主な利用分野

高周波周波数分析器の方式による分類

高周波の信号を周波数軸で観測する測定器は図4に示すようにいくつか存在する。周波数を掃引しながら信号の大きさを観測する掃引式アナライザと、現象の同時性を重視して信号を観測するリアルタイムアナライザに大別される。周波数分析器には分類されないが、手動で周波数を決めて信号の大きさを測定する選択レベル計が存在する。

図4. さまざまな高周波周波数分析装置

図4. さまざまな高周波周波数分析装置

スペクトラムアナライザの主な利用分野

スペクトラムアナライザは表1に示すような用途で使われる。多くは無線通信やテレビ/ラジオ放送に関わる分野であるが、ノイズの観測や電子回路の評価といった分野でも使われるため、多くの技術者がスペクトラムアナライザを使っている。

表1. スペクトラムアナライザの主な用途と利用者
無線通信
運用事業者
通信設備
保守事業者
通信機器
製造事業者
無線用部品
製造事業者
電子機器
製造事業者
規格適合
認証機関
電波監視
行政機関
無線設備の設置/維持
違法な無線機の探査
無線機器の設計/生産
ノイズの測定