技術情報・レポート

2020/03/24

クラウドを活用したIoT技術を使って、水位計市場に挑むアムニモ

計測と制御の分野で長い歴史を持つ横河電機からスピンアウトして新たなビジネスにチャレンジするアムニモが始めた水位計システムについて、広報を担当されている鈴木義弘様に事業の優位性や今後の取り組みについて伺った。

図1:インタビューでお話を伺ったアムニモ株式会社の広報の鈴木義弘様

図1:インタビューでお話を伺ったアムニモ株式会社の広報の鈴木義弘様

Q1:アムニモはどんな会社ですか

アムニモは2018年5月に「産業向けIoT分野で新しい価値を持つサービスの提供を目指す会社」として横河電機100%出資で設立された。横河電機は主に大企業の工場で使う大規模な制御システムを得意とする会社であるが、アムニモはクラウドを使って少ない投資で短時間に構築ができるIoTシステムをさまざまな企業にも展開していくことを狙っている。

Q2:アムニモが行う水位計ビジネスはどんなものですか

2020年の1月にクラウドを使って河川などの水位を監視するサービスをサブスクリプション方式で利用環境を一括してレンタルすると発表した。水位計は主に行政機関が治水のために河川に設置し、長期間にわたって常時監視するために使われることが多く、この用途にはすでに多くの企業が参入している。アムニモは行政が行う河川監視ではなく、水位計を使う新たな分野を開拓しようとしている。特に期待しているのが水位計の利用期間が限られた河川や水路の工事分野である。河川や水路の工事では一時的な利用が可能なサブスクリプション方式との親和性が高いと考えている。また1年間の動作が可能な電池駆動の無線水位計としたため設置工事は容易となっている。

図2:アムニモの水位計システムのサービス提供

図2:アムニモの水位計システムのサービス提供

アムニモの水位計にはさまざまな特長があるが、この中で特に優位性が際立つのは測定の信頼性である。この特長が実現できた背景には横河電機の要素技術が活用できたことにある。

アムニモの水位計は水圧と大気圧を測定してそこから水位を求める原理となっている。確度は±0.1% of Full Scaleの高確度が実現できている。アムニモに使われている圧力センサは横河電機が開発した「シリコンレゾナントセンサ(単結晶シリコン振動式センサ)」である。このセンサは横河電機が1980年代中ごろから研究を始めたもので、現在では横河電機のプラント制御用の差圧伝送器 DPharpや横河計測の高確度ディジタル圧力計MTシリーズに使われている。この要素技術を使って今回の水位計を開発した。

図3:アムニモの水位センサと通信ボックス

図3:アムニモの水位センサと通信ボックス

【ミニ解説】 シリコンレゾナント圧力センサとは

シリコンレゾナント圧力センサは機械振動式の力センサの一種でセンサに加えられた力が固有振動数に変換される仕組みとなっている。機械振動式の力センサは精密に重さを測る電子天びんにも使われている。

横河電機は社内に半導体微細加工を行える能力を持つためMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を使った機械振動式の圧力センサを1980年代後半に開発した。このセンサはさまざまな工夫がされているため長期安定性が高いことが実証されている。

この圧力センサは市場で高く評価され、1995年に第41回大河内記念賞を受賞した。

図4:シリコンレゾナント圧力センサの回路構成図

図4:シリコンレゾナント圧力センサの回路構成図

出典:横河テクニカルブックレット:ミクロの竪琴[DPharp]Project-y No.03

Q3:アムニモでの水位計ビジネスの今後の取組みはどのようですか

アムニモはまだ新しい会社のため、水位計ビジネスを成長させて、基幹ビジネスとして育て上げるにはまだ取り組まなければならない課題はあると考えている。

1つはアムニモのIoTシステムに接続できるセンサを増やしていくことである。河川やため池などの監視をするためには現在の水位計以外に、流速計、雨量計、カメラなどが要求されることや、他の方式の水位センサのラインアップがあれば利用範囲が広がることは承知している。今後ビジネスの幅を広げていきたいので、これら要求への対応を視野に入れて活動を行っている。

もう1つの課題はアムニモと一緒に仕事をして頂けるビジネスパートナを増やして、さまざまな要望へ迅速に応えられるビジネスエコシステムを構築していくことである。

アムニモが提案する水位計には現在多くの方々から関心を頂いており、現場での実証試験でも高い評価を頂いている。

図5:アムニモの水位計の設置事例

図5:アムニモの水位計の設置事例

アムニモのビジネスはアジャイル開発を基盤にしているので、狙った市場の要求に素早く応えていくことを目指している。また、アムニモのIoTプラットフォームは水位計に限らず多くの用途に使えるので、今後とも利用分野の拡大を目指していく。

取材を終えて

アムニモは歴史のある横河電機のグループ会社ではあるが、新しいことへ果敢にチャレンジするスタートアップ企業のような姿勢が感じられる会社である。今後とも市場要求に素早く対応できるアジャイルな開発環境を持つ会社として育っていくことを期待していきたい。

取材協力:アムニモ株式会社 ホームページは こちらから

簡易無線水位計測サービスページは こちらから