技術情報・レポート

2019/10/03

磁性材料計測分野のニッチトップ企業 メトロン技研インタビュー

今回は磁性材料計測の分野でニッチトップ企業のメトロン技研株式会社の代表取締役社長の井上晋一様に同社の事業について伺った。

インタビューを受けて頂いたメトロン技研社長の井上晋一様

Q1:メトロン技研の紹介をお願い致します。

メトロン技研は1994年に現在会長である近藤勝治が横河電機で行っていた電磁鋼板計測事業を引き継ぐ形で創業した。しばらくは横河電機の関連会社として事業を行っていたが、現在は横河電機が保有していた株式を引き取り独立した企業として事業を行っている。メトロン技研は従業員が14名で創業の地の大阪に本社があり、ものづくりを行う京都工場と2018年に開設した東京営業所がある。
現在のメトロン技研は横河電機から引き継いだ磁性材料計測を柱に電池計測システムやポンプ性能試験システムなど新たに始めた事業もある。
今回はメトロン技研の基幹事業である電磁鋼板計測と磁性材料計測での新しい取り組みについて紹介する。身の回りにある電磁鋼板を使った製品にはトランス、モータ、リレー、磁気ヘッド、磁気シールドなどがある。特に電力インフラに使われるトランスと電気自動車などに使われるモータは大きな成長市場である。

電磁鋼板とは

電磁鋼板はトランスやモータなどに使われる軟磁性材料(外部磁場の影響により磁化しその大きさや方向を容易に変化させることが可能な材料)である。電磁鋼板の歴史は長く、1900年にHadfierdらによって鉄に珪素を含有させることによって磁性向上効果があることが発見されたことから始まっている。日本ではモータに使われる無方向性電磁鋼板は1924年から、トランスに使われる方向性電磁鋼板は1953年から生産が始まっている。
エネルギー損失の少ない高効率なトランスやモータを作るには鉄損の少ない電磁鋼板を開発する必要があり、鉄鋼メーカでは長年に渡って研究が行われてきた。特に日本の電磁鋼板は世界トップレベルの性能を持っている。

Q2:電磁鋼板を取り巻く市場環境について説明をお願いします。

電磁鋼板を使うトランスやモータは古くからある電気部品であるので、基本的な測定技術は確立している。最近は世界的な電力インフラの拡大や電気自動車やハイブリッド車の普及拡大に伴って用途に応じた新たな測定ニーズが生じている。
高性能な電磁鋼板を作れるのは日本、欧州、韓国、中国の限られた鉄鋼メーカとなっている。電磁鋼板市場は世界的に見ると年率7%程度の成長している。電磁鋼板はトランスやモータの効率を決める重要な要素になるので、今後とも技術開発競争が続くと考えている。

Q3:電磁鋼板計測でのメトロン技研の強みは何ですか。

メトロン技研のルーツである横河電機の電磁鋼板計測ビジネスは第二次大戦前から行われていた。横河電機では1960年代以降に鉄鋼メーカ向けの測定システムの開発が活発に行われて、現在のメトロン技研の事業基盤となる測定技術を獲得された。電磁鋼板計測は幅広い知識と現場での多くの経験が必要となるので、長い歴史を持つことは大きな強みとなる。横河電機は鉄鋼メーカ向けの測定システムのみを開発していたが、メトロン技研になってからは応用製品であるモータやトランスでの電磁鋼板の評価も手がけるようになった。
高性能な電磁鋼板計測ができる測定器メーカは世界的に見ても数社しかない。その中でもメトロン技研は鉄鋼メーカ、電磁鋼板を利用する電機機器メーカ、自動車メーカ、大学や公的試験機関などと連携ができているので、先端的な電磁鋼板を測定できる実力を持っていると自負している。最近ではインバータの高周波化によって高い周波数の評価が要求されているが、メトロン技研はこの要求にも対応できている。特に用途にわせたテストフィクスチャ(測定装置と磁性材料をつなぐためのインターフェース治具)を作る能力は市場で高く評価されている。

Q4:メトロン技研が販売している電磁鋼板向けの測定器の紹介をお願いします。

メトロン技研では電磁鋼板の開発から生産まで使われる測定システムの開発と販売をしている。電磁鋼板開発時の材料試験では鉄損、B-H特性、透磁率などがある。電磁鋼板に印加する周波数、周辺の温度、材料に加えられる外力などによって特性が異なるため測定システムは大型になる場合がある。また材料の形状によってさまざまな測定治具を用意することも必要になる。メトロン技研の測定システムでは実績のある横河計測の電力計や波形測定器などを採用している。

次世代EV対応交直流磁化特性解析装置

電磁鋼板の生産現場では連続鉄損測定装置という計測システムが使われており、メトロン技研の製品は国内外の鉄鋼メーカの生産ラインで使われている。
また、メトロン技研は電磁鋼板の計測で使う、エプスタイン枠、磁束計などのコンポーネントも標準製品として販売している。

エプスタイン枠

Q5:メトロン技研の新しい取り組みの紹介をお願いします。

今までは横河電機から引き継いだ電磁鋼板計測について話してきたが、ここからは最近の新しい取り組みについて紹介する。
まず、現在注目している1つ目が圧粉磁心の測定である。圧粉磁心は微細な磁性粉末に圧力と熱を加えて固めた優れた特性と加工性を持った磁性材料である。圧粉磁心の特性は高周波特性の優れたフェライトと磁束密度が優れた電磁鋼板の中間にある。圧粉磁心の研究が進めば用途が広がると期待されている磁性材料であるため注目されている。
長い歴史を持つ電磁鋼板と異なり、圧粉磁心では新しい測定法が要求されているため、業界団体や学会が進めている圧粉磁心の測定規格策定に積極的に関与している。

2つ目は利用者が多い鉄損計測システムのコンパクト化である。古くは交流電源装置、指示計器を組み合わせて手動で鉄損計測を行っていたが、現在ではファンクションジェネレータ、バイポーラ電源、電力計(波形測定器)を使ったディジタル制御の測定システムが使われている。メトロン技研では多くの人に鉄損計測を簡単に行ってもらえるようにするため、現在コンパクトな鉄損測定装置の開発を行っている。今年4月に幕張メッセで開催されたテクノフロンティア展では試作品を展示して、多くのお客様から好評を得た。今後は企業や公的試験機関での品質評価や学校での教育/研究での用途を視野に入れて紹介を進めていく。

メトロン技研が開発したコンパクトな鉄損測定システム

3つ目は大阪の本社にお客様向けの実験室を作って、メトロン技研が保有している測定システムをお客様に使って頂く環境を構築した。ここではお客様の製品の実測評価だけではなく、測定システムの操作トレーニングも行えるようにした。今後、この測定環境を使ってモータやトランスを作るメーカからの磁性材料の受託試験を積極的に受けていくようにする。

メトロン技研本社にあるお客様向け実験室

メトロン技研は特定分野で高度な計測ソリューションの提供を目指す測定器会社として、今後とも日本の強い産業を支える測定器メーカとして市場の要求にあった製品の開発を行っていく。

取材協力:メトロン技研株式会社 ホームページは こちら

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