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学び情報詳細

~ 手のひらサイズのサーモグラフィカメラで、熱画像による設備の診断を、より身近に ~ FLIR C2/C3 (約10万円)、 スマホアクセサリー FLIR ONE PRO (約5万円)

フリアーシステムズ(以下、FLIR社)は、赤外線カメラの設計、製造、販売を手掛けるグローバル企業だ。非接触で温度を画像化する赤外線カメラの熱画像は、直観性に優れ、示唆に富んだ測定対象の情報を、私たちに提供してくれる。ニュース映像などで見かける、空港入国審査場における体温の高い発熱者の検知などに、「サーモグラフィカメラ」が活用される場面は、このカメラがもつ潜在的な能力の大きさを想起させる。体温計で一人ひとり検温する手間もなく、歩行のまま、リアルタイムで、感染の恐れのある者を検知しようというものだ。「非接触」、「リアルタイム」、「可視化(面計測)」といった特長の発揮される応用分野が、産業から公共のさまざまな分野に広がっている。FLIR社は、低価格から、高性能な軍事用の赤外線カメラまで、幅広く製品を有しているが、今回、低価格の製品3モデルを中心に、FLIR社サーモグラフィカメラの特徴、応用を、日本法人 フリアーシステムズジャパン株式会社 インスツルメンツ事業部 ハンドヘルド・イクイップメント部長 中司氏にお聞きした。

FLIR社の概要と赤外線カメラのビジネス戦略

冒頭にも紹介したが、FLIR社はグローバルな企業で、サーマルセンシング分野では、業界で高いシェアを誇る。沿革をみると、50年の歴史をもつが、日本オフィスの開設は、2006年と比較的新しい。社名の「FLIR」の由来は、一説によれば、Forward Looking InfrarRed(赤外線前方監視装置)に由来しており、軍用赤外線カメラを、兵士は「FLIR」と呼ぶらしい。

中司氏によると、最近、FLIR社は、サーモグラフィカメラの低価格化を積極的に推し進めているとのこと。30年前は、5~6百万円した赤外線カメラであるが、今では、購入しやすい価格の50万円以下(例:FLIR E6 約32万円、2011年発売)となり、さらに2015年発売のFLIR C2/C3で約10万円、2017年発売のFLIR ONE PROでは約5万円から用意されている。赤外線カメラを、「たくさんの方に使用していただきたい」想いが、低価格化の原動力だ。低価格化のキーになるのが、赤外線センサの自社開発・製造だと言う。

今回、紹介いただいた3機種の、FLIR社製品ラインアップの中での位置づけは、次の通りである。

3機種の、FLIR社製品ラインアップの中での位置づけ
FLIR E6
FLIR C2
FLIR ONE PRO

FLIR E6(写真左)、FLIR C2(写真中央)、FLIR ONE PRO(写真右 スマホに装着状態)

FLIR C2/C3とFLIR ONE PROのスペック比較

ここで、パーソナルサーモグラフィカメラとも称されるスマホアクセサリーのFLIR ONE PROと、ポケットインで手軽に現場に持ち運べるFLIR C2の2つのモデルを比較してみよう(下表と下図参照)。FLIR ONE PROは、校正、修理、内蔵電池交換ができない。iOS、およびAndroid対応の2機種があり、使用にはアプリをダウンロードする必要がある。スマホに装着して使用するので、扱いは慎重にならざるを得ない。業務用ツールとして、長期に使用し、校正された測定器でデータの信頼性を求めるならば、やはりFLIR C2以上のモデルを採用したい。温度分解能や精度も、FLIR C2のほうが一段上回る。とは言え、FLIR ONE PROにも、後述するFLIR社サーモグラフィカメラのもっとも重要な特長である『MSX®機能』は、しっかり搭載されていて、決して、安価だけのものではない。

C2、ONE PRO スペック比較
C2、ONE PRO スペック比較 レーダーチャート

サーモグラフィカメラに求められる性能・機能

FLIR社特許取得技術の『MSX®機能』が、発熱箇所の判別を容易にする!

MSX(Multi Spectral Dynamic Imaging:日本語では、スーパーファインコントラスト)機能は、リアルタイムでデジタルカメラ撮影画像の輪郭を抽出し、熱画像に重ねて表示する機能である。この機能を搭載することで、測定対象の構造の詳細や発熱箇所を即座に特定でき、現場技術者の作業性は格段に上がると言う。MSX機能は、FLIR社の特許で他社にはない機能だ。3つの画像モードを下記に示す。MSXモードにより、熱画像各部の温度と構造物の位置関係が、構造物の輪郭が表示されることで、より明確になっている。

3つのモード デジタルカメラモード サーモグラフィカメラモード MSX🄬モード

赤外線カメラのキーとなるスペックは、画素数(解像度)、温度範囲、視野角などである。送電設備や変電所などを、遠い位置から診断するには、細かい解像度が求められる。配電盤の細かい配線や端子の発熱を見る際には、ある程度の解像度がなければ、50℃を30℃と見間違ってしまうだろう。設置された太陽光発電パネルの現場は広いので、視野角の広さが求められることもある。電源投入時の電子基板の急激な温度上昇の状況を捉えるには、フレーム速度の速いスペック(例えば、30や60フレームなど)が必須だ。目的に合致したサーモグラフィカメラの選択は慎重にならざるを得ない。FLIR社は、定期的に赤外線トレーニングとセミナーを開催しているので、これを利用するのもよい手だろう。検討してみたい。

