2020/09/23
【編集後記】*連載企画* Jおじさんの「ちょこっと一杯 🍶」〖第一話、蕎麦屋でジビエ〗
ウイッス! Jおじさんです。
この前、初めて編集後記を書いたら、編集長から「お前、引き出しありそうだからまた何か書け」と言われちまったんで、「あたしがまともに書けるのなんざコッチ(🍶)のほうしかないスよ」と言ったんですが、「それでもいいから書け」って言うんですよ。 おじさんが呑んで食ったものなんか紹介しても、誰も興味ないと思うのですがねえ。。😓まあ、とにかく書いてみますけど皆さん、ほんと期待しないでくださいねー。
第一話、蕎麦屋でジビエ
埼玉県の某田舎に、とある蕎麦屋あり。そこの親爺が福島県の会津若松市の出身で、会津の銘酒が揃っている。中でも廣木酒造(会津坂下町)の「飛露喜」の大吟醸は事前予約で、しかも抽選だというから当選した者だけが呑める。地元でも滅多に呑めないもんが埼玉の田舎で呑めるっていうんだから行かないわけにはいかない。真夏の炎天下を田舎駅から20分は歩くんですよ。油断すると太陽がジリジリとあたしの薄い頭のてっ辺を焦がしてくるんでね、急ぎ足ですわ。
店の前まで来ると、庭先で常連が何かやってますわ。煙が上がってるので、よく見るとバーベQじゃないですか。
「おお岩魚かー、旨そうや。何か肉もあるみたいだな」
蕎麦屋の親爺「今日はジビエの会だ」
「ジビエ?」
蕎麦屋の親爺「そう、今日はね、熊、猪、鹿、カンガルー、野鴨の5種類ね」
「ふうん、この岩魚も?」
蕎麦屋の親爺「こりゃ会津で釣ってきたんだ」
「へえ、そういえば昔、猪苗代湖に遊びに行ったことがあるよ」
蕎麦屋の親爺「磐梯山近くでは釣れねえ。猪苗代湖は酸性が強くてフナとハヤしかいねえ」
「どうでもいいけど旨そうだな」
蕎麦屋の親爺「外っかわを新聞紙でくるんで、1時間くれえゆっくり置いとくんだ。そうすっと遠赤効果で焼けてんだ~」
外は暑いから、店の中に入って早速一杯やっちゃいますかねー。まだ昼だけど。
常連諸君、岩魚を焼くのは任せたよー!
ということで店内の座敷へ。クーラーが効いているわけじゃあないんですが、扇風機が回っているんで十分でさ。
換気も必要ですしねえ。 さあて、何からいっちゃおうかなと。へへん。
今日のアラカルトはこれかい。
- 栄川酒造(会津若松町)會津龍が沢
- 豊国酒造(会津坂下町)豊國
- 大和川酒造(喜多方)おり酒 特注品
- 末廣酒造(会津若松市)嘉永蔵大吟醸 金賞受賞酒
- 國権酒造(南会津町)無ラベル純米大吟醸
- 末廣酒造(会津若松市)限定 夢の香 純米大吟醸
- 廣木酒造(会津坂下町)飛露喜 吟醸
「あれ、親爺さん、飛露喜は吟醸なの?」
蕎麦屋の親爺「飛露喜の大吟醸はな、昨日女房が会津から持ってきたばかしだ。今日はまだ出さねんだ」
「何だよそりゃ、まあいいわ。他のも珍しいもんがいっぱいあるし。どりゃ、片っ端から呑んだりまっせ」
旨い…。どれも個性的で己を主張している。やるなあ会津っぽ。 蕎麦屋の親爺「ほら、ジビエ肉が焼けたから食え」
ジビエか。。猪や野鴨は馴染みあるし、鹿もまあカレーとかで食べたことがあるから想定内だな。熊?こんな味なんか。カンガルー…?オーストラリアでも食ってんのかな?。むう…固いな。顎が疲れるわな正直。
おお、岩魚が焼けたようだな。いただきます。
うん、うん、日本酒に合わないわけはねえんだよ、さすが川魚の王様だ、皮が旨いわよな。
蕎麦屋の親爺「ところでな」
「ん?」
蕎麦屋の親爺「実は飛露喜で揉めたのよ」
「何を」
蕎麦屋の親爺「令和の天皇陛下の即位の礼の晩餐会でな、宮内庁主催の後に、安部首相主催の会があったのよ」
「ほう」
蕎麦屋の親爺「首相官邸から廣木酒造に純米大吟醸720mlを130本、何とかしてほしいと依頼がきて受けたのよ。ところがそれを新聞に掲載されたら会津の地元民が怒っちまった」
「なるほど」
蕎麦屋の親爺「地元会津の人間でさえ、なかなか呑めないのに、長州の主催する会で呑むのかと!」
「はは(笑)。会津と長州か。幕末の因縁だね」
蕎麦屋の親爺「首相官邸に採用されるのは名誉なことなんだが、地元民の気持ちとして許せねーって感情があんだよな」
「山口(長州)出身の安部首相なんか、そんなわだかまりも無いんじゃないの?」
蕎麦屋の親爺「そりゃ勝ったからよ。負けたほうは複雑なんだ~。
「ふうん」
蕎麦屋の親爺「同じ福島県でもな、会津や二本松は同志だが、三春は敵だ。戦死者は1人も出てねえ。裏切って幕府軍を先導したって言われてる。新潟の長岡は最後まで戦ったが、新発田藩は寝返った。青森も南部は最後まで戦ったが、津軽は裏切ったんだ」
「奥羽越列藩同盟が瓦解した顛末の話だね。あたしもわりと幕末は好きでね」
蕎麦屋の親爺「山口県から最近転勤してきたという客が、ご夫妻で土曜の昼に食べにくるのよ。この人は昔の会津と長州の因縁など知らないんだな。山口の自慢話をするんだが、傍にいる他の客が「ここでその話をするな」みたいな顔をしても一向に本人には気付かないんだ。「いいから」とオレは目配せした。地元では我慢できんやつも居っからね」
ひとしきり会津の銘酒を堪能したところで、蕎麦をたのむ。蕎麦があがるまでつまみに朝鮮人参の天ぷらを。 蕎麦屋の親爺「こりゃあね、3年物。足がいっぱい生えるのは駄目なんだ~。5年も経つと苦くって食べられね。専用の畑さ貰って作ってんだわ。人参だから、首があって手足があるのを選んで栽培すんだ。これに、おちんちんがあれば最高よ」
さあ、お待ちかねの蕎麦が運ばれてきましたぞ。
あたしはね。とんでもなく遠いこの店にわざわざ酒だけを呑みにくるわけではないのよ。
この蕎麦を食べたら、もう身体のどこかに感触が残るんですよ、何といったらいいのか。 今日はいつもより色が白め(親爺の打ち加減で変わるのだろう…)。 親爺に聞くと、実の中心部だけを使ったらしい。 蕎麦屋の親爺「蕎麦はな、雨に弱くて稲のように全部は実らないのよ。1反の畑(300坪)から180kgしか収穫できねんだ。外の皮を剥いたら100kgくらいしか使えねえ。蕎麦は人間生活には不要な植物でしょ。五穀に蕎麦は入ってないもんね」
画像には無いのだけど、大根おろし汁とそばつゆを混ぜると、また蕎麦が引き立って旨いのよ。
いやあ、親爺のうんちくもいい酒の肴だったな。それにしても福島ってのは酒蔵が豊富だねえ。旨い酒につまみ、そして絶品の蕎麦。やっぱり最高だねこの店は。
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(Jおじさん)