LCRメータの基礎と概要 (第3回)
<連載記事一覧>
第2回:「LCRメータの構造」「LCRメータで表示できるパラメータ」「試料との接続」「測定誤差の考え方」「【コラム】各社のLCRメータ、インピーダンスアナライザ」
第3回:「LCRメータを使っての測定例」「LCRメータ以外の測定器を使っての測定例」「LCRメータの校正」「おわりに」「【インタビュー】エヌエフ設計ブロックのインピーダンス測定器の取組み」
今回は低周波のインピーダンス測定を行う事例について、LCRメータを使う場合とロックインアンプや周波数特性分析器などを使う場合に分けて解説する。
LCRメータを使っての測定例
コンデンサやインダクタの量産ラインでの利用
電子機器に組み込まれるコンデンサやインダクタは非常に多くの個数が生産されている。これらの部品の生産現場ではLCRメータが部品の良否判定やBIN判定のために数多く使われている。生産ラインでは検査スピードへの要求が高いため、LCRメータと選別機コントローラの間は専用の制御線でつながれている。
チップ部品とLCRメータとの接続は低周波での検査の場合は4端子で接続されることが多い、高速で動作するピンプローブによってチップ部品が接続されるが、正しく接続されているかをコンタクトチェック機能によって確認する。下記にはチップコンデンサのコンタクトチェックの動作を示す。
また測定値のバラツキを小さくすると歩留まりの向上に貢献するため、LCRメータには安定した測定が要求される。
【ミニ解説】BIN判定
バラツキのある現象を範囲ごとに発生頻度を分類すればヒストグラムが描けてバラツキの特性を知ることができることはよく知られている。現象を分類する幅をBIN(ビン)幅もしくは階級幅という。BIN幅を変えれば同じ現象でもヒストグラムの見え方は変わってくる。
LCRメータにはBIN判定という機能がある。これは試料である電子部品の選別を行う際に必要な機能である。電子部品を生産すると特性にバラツキが生じる。このため選別して必要な特性の範囲の部品を得る作業が発生する。
LCRメータでは1つの測定パラメータについてBIN判定も行えるが、同時に2つの測定パラメータで選別することもできるようになっている。
BIN判定された結果はLCRメータのハンドラインタフェースから電気信号として出力される仕組みとなっている。
トランス特性の評価
LCRメータを使ってトランスの一次側と二次側のインダクタンス、漏れインダクタンス、巻線間容量、相互インダクタンス、巻数比を測定することができる。ただし多くのLCRメータでは駆動電圧以上の測定はできない仕組みになっているため測定できない場合があるので注意が必要である。トランスの特性を測定する場合は巻線を短絡する作業や開放にする作業が発生するため専用の測定器がある。
ここではLCRメータを使ってのトランスの相互インダクタンスを簡易的に測定する事例を示す。
コンクリートの水分測定
固体材料に含まれた水分と固体を挟んだ電極間のインピーダンスに相関があるため、LCRメータを使って木材やコンクリートなどの固体に含まれる水分を非破壊で測定することができる。現場で使える専用の測定器も販売されている。
ここではコンクリートの水分を測定する事例を示す。
食用油の劣化測定
食品に含まれる油の特性をインピーダンス測定によって知ることができる。下記は食用油の劣化をLCRメータよって測定する方法を示す。
業務用に使われる食用油は法律などで劣化の度合いを示す酸化値で管理が決められているため、酸化値と相関あるインピーダンス測定が使える。専用の測定器は販売されている。
磁性材料の複素透磁率測定
磁性材料の特性の一つである複素透磁率はLCRメータで測定できる。リング状の空芯コイルと磁性材料をコアにしたコイルの特性をLCRメータよって測定して、演算によって複素透磁率を求めることができる。