サーモグラフィカメラの応用

低価格化を実現した結果、応用分野も大きく広がっているが、ここでは、サーモグラフィカメラ全般の応用について、その一端に触れる。

ETS320は、エレクトロニクス試験用サーモグラフィカメラだ。高感度のサーモグラフィカメラと一体型スタンドを組み合わせているため、プリント基板などの小型電子部品をハンズフリーで測定できる。320×240(76,800ピクセル)の解像度を有し、スポットサイズも170μmと細かい。この高感度カメラを使用すれば、わずかな温度変化(0.06℃未満)を確認し、最高250℃までの発熱を数値化することができる。ETS320のフレーム速度(熱画像の更新レート)は8Hzだが、電源投入時の電子基板の急激な温度上昇の状況を捉えるには、フレーム速度が速いスペック(例えば、30や60フレームなど)を有するカメラが必要になることに注意しよう。

エレクトロニクス試験用サーモグラフィカメラ FLIR ETS320によるプリント基板表面の熱画像測定

エレクトロニクス試験用サーモグラフィカメラ FLIR ETS320によるプリント基板表面の熱画像測定

全国に350以上もの拠点を構える電気保安協会は、多くの保安技術者を抱えるが、サーモグラフィカメラの低価格化が進み、購入しやすい価格になったことから、C2/C3の導入が加速しているという。電気設備の診断に、ひとりに1台、サーモグラフィカメラを持たせるのが理想だ。

前述のように、送電設備や変電所などを、遠い位置から診断するには、細かい解像度が求められる。配電盤の細かい配線や端子の発熱を見る際には、ある程度の解像度がなければ、50℃を30℃と見間違ってしまうだろう。設置された太陽光発電パネルの現場は広いので、視野角の広さが求められる場合もある。用途に応じて、モデル選択が必要となってくる。下記は、サーモグラフィカメラにより捉えられた、これらの応用分野での熱画像画面例である。

送変電設備の例

送変電設備の例

配電盤設備の例

配電盤設備の例

太陽光発電パネル設備の例

太陽光発電パネル設備の例

建築分野での応用も盛んだ。快適な住環境の実現には、断熱・気密性能が重要だ。サーモグラフィカメラを使えば、断熱欠損のある部分が色の違いでわかるので、性能を発揮できる施工になっているかを確認することができる。熱画像による可視化によって、施主への説明にも説得力が期待できよう。

先にも書いたが、赤外線カメラのキーとなるスペックは、画素数(解像度)、温度範囲、視野角などであるが、目的に合致したサーモグラフィカメラの選択は慎重さが必要だ。FLIR社は、定期的に赤外線トレーニングとセミナーを開催しているので、これを利用するのもよい手だろう。

FLIR社への期待

FLIR社のビジョンに、『We are the World’s Sixth Sense, revolutionizing human perception』と、ある。そこからは、人間の(五感による)知覚を超えた「第六感」とも言えるセンシング技術を革新していく企業の気概をうかがうことができる。この気概は、製品保証に対する姿勢にも表れている。FLIR社のカメラ本体の部品および修理の保証は2年だが、赤外線カメラで最も重要なパーツである検出器の保証期間は10年だ。FLIR社がカメラにこのような保証を付けることができるのは、重要な部品をどれもゼロから自社で製造しているからで、信頼性にも自信がうかがえる。

FLIR社が、サーモグラフィカメラの低価格化を推し進めたことにより、今後、ますます普及が加速し、応用分野も拡大していくであろう。計測にとどまらず、セキュリティ監視や農業分野などでも使用されている。ドローンにサーモグラフィカメラを搭載し、救助活動に使用する製品提案もされている。今後も、FLIR社のサーマルセンシング技術に注目していきたい。

TG167、C2/C3、E4/E5/E6/E8、E53、E75、E85、E95、T500/T600/T1000シリーズなど。製品購入後、30日以内に登録すれば、保証が適用される。

中司氏の持つのが、タブレットに装着したFLIR PRO ONE、手前左はFLIR E6、ストラップのついたものがFLIR C2(手前右)
サーモグラフィカメラモード
MSXモード

(左写真)中司氏の持つのが、タブレットに装着したFLIR PRO ONE、手前左はFLIR E6、ストラップのついたものがFLIR C2(手前右)
(右写真)FLIR C2を使ったMSX機能のデモ風景。上段:サーモグラフィカメラモード 下段:MSXモード MSXモードでは、カメラ画像上に、カタログ記載の文字や写真の輪郭が確認できる。

仕様

3モデルの主な仕様を下表に示す。

モデル E6 Wi-Fi C2 ONE PRO
熱画像解像度
(可視)
160×120
(30万画素)
80×60
(30万画素)
160×120
(155万画素)
計測温度範囲 -20~250℃ -10~150℃ -20~400℃
視野角 45° 41°×31° 55°×43°
温度分解能 0.06℃ 0.1℃ 0.15℃
フレームレート 9Hz 9Hz 8.7Hz
最小撮像距離(MSX時) 50cm(30cm) 15cm(100cm) 15cm(30cm)
精度 ±2℃または2%
(環境温度15℃~35℃)
±2℃または2%
(環境温度15℃~35℃)
±3℃または5%
(環境温度15℃~35℃)
測定対象物の温度5℃~120℃
質量 575g 130g 36.5g + スマホ質量
標準価格 399,000円 99,800円 49,800円

FLIR社の製品詳細・カタログは こちら

取材協力:フリアーシステムズジャパン株式会社 ホームページは こちらから

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